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その救済の名は「死」

ペモリンの効き目が切れる時 それはあまりにも突然だ 眠るというよりは意識を失う 気がついた時には 落ちる直前の記憶を 失くしている 彼ら彼女らの死が 遠く曖昧になるにつれ 己れの死の薫りは ますます濃く ますます鮮明に なってゆく この美しい 憂鬱な夢も じきに ラストシーンを 迎える

    • 純太という名の子が居た

      専門学校時代、19か20の頃か。年上のジュンタという子と友達になった。女の子なのに男子みたいな名前で髪も短くしてた。 「ワタシ、今度は男の子に産まれてくるんだ」 「ふーん」 「ホントだよ?」 「そっかー」 中央線で帰る途中の事だった。 列車がガタンと大きく揺れた。思わず目の前の吊り革に同時に掴まった。慌てて手を離す。 「あ、ごめん」 「ううん、ごめん」 西荻あたりから新宿まで二人とも暫くうつむいて黙り込んであとは何を喋ったのか覚えていない。 一度郊外の公園に車で連れ

      • 星座は夜空に青く燃えて

        きみは少し笑いながら言った それが冗談なんかじゃないと 僕は気がついていたのかもしれない 電話するって約束したのに 僕は逃げた その2日後 きみは自らの手で終えてしまった きみは生涯消えない罪と罰を 僕の胸の奥に刻み込んだ 「じゃあ、ズルいのはどっちかな」 僕を思い出したら聴いて はにかんだきみ 聴いてるよ 漆黒の夜空に双子座が 青く燃えている きみのことを全部忘れたい ぼくら、この曲を聴きながら 2度目の別れを交わそう 「またね」

        • ドリアン・グレイの瞳は菫色の泉

          感覚と知性は均衡を保持しながら様々な経験とそれに伴う認識によって、研鑽されるべきである。オスカー・ワイルドはこの倫理的に優先されるべき均衡に一石を投じ「感覚は洗練され得るし知性は堕落し得る」と一見、唯美論者らしい反論を展開する。 しかしながら現代の我国に於いて知性を置き去りにした感覚至上主義者は嗜好性の違いこそあれただのコレクター若しくはマニアに過ぎない。 天才故の持病としてワイルドは己の洗練され過ぎた知性(言語)に倦み疲れたのだ。だからこそ感覚の復権を旺盛な諧謔精神と共

        その救済の名は「死」

          Glider

          青く明けてく世界で 風を待ちながら 陽の光に溶けてく 君の瞳から 吸い込む息は どこまでも深く 空っぽの胸を 満たしてゆくのさ ああ ここで いつまでも目を閉じていた 待ち焦がれた始まりを 誰も知らない景色を 今眺めて 足跡だけを 残して 消えてゆくよ 青い空を駆けてく 白いグライダー 忘れられた メロディは 雲の彼方へと 虹色の光の残像が 目の前蘇ってく 幻の記憶の 君の横顔の輪郭線 辿っても 答えは無い つないだ指が離れても 祈り届くように 遠

          天使の羽を失くしてからの微かな記憶

          ひとは此の世に生まれ いつから天使の羽を失ってしまうのだろうか 微かな痕跡を残して七色に 透き通って輝く天使の羽はいつしか 消えてしまう 雲の螺旋階段を登っていって神様らしき お爺さんに逢った事があります あなたは神様ですか? と僕は訊きました 「わたしは神様じゃないよ 神様はもっと上にいなさる」 と言って雲の上の青い空を よぼよぼの指で指差しました 神様じゃないならあなたは誰ですか? 「私は『見届けるもの』だよ」 とお爺さんは言いました 「天使の羽を残

          天使の羽を失くしてからの微かな記憶

          根拠を超越するひと言の魔法

          P202 彼女にはぼくを助けることができなかった。われわれがいちばん欲しいと思っているのは、ただしっかりと抱きとめてもらい……そして言ってもらうことなんだ。 ……みんな(みんなというのはおかしなものさ、赤ちゃんのミルクだったり、パパの目だったり、寒い朝の音を立てて燃える薪だったり、フクロウだったり、学校の帰り道のいじめっ子だったり、ママの長い髪の毛だったり、こわがることだったり、寝室の壁のゆがんだ顔だったり、するんだからね) ……みんなそのうち、きっとよくなりますからね、

          根拠を超越するひと言の魔法

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          硝子細工の箱

          青い空の向こうがわ 君の唇のような 白い月が凍りついて なす術もなくただ立ち尽くす 遠い空の向こうがわ 仰ぎながら想いを巡らせる 鳥の声と名も知らぬ花 よろめきながらあてどなく 君の行先は知らないけど 遠くから届いた便り 見上げれば千切れた思い出が 風に吹かれて消えてゆく 夕べの雨が嘘のようで 舞い落ちる木の葉に手を伸ばす いくつかの約束も問いかけも 答えは風に舞っている 君の行先は知らないけど 遥か遠くから届いた 照りつけてた陽が沈んでく 青く溶けて宵闇の中へ 塗り潰した夜へと駆けてく 君に会えそうな気がして 君のくれた硝子細工の箱は いつだっけな 今はもう無い やけっぱちの夜空に放り投げ 星になった  星になってしまった

          硝子細工の箱

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          とある映画を巡る、とある対話の続き。

          立憲主義、民主主義社会の基本は意見の違いを可視化した上でそれぞれの存在を尊重し合う事です。それを阻害しているのが意見の違いに対する不寛容だという言い方もできますがむしろその根本にあるのは『格差』ではないかとも思います。経済的、或いは教育的『格差』が不寛容を拡大させている要因ではないかと。特に本来人間形成にとって基本であるはずの「学問」に本格的に介入し始めた昨今の政府の悪辣さ、程度の低さは正に反知性主義(米国に於ける反知性主義とは若干定義が違うが)に基づくものであり、教育格差を

          とある映画を巡る、とある対話の続き。

          オリオン座の森 (Still Ill)

          下がらない微熱 喉の先の軽い咳 いつかここから逃げ出す 真夏でも肌寒いくらいのここは 人影も無い白樺の森 沈没しかけた帆船みたいな 朽ちかけたサナトリウムで療養した日々 解熱剤とモルヒネの夢 白い壁とぎぃぎぃ軋む廊下 屋根裏部屋の秘密の合鍵 青い消毒水 カミソリの刃 血を啜った薔薇の花 レースで編んだ飾り襟 白いタイルが眩しい小部屋で 服を脱いで鏡の前 また影が濃くなった肋骨 腕の骨 浮き出た青い静脈 天使の羽の名残りの肩甲骨 髪を洗っているその刹那 磨り硝子の向こ

          オリオン座の森 (Still Ill)