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『世界はなぜ地獄になるのか』を読む
本日は、橘玲『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書2023)の読書感想文です。
「リベラル」を知る為の読書
橘玲氏の(おそらく)最新刊です。社会を支配する価値観が刻々変化し、対応するのが益々難しくなっていく世界で、キャンセルされずに生き延びる術、無自覚に差別を行なってしまう愚を防ぐ術を学ぶ為の書と言えるかもしれません。
その為には、今一つイメージが定まらないものの支配的な価値観として決して無視できない「リベラル」と現代のリベラル化する世界の理解が不可欠なように思います。その問題意識は、冒頭の橘氏の
私は"リベラル"を「自分らしく生きたい」という価値観と定義している。
という一文が突破口になりそうです。
ステイタスゲーム
個人的に最も興味を惹かれたのは『PART4 評判格差社会のステイタスゲーム』という章です。橘氏の文章は、過去にも取り上げています。
世界中の人々がステイタス競争に明け暮れており、ひとたび低いステイタスに追いやられれば、人生が大変なハードモードになる、というのは非常にわかりやすい地獄です。
わたしたちは、自分よりステイタスの高い者と比べるときに痛みを、ステイタスの低い者と比べるときに快感を覚える。これは脳の基本設計なので、心がけや道徳教育で変わるわけではない。
これが、人間の性として避けられない先天的な性向であり、後天的な学習によっては克服できないものだとしたら、関心は、何がステイタス(社会・経済的地位)を決め、司るのかということになります。
ステイタスを上げる方法には、「成功」「支配」「美徳」があるものの、前二者は、手にできる層が限られており、大部分の人間には難しいのが実情です。しかしながら、「美徳」に関しては、不道徳者を正義の名の下に糾弾して吊るし上げることによって、誰でも快感を得ることができます。SNSの普及は、その傾向を顕著にしています。なんとも物騒な世界です。
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