りんごとぶどうの効能*ショートショート
それは我が母イブが蛇にそそのかされ、神の果実であるりんごを食べてしまったことに始まった。母イブは父であるアダムにも、りんごを食べるようにすすめた。
そして二人は神を裏切ったこと…誘惑に負けてしまったことで罪を負い、原罪である”死”を経験することとなる。
そのとき二人が食べたりんごは”知恵の実”だった。
それまで動物のように暮らしていた二人は、知恵の実を食べることで、羞恥心、人と比較すること、知識、知恵、学び、承認、許しなどを授かった。
それが人間としての効能なのである。
わたしは生まれてくる前に、繰り返し両親に言われてきたことがある。
神の果実に気をつけろと。
そこでわたしは、ぶどうを食べることを拒否した。
生まれてからぶどう…ワインも干したぶどうも、口にしていない。
学び、助け合い、働き、ときに戦い、休止するときも走るときも、つねに自分を信じてきた。
わたしの生涯は、波瀾万丈ながらも流れゆく大きな川のように、さまざまな景色と共に、海に流れつこうとしている。
そろそろわたしの生涯に幕を閉じる時が来たようだ。
意識が遠のくのを感じた時、枕元に両親がぶどうを持って現れた。
「あなたはよくこの神の果実を食べぬまま、生きてこられました。
だが次の我が子にはぶどうを授けることにしよう。
神の原罪を受けるのだ。」
なんだと?わたしは父と母の言葉を聞いて、怒りがわいてきた。
両親に従がってきたわたしの最後のときに、なぜネタバレのようなことを言うのだ?!
もうわたしは息が尽きる。神の罪を受けようではないか。
わたしはワインを飲んだ。するとあらゆる感情が押し寄せた。
明日が不安だという恐怖。
次の瞬間は、明日が楽しみでしかたないというよろこび。
いま見ているものが、見えているはずなのに、他のことを見て考えている。
そのままわたしの心臓は止まった。
神の果実であるぶどうは”想像(創造)の実”
あらゆる夢を見せてくれる神の果実だった。
想像(創造)が人間としての効能。
喜びと悲しみなのであった。
ひきこもりの創造へ役立てたいと思います。わたしもあなたの力になりたいです★