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Markover 50 の読んだ本

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Markover 50の読んできた本の読書感想文を収めています。
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#推薦図書

『はじめての構造主義』を読む

本日は、橋爪大三郎『はじめての構造主義』(講談社新書1988)の読書感想文です。 お気に入りの論客の一人本書は、著名な社会学者(理論社会学、宗教社会学、現代社会論)である橋爪大三郎氏が、東京工業大学助教授に就任される直前、39歳の気鋭の研究者だった頃に書かれたもので、以来何度も重版化されている定評のある一冊です。 現代人のモノの考え方、社会の捉え方に深く根付いている「構造主義」を、初心者にも理解できるよう丁寧に解説してくれている良心的な書だと感じます。この本が、長年読まれ

『凱風館日乗』を読む

本日は、内田樹『凱風館日乗』(河出書房出版2024)の読書感想文です。週末プチ旅の移動の合間に挑みました。読了して、今の自分が漠然と考えているようなことを、クリアに表現されているフレーズに次々と出会うことができ、腹落ちするとともに、とても幸せな気持ちに包まれることができた一冊でした。 丁寧に語りかける論客最近、内田樹氏の著作を読む機会が急激に増えてきました。読む本の選択を、著者の好き/嫌いで判断するのはできるだけ避けたいと思いますが、自分の関心時についてどう考えているのか、

『サル化する世界』を読む

昨日はお酒の酔いのまわりが酷くて、頭が全然働かず、身体の自由も効かず、部屋に戻って早々にベッドに倒れ込んだ為、またしても『毎日note』の連続投稿記録がストップしてしまいました。また、振り出しに戻るですが、気分一新で進めていこうと思います。本日の内田樹『サル化する世界』(文芸春秋2020)の読書感想文から、再開です。読了しておらず、特定の部分を抜き出しての感想です。 定期的に意見を拝聴する論客著者の内田樹氏(1950/9/30-)の著作はよく読んでおり、自分に許している本の

『仕事の辞め方』を読む

本日は、大阪へ向かう高速バスや息子との電車旅の隙間時間で読み終えた、鈴木おさむ『仕事の辞め方』(幻冬舎2024)の読書感想文です。 潮時で仕事を辞めるのは最高の贅沢放送作家・脚本家として長年一線で活躍してきた鈴木おさむ氏が、2023年10月12日に、2024年3月31日で放送作家業・脚本業を辞めることを発表しました。以来その言動や行動は注目され、最後に手掛けたテレビドラマの仕事は注目されました。本書も売れているようです。 1972年4月5日生まれの鈴木氏は現在51歳で、自

『評価と贈与の経済学』を再読する

本日は、松本へ帰って来る電車の中で再読してまた学ぶことの多かった、内田樹・岡田斗司夫『評価と贈与の経済学』(徳間文庫カレッジ2015)の読書感想文です。 軽い気持ちで読める本タイトルはかなり仰々しいものの、実際には軽い気持ちで読み進めて、全く問題のない本です。内田樹氏も、岡田斗司夫氏も好きな人物だし、語っている内容には共鳴する部分が多く、再読なのに改めて引き込まれました。 この本のもとになっている対談自体は、2011年9月に行われています。 本日の読書感想文は、【第六章

佐藤愛子氏に学ぶ幸せの極意

今日の松本は寒い一日でした。三度目の信州の冬を受けて立たねばなりませんから、体力は大切です。明日は多少気温の上昇があるようですが、暖かい服装をして、身体が温まる食事を取って、正攻法で挑むことにします。本日は、走り読みしている、佐藤愛子『それでもこの世は悪くなかった』(文春新書2017)の短いあとがきから貰った爽やかな気持ちを忘れないように、記事に残しておきます。 歴戦の勇者、作家・佐藤愛子父に明治・大正期に活躍した作家の佐藤紅緑(1874/7/6-1949/6/3)、兄に詩

『人生後半の戦略書』を再読する

横浜の自宅に帰ってきて夕飯(私の希望でたら鍋)を食べ、ビールとワインを飲んで気持ちよく布団に寝転びながら、この記事を書いています。本日の記事は、アーサー・C・ブルックス 訳=木村千里『人生後半の戦略書』(SB Creative2023)を再読した読書感想文です。 人生後半戦のバイブルの一つこの書は今年2月の発売当時にかなり話題となり、私も存在を知ってから速攻でamazonに注文し、興奮しながら読了しました。僭越ながら、私が人生後半に臨むにあたり考えていた幾つかの秘訣と同じ趣

