死神からの手紙*ショート・ショート
”お盆の灯火”スピンオフ。
死神さんのおはなしです。
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拝啓。
その後、君は健やかにあの世生活を送っているようだな。
今日、手紙を書いたのは、ふと君が不信に思っているようだったから説明しておこうと思ったからだ。
会って話すよりも文(ふみ)にすることで伝わることもある。
なぜ死神という神が存在するかという疑問だな。
君に問う。
『死』は”悪”か?
『生』は”善”か?
一つのものに表と裏があるように、悪の面もあれば善の面もある。
どんな場面も善と悪があることを受け入れたときに、物事を宇宙的に考えられる意識が見えてくる。
この宇宙で古くなりすぎたものをそのままにすれば、腐っていくだけ。
何かを始めるには古いものを終わらせて、それを乗り越えて行く必要がある。
タロットカードに描かれているわたしは、幼いものや弱いものが助かり、悪人で金を支配するものが死に、法王を従えている。
そして日が昇るのだ。
人間は「正しさ」以外の方法で苦しむことなどできない。
苦しんでいる者は例外なく、自分の中に「正しさ」を抱えている。
病気が”悪”なのか?
病気がない状態が”善”で「正しい」のか?
「正しさ」の副作用でしかない「苦しみ」は必ず消える。
世界には「正しさ」が多すぎる。
自分に問うてみるがいい。
それが本当に自分にとって「正しい」ことなのかを。
信念として持っている「正しさ」が、実は人の未来の可能性を奪っている。
世界には…宇宙には、変化しか存在しない。
1秒前はもう存在していないし、古くなっている。
抱え込んだ信念は、腐り始めているかもしれないと疑ってみるのだ。
そこにわたしの存在意義があるかもしれない。
しかしわたしの存在などないかもしれない。
すべてが裏と表だ。
光と影を見つめてみろ。
人がすべて自分の中に、宇宙の中にもっている光と闇を。
また会おう。そして祝杯をあげよう。
敬具。
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もっとおちゃらけた死神の話を書こうかと思ってたんですが、彼にはもっと謎を。そして男前でいてほしい。
【sideA】エイタと【sideB】びいこの物語もぜひ。
▼お盆の灯火*ショートストーリー【SideA】
▼▼お盆の灯火*ショートストーリー【SideB】
▼参考文献*感謝!