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7.「令和の白拍子」 宝塚音楽学校へ〜戦いの中学生時代(中編)

「令和の白拍子」こと、花柳まり草(はなやぎまりくさ)こと、まりちゃんです。

こちらで7本目の記事でとなります。

早いもので、「note」を始めてから二週間が経とうとしています。

誰かにお仕事として依頼されたわけではないけれど、数時間パソコンに向き合い、集中し、自分という人間を「発信」する。

「舞台」という表現の場を諦めざる得ない状況にあった今の私にとって、どのような形でも「自分の内側から、発信する」という行為自体がとても大切なことであり、結果として自分のモチベーションを保つのにかなり役立っていると感じます。

まだまだ書くのに時間がかかっておりますが、やるだけの価値はあると実感している日々です。

お陰様で、現時点で《2000人》の方に記事を読んで頂いている様です!ありがとうございます。

平生より親しくさせて頂いている皆様、応援してくださっている皆様にも記事を読んで頂いているみたいで…わざわざメッセージを頂いたりしまして、とてもとても嬉しいです。

本当にありがとうございます。

さて、前回の記事では、宝塚歌劇団と出会った私が、どの様に「受験生時代」をスタートさせていったかについて書きました。

更新が遅くなってしまいましたが、「続きが気になる!」というお声に励まされ、今回も何とか書く事ができました。

今回は、私の意識を変えたとある演劇作品についてのお話がメインになりました。

それでは中編、参りましょう!

■グリークス・ショック その1

前回の記事でも熱く語らせていただきました演劇作品「グリークス」

世界の巨匠・蜷川幸雄先生による演出、上演時間9時間のギリシャ悲劇です。

上演時間もさる事ながら、キャストの皆様も豪華絢爛。

圧倒的な熱量にフラフラになりながら、シアターコクーンに通いました(3時間ずつ、3日間にわたる上演でした)。

簡潔に纏まっている紹介がありましたので、wikipediaから引用させてください。

『グリークス』(The Greeks)は、イギリスの演出家ジョン・バートンと翻訳家ケネス・カヴァンダーが、10本のギリシャ悲劇をひとつの長大な物語に再構成した舞台作品。3部構成になっており、上演時間は9~10時間に及ぶ大作である。原題は「ギリシャ人たち」の意。
ギリシャ軍の総大将アガメムノンがトロイア戦争を開始する時点から、その息子オレステスがタウリケにいる姉イピゲネイアを救出するまでが描かれる。
初演は1980年、英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)公演。日本初演は1990年の文学座アトリエの会公演(演出は吉川徹、鵜山仁、高瀬久男)。2000年には蜷川幸雄の演出により、主役級の俳優たちを結集して上演され、読売演劇大賞、紀伊國屋演劇賞などを受賞した。

「トロイア戦争」をめぐる物語は本来それぞれ独立しており、エウリピデス、アイスキュロス、ソポクレスといった三代悲劇詩人やホメロスといった名だたる詩人たちによって描かれています。

そんな独立した10本の戯曲が一つの作品としてまとめられており、さながら壮大な大河ドラマの様でした。

一日目は「戦争」
トロイア戦争勃発からギリシャ軍の勝利までが描かれます。

二日目は「殺人」
勝利をおさめたはずのミュケナイ王家で起こる数々の殺人の場面が続きます。

三日目は「神々」
ついに沈黙を破って神々が登場し、人間たちの全ての因縁の糸を解き、呪いを一掃します。
血みどろのギリシャの大地に、光に満ち溢れた平和が訪れるまでが描かれます。

そんな怒涛の三日間の中でも、私が強く強く戦慄を覚えた場面が二つあります。

まずは二日目の「殺人」
ソポクレス作「エレクトラ」による場面です。

《ギリシャの総大将アガメムノン(平幹二朗さん)》は、トロイア戦争の際、神々の神託により《長女イピゲネイア》を生贄として差し出してしまいました。これをずっと恨みに思っていた《妻クリュタイムネストラ(白石加代子さん)》は、《愛人イギストス(吉田鋼太郎さん)》と共謀し、ついにアガメムノンを殺害します。

