『生きるヒント2 新版』を読む
本日は、五木寛之『生きるヒント2 新版 今日を生きるための12のレッスン』(Gakken2014)の読書感想文です。
アマノジャクな生き方
五木寛之氏は、私が大好きな作家であり、ほぼ無条件に信頼している数少ないオトナの一人です。読者として出会ってから、もう40年近い月日が経過しており、随分と長い付き合いになっています。近年は専らエッセイを読んでいますが、かつては氏の小説を読み漁ってきたので、氏の文体や考え方から大きな影響を受けています。90歳を超えて、なお影響力のある作品を発表し続ける姿勢には頭が下がります。
本書には12のエッセイの最後に、"アマノジャクな眼"という短いあとがきが収められています。世界的アーティストの岡本太郎氏とピカソの画風の評価を巡って激論を交わしたというエピソードが語られます。アマノジャク(天邪鬼)、センチメンタル(抒情的)は、作家、五木寛之を理解する上で重要なキーワードだと思います。
私の鎮痛剤
心にモヤモヤを抱えている時ほど、五木氏の文章が読みたくなります。自分ではうまく消化できていない焦燥感や虚無感が心に巣食っている時、氏のエッセイを読むと私を悩ませている正体がクリアになり、ストンと腑に落ちることが少なくありません。私にとっては、炎症や意味不明のもやもやを抑えてくれる鎮痛剤のような作家です。
今回この本を手に取ったのも、最近の自分が苛まれている精神の不安定さの原因を探り、手っ取り早く治療を施したい、という邪な思惑がありました。将来に向けた意味ある行動への腰が重くなっていることで自己嫌悪感が強くなっていたのが、氏の紡ぎ出すことばによって、一時的にでも癒され、焦燥感で凝り固まっていた心が融解されていく気持ち良さを期待していました。
欲しかったことば
弱っている自分が、今求めていることばを、五木氏は幾つも手品のように目の前に出してくれます。本書でもそうでした。
ちょっと読み返しただけでも、こうしたさりげなく置かれている文章に心が惹かれ、明日に立ち向かう勇気が湧いてきます。再び立ち上がって、歩き出す力をそっともらっています。
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