オリオン座の森 (Still Ill)

下がらない微熱
喉の先の軽い咳
いつかここから逃げ出す

真夏でも肌寒いくらいのここは
人影も無い白樺の森
沈没しかけた帆船みたいな
朽ちかけたサナトリウムで療養した日々

解熱剤とモルヒネの夢
白い壁とぎぃぎぃ軋む廊下
屋根裏部屋の秘密の合鍵
青い消毒水
カミソリの刃
血を啜った薔薇の花
レースで編んだ飾り襟

白いタイルが眩しい小部屋で
服を脱いで鏡の前
また影が濃くなった肋骨
腕の骨
浮き出た青い静脈
天使の羽の名残りの肩甲骨

髪を洗っているその刹那
磨り硝子の向こうがわ
5月の妖精がニィっと笑って
消えた

気がついたらベッドの上だった
髪はまだ濡れていた
窓の向こうには
オリオン座が瞬いていた
いつかここから逃げ出そう

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