『君が手にするはずだった黄金について』を読む

昨日は、K-Arena横浜で行われたコンサートの終了後に、調子に乗って飲み歩いてしまい、記事の毎日投稿を飛ばしてしまいました。その観戦記は後日まとめるとして、本日は小川哲『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社2023)の読書感想文です。 リアリティのある物語本書の著者、小川哲氏(1986/12/25-)は、東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍中の2015年、処女作の『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、華々しい作家デビューを飾り

『世界はなぜ地獄になるのか』を読む

本日は、橘玲『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書2023)の読書感想文です。 「リベラル」を知る為の読書橘玲氏の(おそらく)最新刊です。社会を支配する価値観が刻々変化し、対応するのが益々難しくなっていく世界で、キャンセルされずに生き延びる術、無自覚に差別を行なってしまう愚を防ぐ術を学ぶ為の書と言えるかもしれません。 その為には、今一つイメージが定まらないものの支配的な価値観として決して無視できない「リベラル」と現代のリベラル化する世界の理解が不可欠なように思います。そ

『超入門 ストーリーでわかる「起業の科学」』を読む

信州生活が間もなく2年となり、完全に体質が変化してしまったようです。首都圏の湿度のある気温の高さが頗る不快です。とはいえ、溺愛している息子にせがまれたら、電車旅には行かざるを得ません。息子の電車旅に付き合っている間に読み終えた田所雅之『超入門 ストーリーでわかる「起業の科学」』(朝日新聞出版2021)をテーマに記事を書いていきます。 課題図書だが、圧巻だった本書は、著者の田所雅之氏が2017年に発表した『起業の科学』を噛み砕き、事例研究風にアレンジし直した本です。というのが

『生きるヒント2 新版』を読む

本日は、五木寛之『生きるヒント2 新版 今日を生きるための12のレッスン』(Gakken2014)の読書感想文です。 アマノジャクな生き方五木寛之氏は、私が大好きな作家であり、ほぼ無条件に信頼している数少ないオトナの一人です。読者として出会ってから、もう40年近い月日が経過しており、随分と長い付き合いになっています。近年は専らエッセイを読んでいますが、かつては氏の小説を読み漁ってきたので、氏の文体や考え方から大きな影響を受けています。90歳を超えて、なお影響力のある作品を発

『2020年6月30日にまたここで合おう 瀧本哲史伝説の東大講義』を読む

本日は、瀧本哲史『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』(星海社新書2020)の読書感想文です。 偶然の出会い本書は、2012年6月30日、著者の瀧本哲史氏(1972/1/22-2019/8/10)が、東京大学伊藤謝恩ホールで行った講義の内容を一冊にまとめたものです。京都大学客員准教授、成功した投資家、事業家であり、『武器としての交渉思考』『武器としての決断思考』など話題になった著作がある瀧本氏は、病との格闘の末に2019年に47歳の若さで亡くなっ

『経済の不都合な話』を読む

横浜の自宅に帰ってきて二日目です。午後からは息子との電車旅に付き合いつつ、気分的にはのんびりと余裕をもって過ごしています。本日は、自宅に置いてあった、ルディー和子『経済の不都合な話』(日経プレミアシリーズ2018)の"第6章 大企業が機能しない神経学的理由"から拾い上げた幾つかの気になる表現から、思考を広げてみます。 心に引っ掛かった文章に着目する読書本書はおそらく再読になる筈なのですが、しばらく読み進めても、その時の記憶が全く蘇ってきませんでした。おそらく、ふむふむと流し

『暇と退屈の倫理学』を読む

本日は、JR飯田線の長旅用に買い込んで読み始め、大量の付箋紙を貼り、知的興奮を味わいながら読み進めた國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(新潮文庫2021)の読書感想文です。 2022年東大・京大で1番読まれた本2021年発売の新潮文庫版(令和5年3月 16刷)で読み進めていますが、オリジナルは朝日出版社から2010年に、増補新版が2015年に発刊されています。哲学書という難解なジャンルの本ながら、異例のベストセラーになっていると知り、興味を持っていました。購入した本に巻かれてい