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読書日記*HSPおすすめ本。オタクにささげる『ハケンアニメ!』辻村深月

この本を読んでわたしは泣いた。いろんな想いが変わった。
心の奥で認められた喜びと、もっと前を向こうと思う気持ち。そしてアニメの見かたが180度ぐらい変わった。
アニメは『画面の中に流れる、音と絵の連動。主人公の表情、コスチューム、セリフ、圧倒的な視覚で”魅せる”ということ。』と辻村深月さんはいう。
ぼーっと眺めていたアニメがそこまで丁寧につくられていたなんて考えていなかった。そしてそれをつくる人のこころも考えてなかった。

ここからいつもより引用多めですが、ネタバレなしです。この本はわたしの想いを代弁してくれたようで、いつもより熱くキーをたたいております。

現実を生き延びるには心を強く保つしかない

いろんな工程の仕事があって、それをそれぞれの視点でアニメという文化を支える人たち。それは”好きだからこそできる”仕事への熱意と誇りだ。
そしてそれは生きづらくても心を強くすることでより深くなる。

『リデルライト』の中にある、”生きろ”と言う命令形の言葉は、泥臭いけど、本気です。現実を生き延びるには、結局、自分の心を強く保つしかないんだよ。リア充って、現実や恋愛が充実してる人間を揶揄して指す言葉があるけど、リアルが充実してなくったって、多くの人は、そう不幸じゃないはずでしょ?恋人がいなくても、現実がつらくても心の中に大事に思っているものがあれば、それがアニメでも、アイドルでも、溺れそうな時にしがみつけるものを持つ人は幸せなはずだ。

『ハケンアニメ!』P134

”生きろ”と言われて余計なお世話だと思ってしまい、あっちにもいけないこっちも行き止まり。もう何もかもめんどくさい。そう思ったときにしがみつけるものがあるだろうか。

心を強く保つことができないからこそ、すがれるものがある。
それは強さだとおもう。

君の楽しみは尊いもの

溺れそうな時にしがみつけるものを持つって、ときに簡単、なのにとても奥にしまっておきたくなる。バカにする人はきっとそれを知らないんだと思う。

一人でできる楽しみをバカにするやつは、きっといつの時代にも一定数いる。それはどれだけアニメが産業を大きくしても変わらないでしょう。だけど、もし、監督って立場で発言する権利が得られるなら、『リデル』をこれから愛してくれる人にこう言いたい。誰にどんなにバカにされても、俺はバカにしない。言ってみれば作者だし、業界の内部の人間から言われても説得力ないかもしれないけど、君の楽しみは尊いものだと、それがわからない人たちを軽蔑していいんだと、そう、言わせてもらえたら、こんな場所に座らされている甲斐も少しはあったかなって思う。

『ハケンアニメ!』P136

きみのたのしみは尊いものだ。そう言われたらそれだけで救われないだろうか。なにかを創造しているわけじゃないけれど、ひとりでできるたのしみを持つことは、何よりもだいじにしたいこと。

だけどそのぶん狭く深くなった視点は、変えられないのか?
じぶんだけが味わえるしあわせは、他人にはわからないものなのか?

見てみたい、なんて思ったことない。存在を聞いた今も思えない。
どうやら、オタクかどうかに関係なく、自分は外で何かすることに徹底的に興味がない人間なのだなぁと他人事のように思い知る。でも、だって。仕方ない。
私は、自分が好きな世界に囲まれて、絵を描いていれば、それで幸せなんだから。
それがどれだけ人から見て狭い世界だって、ささいなことだって、そこで安定してしまえる、そういう小さい人間なんだから、仕方ない。

『ハケンアニメ!』P375

仕方がないと、思うことはできる。弱さを知ることはきっと方向性を知るための地図になる。
でもそれは弱さを武器にすることにつながってしまう。
相手を理解しようとしない傲慢さにさえなってしまう。

たのしみを続けることを誇らしく思っていい。

宗森の言う通りだ。リア充は、褒め言葉じゃない。悪口だ。
理解できない相手のことが怖いから、仰ぎ見るフリをして、この人を突き放して、下に見ていた。自分は非アリで充実した青春にも恋愛にも恵まれてないんだから、これぐらいのことを思う権利があると、勝手に思っていた。人よりかけたところが多い分、自分の方が深く物を見ているんだからと自惚れていた。
絵を描くささやかな幸せだけがあればいいと、ずっとそれだけ思ってきたけど、人をバカにして遠ざけて、自分のために絵を描く和奈の行為だって、見る人が見たら、充分に傲慢な幸せなのかもしれない。

『ハケンアニメ!』P404

ぐさぐさと突き刺さることばたち。もう泣くしかない。
わたしはいままで弱さを武器にしていたと思い知った。

知人にアイドルオタクの40歳をすぎたかわいい人がいる。
アイドルを追い続けることは彼女のライフワークであり、それがやるしかないことだから続けていて、わたしにはそれがうらやましいのだ。
仕事もばりばりやって、アイドルのために時間もエネルギーも注ぎ、バーチャルだとじゅうぶん理解したうえでじぶんの夢をつくっている。
話しだしたら止まらない…いかにエネルギーを注いでいるか、それがどんなにたのしいか、その世界のしくみのこと…彼女の話を聞いて引く人がいても、わたしには彼女のこころが強いとしか思えない。

相手の知らない世界をバカにするのではなく、知ろうとしていない。それをじぶんに置き換えて過去を見てみると、いかに傲慢だったかと涙が出る。
その”すがるものがある”という事実は、彼女が続けてきたからこそのもの。それは誇りに思っていい。
というかプロだといっていい。

バーチャルな世界と現実というほんものの世界

バーチャルな世界に逃げるのは弱いことだと言う人もいる。
夢の世界にばかりいないで、現実を見ろよと。
ただ人は現実の事実だけでは生きていけない
夢を見ないとこころは枯れてしまうのだ。
そして芸術の世界は、夢を売る仕事。
こころを込めた先には、現実にあらわれたほんものの世界があるとわたしはおもう。

すべての好きなことを誇りに思ってつくりだしていくオタクという呼ばれ方をしている楽しい人に、もっとほんものを見せてほしいとこころから思っている。



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