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『コロナ後の世界』を読む❻

本日の読書感想文は、『コロナ後の世界』❻ー景気回復はスウェッシュ型になる by ポール・クルーグマン(P169-199)です。

【目次】
❶ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』の著者
❷マックス・テグマークス『Life3.0』の著者
❸リンダ・グラットン『ライフ・シフト』の著者
❹スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』の著者
❺スコット・ギャロウェイ『the four GAFA』の著者
❻ポール・クルーグマン ノーベル経済学賞受賞

ポール・クルーグマン氏とは

ポール・クルーグマン(Paul Robin Krugman 1953/2/28- )氏は、現在はニューヨーク市立大学大学院センター(CUNY)教授。世界的な経済学者として知られ、2008年にはノーベル経済学賞を受賞しています。2000年からニューヨーク・タイムズのコラムを担当し、その発言が非常に強い影響力のある人物です。

記述内容からの抜粋

✔ 新型コロナウイルスによるリセッションを比喩的に表現すれば「人工的な昏睡状態」(P171)
✔ FRBが速やかに資金供給を行い、二兆ドル規模の経済対策法を打ち出したのは評価できる。国の借金は、金利が成長よりも低ければ問題ない。(P172-174)
✔ まずは感染症対策が優先。早すぎる経済活動再開はダメージを大きくする。封じ込め失敗は初動段階での国際協力の遅れが大きい。パンデミックに対する迅速かつ強固な国際協力態勢を築くことが今回の教訓(P174-176)
✔ 2019年時点で世界経済の先行きに不透明感があった。回復には時間がかかりそう。景気回復カーブはスウェッシュ型になる。日本経済は2019年10月の消費税増税の悪影響に長期間苦しむかも。(P177-179)
✔ 消費税増税は緊縮財政措置。人口減少という構造問題を抱え、家計貯蓄率が高く、個人消費が低迷する日本経済を更に悪化させる。安倍政権の政策には一貫性がない(P179-182)
✔ EUは最もリセッションリスクが高い。統一政府がない弱みで弱者ほどダメージが大きくなる。最も影響力のあるドイツが財政拡大路線を取らないことがリスク要因。(P187-188)
✔ 米中貿易戦争に勝者なし。双方にマイナスダメージを及ぼした。より大きいのはアメリカの方(P188-190)
✔ 米国経済最大のリスクはトランプの再選。格差の拡大、民主主義の完全崩壊を危惧する。世界経済の先行きにとって大きな問題(P193-196)

所見

私が経済学を自己流で齧っていた1990年代にクルーグマン氏を知り、『経済政策を売り歩く人々』や『クルーグマンの良い経済学悪い経済学』など著書を熱心に読んで、親近感を持っている経済学者でした。

ただ、クルーグマン氏の日本への政策提言は、日本社会や日本人的特性を熟知した上でじっくりと煮詰められた発言というよりは、マクロの数字から、自身の経済学理論が導く処方箋を提示しているという印象を持っています。

過去の”ヘリコプターマネー”に象徴されるような大胆な金融政策や質を問わない財政出動提言には、100%同調しかねます。指標の数字が改善すれば成功ではありません。実際、賛否両論の大きい人物です。

私はこのインタビュー記事からは、氏の語る対象の「主語」が総じて大きいという印象を受けました。「アメリカ」「日本」「EU」「国際経済」をどうすべきか、どうあるべきか、というマクロの話は数字を援用して網羅されていますが、中身を構成する対象への深い目配りは甘く感じました。

日本経済を冷やした元凶が、消費税増税にあるという診断には同意します。ただ、個人消費が増えないのは消費税云々以前の悩みで、人口減少同様に日本の構造的な問題のように思います。

日本社会に刷り込まれた、お金の使い方、お金の使わせ方、お金の流通のさせ方の伝統にも原因がありそうな気もしています。私たちが物心ともに豊かに暮らすため、お金に対する価値観の転換・啓蒙活動が必要です。

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