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Markover 50 の読んだ本

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Markover 50の読んできた本の読書感想文を収めています。
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#読書ノート

『太平洋戦争への道 1931-1941』を読む(その1)

本日は、半藤一利・加藤洋子・保坂正康『太平洋戦争への道 1931-1941』(NHK出版新書2021)の「序章 太平洋戦争とは何か」から、学びを記録しておきたいと思います。本書には、私が個人的に学んでおきたい重要な視座が含まれていて、日本近代史(明治維新~太平洋戦争終結)、日本現代史(日本占領~現在)を考える役に立つと考えています。 大東亜戦争⇒太平洋戦争この序章(P15~32 脚注を含む)部分と章末に保坂正康氏によって追記された”「戦争呼称問題」に見る近代日本の宿痾”(P

『物語 パリの歴史』を読む

”こどもの日”の今日は、朝から見事な青空が広がり、気持ちよい一日です。この連休期間中は一日おきに、息子と電車旅をして過ごしており、今日もそのノルマの日でした。首都圏近郊を電車に乗って旅するのは、息子の満足度が最も高い時間の過ごし方です。電車で移動する合間に読んでいたのが、高遠弘美『物語 パリの歴史』(講談社現代新書2020)です。時々読み直したくなる大切な本です。 特別な街、パリこれまでに多くの世界の街を訪れる機会に恵まれましたが、「パリは別格である」と感じています。最近は

『社会的共通資本』を読む❷

本日は、じっくりと読み進めている宇沢弘文『社会的共通資本』(岩波新書2020)の❷ ~第2章 農業と農村~ の読書感想文です。  第2章 農業と農村第1部 農の営み 日本の農業が危機的な状況にあると言われて久しいものがあります。宇沢氏は、「農業」を経済体制における一つの自立的な産業と位置付け、工業と同じ枠組みで比較しようとしてしまっていることに問題がある、という示唆を与えてくれます。 農業が果たしている機能、農の営みという観点の欠如が影響している為に、農業基本法と農政の

『歴史のダイヤグラム』を読む

本日の読書感想文は、原武史『歴史のダイヤグラム 鉄道に見る日本近現代史』(朝日新書2021)です。 書店で見つけて、ジャケ買い息子が電車好きなせいか、私も鉄道が年々好きになっています。時間の制約を受けず、目指すべき目的の場所を決めずに、ひとりで在来線に揺られる電車旅はかなり楽しいものがあります。会社を辞める数年前から、青春18きっぷを毎シーズン買って、ささやかな冒険旅を楽しんできました。 本書は、書店で見つけて、ろくに中身を確認せずに衝動買いしました。著書の原武史氏のこと

『それでも映画は「格差」を描く』を読む❷

昨日に引き続き、町山智浩『それでも映画は「格差」を描く』(インターナショナル新書2021)の読書感想文です。二回に亘って記事にする予定では無かったのですが、それぞれの章の解説を読んで考えてしまった部分が多かったので、自分の無知と気持ちの動揺の記録を残します。 映画監督の解説でもある実は昨日noteを書いた段階では、「はじめに」「あとがき」と『ジョーカー』の章くらいしか読んでいませんでした。昨夜や、本日松本へ戻ってくるバスの中で、他の評論もしっかりと読み込みました。取り上げた

『それでも映画は「格差」を描く』を読む❶

本日の読書感想文は、町山智浩『それでも映画は「格差」を描く』(インターナショナル新書2021)です。 映画評論家という仕事一本の映画作品には、膨大な予算が準備され、多くの才能あるタレントやスタッフが動員され、長時間自らの全精力を拘束を捧げることを強要され、技術の水位が結集されます。究極のエンターテインメントと言ってもよいかもしれません。そんな映画ビジネスの世界で生き残っていくのは、並大抵の才能と努力では覚束ない荒業です。 映画評論家とは、映画製作に携わるクリエイターたちが

『自由と成長の経済学』を読む❷

昨日に引き続き、柿埜真吾『自由と成長の経済学』(PHP新書2021)の第2章・第3章の読書ノートです。 第2章 前近代の閉じた社会の道徳(P51-60)短い章なのでさらっと読み通しました。ゼロサムゲームが基本OSとなっている有史以前続いてきた「閉じた社会」が、資本主義が起爆剤になって「開かれ、拡大(プラスサム)していく社会」が到来した、という見立てに異論はありません。 「脱成長」は「閉じた社会」への逆戻りを意味する、そんな社会を果たして望みますか? というメッセージとして

『自由と成長の経済学』を読む❶

本日は、柿埜真吾『自由と成長の経済学』(PHP新書2021)の序章・第1章の読書ノートです。大ベストセラーとなっており、私も大いに共感している斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書2020)と対極の立場から批判する本も読んでおこうという趣旨で手にした本です。 脱成長+コミュニズム と 経済成長+競争的資本主義斎藤幸平氏が2020年に発表した話題の書『人新世の「資本論」』で提示されている『環境問題への視座=SDGsの嘘』『マルクス主義』『脱成長コミュニズム』に各所から共感

入門書の醍醐味

近所のBOOK-OFFで購入し、読み始めたばかりの内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書2002)のまえがきがとても面白くて、腹落ちしたので学びのノートを書き残します。 時間を持つ人間の強い味方 BOOK-OFFもうかれこれ20年以上、BOOK-OFFには売買でお世話になっています。 引っ越し時や毎年年末には、自宅の本棚に入りきらなくなっている本や雑誌やCDを売却してきました。定期的なセールもチェックして、掘り出し物がないか漁ったりもします。出張時の空き時間にふらりと

Think Clearly-#2 なんでも柔軟に修正しよう

よりよい人生を送るために必要な「思考の道具箱」を求める私が、ロルフ・ドベリ氏の著書『Think Clearly -最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』から学ぶシリーズです。第2回は、『なんでも柔軟に修正しよう』(P29-35)です。 #2 なんでも柔軟に修正しよう 完璧な条件設定が存在しないわけ本日の気づき on 2020/8/19● 変化の大きい現代では、修正する力が、益々重要な能力となっている。うまくいっていることでも、絶えず微調整や修正をくり返し

『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』を読む

本日の読書感想文は、磯田道史『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』です。2017年発売の本で、再読になります。 影響力が絶大な「歴史を作る歴史家」著者の磯田道史氏は気鋭の歴史学者で、視点や語り口が私の肌に合うので注目している人です。NHKの歴史系のテレビ番組でもよく仕事をされていて、本書は2016年放送の「100分 de 名著 司馬遼太郎スペシャル」がベースになっています。 歴史文学には、史実に近い順に、史伝文学、歴史小説、時代小説という三つのジャンルがあると言われます。司馬