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金曜日の随筆:革命の武器はオピニオンとエグジット

また運命を動かしていく金曜日がやってきました。2021年のWK29、文月の参です。動いている実感はなくとも時は刻まれていきます。本日は、実利的に生き抜いていく方法を考える上でのヒントの詰まった良書、山口周『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるか』の中に収められている『革命の武器はオピニオンとエグジッド』の思い出です。

今週の格言・名言《2021/7/12-18》

Conquer the anxiety and fear that tries to stop you from making decisions.
決断に対する不安と恐怖を克服する
People estimate the thing which can't be understood low.
- Johann Wolfgang von Goeth, poet/Germany
人々は理解できぬことを低く見積もる。
ー ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ 詩人/ドイツ

完成された投手の手口

山口周氏(1970-)の名前や論説は、各所で引用されます。現代を生きるビジネスマンに向けて語られる深い視座と洞察には定評があります。山口氏の著作はこれまでにも何冊か読んでいて、2018年発売の本書は、私に会社員からのエグジッドという決断を促してくれたうちの一冊でした。

山口氏は、高尚で難解な領域の学術的なことばと物凄く身近で卑俗的な語りことばを使い分け、硬軟織り交ぜて自論を展開する印象があり、その落差も魅力になっています。ことば選び、論旨の運びが巧みな人です。

ストライクゾーンの高低と幅を目一杯使えるコントロールを持ち、150kmを超えるストレートも投げれば、落差の大きい緩い変化球も自由自在に操れる、遊び玉も交えた組み立て、打者との駆け引きも超一流…… 本書には、そんな完成された投手の巧みな投球術を味わったような読後感があります。

エグジットという選択肢を見つける

『革命の武器はオピニオンとエグジット』は、本書の”第3章 中堅・若手がオッサンに対抗する武器”で使われている小見出し(P56-59)です。

社会で実権を握っている権力者に圧力をかけるとき、そのやり方には大きく「オピニオン」と「エグジット」の二つがあります。
オピニオンというのは、おかしいと思うことについてはおかしいと意見をするということであり、エグジットというのは、権力者の影響下から脱出する、ということです。

と記されています。劣化した権力者に忖度して何も言わない、何もしないのは不祥事や理不尽に加担しているも同然と手厳しい。

ワクワクする仕事を追求することもなく、システムから与えられる理不尽さに対して何年、何十年ものあいだ妥協に妥協を重ねてきた結果として、生み出されているのが劣化したオッサンなのです。

という部分は、かなり響きました。

本書を手にした2018年は、私が50歳を迎えた年です。キャリア初期には、自分なりのオピニオンを持つように意識し、組織に対して物申すことも辞さない生意気な態度を取っていました。

ところが、年齢を重ね、現実と組織の掟を知るにつれ、気持ちを抑えることが状態化していきました。諦めの気持ちが強くなっていて、怒りや疑問が湧き上がる機会も減っていきました。

自分の情けない姿を自覚したことが、会社組織からのエグジットを意識する強いきっかけになった気がします。

革命的手法は望まない

ただ、このことばに100%同意している訳ではありません。私は職業人としては『革命』を志向したことは一度もありませんし、むしろ否定的です。

「刷新」「変更」「改良」といった取り組みにコミットしたい気持ちはあります。前例踏襲のマンネリは嫌いだし、先に進んでいるという実感が全く持てない繰り返し型の仕事には情熱と闘志が沸きません。

『革命』には、手段としての暴力を肯定し、破壊衝動が先行してしまっているイメージがあります。私には、そのような犠牲を払って到達した先に、明るい未来が開けている気がしないのです。変化するための行動は、内省的に、穏便に、温厚に進めていくのが私の理想形です。

まあ、後先考えずにエグジットを決めた私の行動は、革命に加担したことになるのかもしれません。働き方を変えたい気持ち、組織との絆を断ち切って一旦自由になりたい衝動を抑えられなかった訳で、闘い方として未熟だったことは確かです。ただ「間違った」とも思っていません。自分の始末は自分でつけるしかありません。

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