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Markover 50 の読んだ本

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Markover 50の読んできた本の読書感想文を収めています。
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#コラム

『人生後半の戦略書』が今年のベスト本

”今年のベスト本” 企画に応募することにします。今年はあまり本を読んでいないものの、ベスト本を一冊選ぶならば躊躇なく、アーサー・C・ブルックス『人生後半の戦略書』(SB Creative2023)を選びます。 人生後半を愉しむために私は2018年10月にnoteを開始する際、『人生後半戦を愉しむ』というテーマを掲げました。50代になったら、(外山滋比古先生に感化された)人生二毛作でいきたい…… 人生前半戦は、会社員という片道切符の電車に飛び乗り、ビジネスマンとして世界を舞台

希望という名の華々しい茶番劇

横浜の自宅に戻ってきて、寛いでいます。本日は、パラパラと読み返した水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書2017)で引用されている、『希望という名の華々しい茶番劇』ということばから思い浮かんだことを膨らませて、自分の問題意識を深めておこうと思います。 「希望」は幻想一般に、「希望」は好意的に受け止められていることばです。「希望」ということばから受け取るメッセージは人それぞれではあるものの、「未来には何の希望もない」「希望の光が全く見えない」というような台

パブリックへの関心

本日は、JBpressに発表された朝比奈一郎氏の『政治行政に関心を持たず、政治家・役人を見下す日本人、これでは国が溶けていく』を読んで、思った所を書いてみます。 朝比奈一郎氏とは……著者の朝比奈一郎氏は、1973年生まれ。東京大学法学部卒業、経済産業省に入省、ハーバード大学行政大学院(ケネディスクール)で修士号取得と、エリート街道を歩き、2003年内閣官房在職時代には、霞が関の若手官僚たちで作る「プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)」を立ち上げ、初代代表を務めていま

『村上春樹はくせになる』を読む

やるべき課題が山積みであるにもかかわらず、何もやる気がしない一日でした。朝6:00過ぎには目が覚めたものの、心配事が頭の中を駆け巡ってしまい、ずるずると昼過ぎまで寝床から起き上がれませんでした。客観的にはこれがプチ鬱状態による現実逃避といったところでしょうか。枕の横に置いてあった、清水良典『村上春樹はくせになる』(朝日新書2006)を貪り読んで過ごしました。 無数にある村上春樹論村上春樹氏(1949/1/12-)は、日本で最も人気のある作家の一人であり、孤高の作家という地位

近くにも遠くにも感じる村上春樹氏

本日は、こちらに来てから手に入れて、ひとりの夜に何度も読み返している雑誌、BRUTUSの『特集 村上春樹 上・下』から感想文です。切り取ってコメントしたい部分は多々あるのですが、下巻の”村上小説を音楽で読む。”からの掘り下げです。 音楽マニアの村上氏ご自身で自覚されているか定かではないですが、村上氏の生き方や価値観に憧れ、羨ましいと思っている人は、自分のみならず、世界中に無数にいるだろうと思います。 比較するのもおこがましいですが、私が愛している四つの要素、本・音楽・旅・

あの人が教えてくれるもの⑨:筒美京平

『あの人が教えてくれるもの』シリーズの第九弾は、昨年誤嚥性肺炎で亡くなった作曲家、筒美京平(本名:渡辺栄吉 1940/5/28-2020/10/7)です。近田春夫『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』(文春新書2021)を読んで、大いに触発されたので、記憶に強く刻む為に、今ほやほやの湯気が立ち昇る状態での気持ちをこの記事に残しておきます。 謎に含まれた希代のヒットメーカー日本人に生まれ、日本で暮らした人で、筒美作品を一度も聴いたことがない、という人はおそらくいないと思います。

『自由と成長の経済学』を読む❶

本日は、柿埜真吾『自由と成長の経済学』(PHP新書2021)の序章・第1章の読書ノートです。大ベストセラーとなっており、私も大いに共感している斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書2020)と対極の立場から批判する本も読んでおこうという趣旨で手にした本です。 脱成長+コミュニズム と 経済成長+競争的資本主義斎藤幸平氏が2020年に発表した話題の書『人新世の「資本論」』で提示されている『環境問題への視座=SDGsの嘘』『マルクス主義』『脱成長コミュニズム』に各所から共感

