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ステータス・ゲームを考えてみる

本日は、作家・橘玲氏が自身のブログの中でウィル・ストー著・風早さとみ訳『ステータス・ゲームの心理学: なぜ人は他者より優位に立ちたいのか 』(原書房2022)の内容を解説されている部分を読んで、妙に腹落ちする部分が多かったので、自分の備忘の為に記録に残します。

繰り返されるステータス・ゲーム

この論考のキーワードになるのが、ステータスです。

わたしたちはみな、ステータスを求めて死に物狂いの努力をしている。なぜなら、進化の過程でそのように「設計」されているから

ここで使われるステータス(status)の意味は、一般的に使われたり、理解されたりしているステータスとは、少々ニュアンスが異なります。社会学的な定義に近く、

客観的に認知されている社会的地位ではなく、人が自分に従ったり、敬意を払ってくれたり、感心したり、褒めてくれたりする状態、なんらかの形で自分が他人に影響を与えられた時に得られる感情(emotion)

という意味で用いられています。人はステータスが上がると「報酬」を得たと感じて嬉しく思い、下がると「懲罰(あるいは痛み)」を受けたようで惨さを感じる動物だ、という説明がなされます。

人は、ステータス・ゲーム(=自分や他人のステータスを操作し、懲罰を避け、報酬を獲得する)を続ける生き物であり、ステータスの高い人間はより幸福感が強く、ステータスの低い人間は寿命が短くなる、という説明には、非常に納得感がありました。

人生というゲームがうまくいかない時

この考え方を発展させると、人生というゲームがうまくいっていないと感じている時には、すなわち、ステータス(≒社会的地位)が下がっていることを意味しそうです。

また、持っていたはずのステータスが奪われたり、陳腐化したように感じられると、人間はより失望感を味わい、自己否定感が強くなる、という説明にも深く頷きます。当然得られると思っていたステータスが手に入らないと悟った時の、形容し難い悶々・鬱々とした気分は、経験的にわかります。

さらに、

うつは「病気」というよりも、社会的・経済的に成功できなかったり、性愛競争から脱落してしまったことへの合理的選択なのだ

という見方も、一般的ではないし、それに苦しんでいる人には不適切かもしれませんが、塞ぎ込んでしまう原因としては、妥当な気もします。

ステータスを上げる為の戦略

ステータスを上げる方法には『成功ゲーム』『支配ゲーム』『美徳ゲーム』という、三つのパターンがあるそうです。

成功ゲーム:自分が成功者(≒お金持ち)であることをみせびらかす
支配ゲーム:他者を支配する。「パワハラ」「マウンティング」はその典型
美徳ゲーム:相手よりも道徳的に優れていると誇示する

ひとは富や権力を求めてステータスをあげようとするのではない。ステータスの代理指標として、富や権力を手に入れようとするのだ。

現代は、ステータスの有無が幸福度に直結する時代であり、金や地位や名声以上に、身近な人からの評判を得ることの方が大事です。それが得られないと『屈辱』の感情が芽生え、その状態が長く続くと危険な状態に陥るというメカニズムは、非常によくわかります。

今回は、橘氏の解説をさらっと抜粋しただけでしたが、面白そうな本なので実際に本書を購入し、読書ノートを作りながら熟読してみたいと思います。

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