構造主義の土台 マルクス・フロイト・ニーチェ

先日から読み始めた内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書2002)を無事読了しました。内田氏の記述は期待通り見事で、理解の難しい内容でも楽しく読み通すことができました。 構造主義が登場してくる上での思想の土台となっている、マルクス・フロイト・ニーチェを簡潔に扱っている『第一章 先人はこうして「地ならし」したー構造主義前史』(P16~58)の読書ノートを残します。 いずれ劣らぬ思想史上の巨星なので、今後何度か彼らの遺した思想や業績に触れ直す機会もあるでしょう。自分の手を

現実主義の陥穽

ここ数日、西日本や中部での集中豪雨の影響で、河川の氾濫、住居の床上浸水などの被害が報告されています。今年も自然災害と無縁とはいきません。毎年のように自然災害による被害発生情報に接する度、不条理への怒りが沸きますが、ぶつける先もなく悶々とした気分になります。 さて、本日は、野口雅弘『マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家』(中公新書2020)を読んでいて出会った「現実」についての記述から、思ったことを広げていきます。 現実主義的に生きてきた私は、理想主義的な考えに惹かれ

左翼思想を学ぶ意義

偏見や先入観をもって捉えてしまいがちな左翼思想について、真っ当に学んでおきたいと思っています。本日の記事では、池上彰・佐藤優『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960』(講談社現代新書2021)の『序章『左翼史』を学ぶ意義』からの学びをまとめます。 今こそ、左翼思想を学んでおくべき数年前から、私は『今こそ、左翼思想を学んでおくべき』という問題意識を持っています。過去にも、関連した記事を何度も書いてきました。右翼と左翼の違い、社会主義と共産主義の違いすら理解できて

金曜日の随筆:革命の武器はオピニオンとエグジット

また運命を動かしていく金曜日がやってきました。2021年のWK29、文月の参です。動いている実感はなくとも時は刻まれていきます。本日は、実利的に生き抜いていく方法を考える上でのヒントの詰まった良書、山口周『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるか』の中に収められている『革命の武器はオピニオンとエグジッド』の思い出です。 今週の格言・名言《2021/7/12-18》Conquer the anxiety and fear that tries to stop

『人生の目的』を読む

本日の読書感想文は、五木寛之『人生の目的』です。その中の”信仰について”(P167-195)から思ったことを記録に残します。 人生を学んできた師私はこれまで、小説家・随筆家の五木寛之氏(1932/9/30-)の書いた多くの作品を読んできました。映画化もされた『青春の門』や『四季・奈津子』で五木寛之という名前は幼少期から知っていたものの、文学作品を初めて読んだのは16歳の時、五木氏が翻訳したリチャード・バックの小説『かもめのジョナサン』(新潮文庫)でした。 心が疲れたり、弱

『日本再興戦略』を読む

本日は、落合陽一『日本再興戦略』(幻冬舎News Picks Book 2018)の読書感想文です。 第4章 日本再興のグランドデザインより著者の落合陽一氏は、1987年生まれ。大学研究者、メディアアーティスト、経営者と多彩な肩書を持ち、幅広い活動に従事していて、発言の影響力も大きい人です。 本書は、2018年に発売された時期に話題になっていた本です。Amazonのカスタマーレビューでは、星5つの肯定的評価が50%を超える一方で、辛辣な批判的評価もあがっています。 御本

『お金は教養で儲けなさい』を読む

本日の読書感想文は加谷珪一『お金は教養で儲けなさい』(朝日文庫2021)です。 物事の本質をつかむ力!著者の加谷珪一氏(1969-)は、経済評論家・個人投資家です。東北大学工学部を卒業後、日経BPの記者を経て、野村証券グループで投資ファンドの運用をされていた経歴の持ち主です。(帯の略歴より) 理系出身で会社員の経歴もあり、物事の本質を見据えて、バランスが取れた主張をしている(所々毒もありますが……)という印象があり、著作を何冊か読んできました。 本書の帯も『物事の”本質