ついでに、アガメムノンがトロイアから花嫁として連れ帰った《トロイアの王女カッサンドラ(中嶋朋子さん)》も惨殺されてしまいます。

そして時は経ち、《アガメムノンの次女エレクトラ(寺島しのぶさん)》と、母と愛人に命を狙われた為にギリシャを脱出していた《アガメムノンの息子オレステス(尾上菊之助さん)》の姉弟が、母親とその愛人を殺し、父親の復讐を果たすのです。

この母親殺しの場面
歌舞伎の「女殺油地獄」の演出により、殺し合いが進行していきます。

四方に設けられた水瓶が倒され、大量の水が舞台を浸していきます。

水と血に濡れながら、もつれあい、絡み合い、親と子が殺し合う。

永遠に消滅させることができないもの…それは、親子の「血の絆」。

しかし、命の掟に抗う姉と弟は、死に物狂いでそれを破壊していきます。

血に濡れた親子は目を血走らせ、互いに憎しみ合いながらも、本当は狂おしいほど強烈に愛し合っていました。

自分の魂と肉体を与えてくれた存在を破壊する子供たちと、自らが創造したものによって破壊される母。

同じ色の血が流れる肉体をぶつけ合いながら、同じ匂いの血を流し合う。

そんな三人の、赤い赤い艶姿。

以上が、14歳のまりちゃんが強烈に感動した場面でございます。

私の拙い文章力では、この場面の凄惨さと美しさを表すことが出来ないのが本当に残念です。

とにかく、14歳のまりちゃんは凄まじい戦慄とエクスタシーを感じました。

しかも、オレステスとエレクトラは姉弟でありながら、男女として深く深く愛し合っていたのです。

もう、完全に、やられました。

■グリークス・ショック その2

というわけで、第二部の「殺人」はこの上もなく真っ赤でドス黒く、まりちゃんの心と頭はグチャグチャにかき乱されました。

最終日、「第三部を観たら私はどうなってしまうのか?」と不安に思いながら席に着いたのを覚えています。

最終日にはギリシャ悲劇お得意の「デウス・エクス・マキナ」(機械仕掛けの神)のパワーが炸裂し、めちゃくちゃな人間関係が、アレよアレよと綺麗になっていきます。

もちろん、そのお掃除の為に、何名かは消されます。
怖い…笑。

そして、物語の最後の最後に、まりちゃんは生涯忘れる事の出来ない場面を目撃することになりました。

9時間に及ぶ上演時間の間、色々な事がありました。

戦争がありました。

人がたくさん死にました。

憎しみ合いました。

そして愛し合いました。

神様の気まぐれによって振り回されまくった人間たちの在り様は、ぐっちゃぐちゃで、どっろどろで、めっちゃめちゃでした。

でも、最後の最後に、あれだけ暗かった舞台が急に明るくなりました。

登場人物たちが蓮の花を持ち、真っ白な光の中で手を広げ、天を仰いでいました。

まるで踊っている様でした。

血の匂いがこびりついた錆色の世界が、一変して真っ白な世界になりました。

…震えました。

涙が止まりませんでした。

光の中で踊る人々の、なんて幸せそうなことだろう。

あの光の、なんてあたたかそうなことだろう。

手に持っている蓮花の、なんて美しいことだろう。

「私も、この光の中に立つ」

宝塚と出会い、不純な思いがありながらも入団を目指すことを決意したまりちゃんでしたが、意識が変わったのは明らかでした。

■中三ズ

我ながら面白いなと思うのは、そこで新劇の女優さんを目指さなかったところ。

歴代の宝塚スターの皆様が出演されていたこともあると思うのですが「宝塚に行けば、沢山の可能性が広がるんだ!!!」と勝手に思った訳です。

本当に単純脳細胞です。

実際、宝塚を退団してから「潰しが効く」人間になるのは並大抵のことでないと実感する訳で、私も絶賛もがき苦しんでいる最中なのですが。

ただ、もしかしたらこの頃から「自分の人生にとって、宝塚は通過点である」という予感めいたなものがあったのかもしれません。

「グリークスショック」を受けてからというもの、真面目にバレエにも通う様になりました。

日本舞踊の発表会にも挑戦したり、ジャズダンスも習い始めます。

中学三年生の頃には、だいぶバレエスタジオの皆様とも打ち解ける様になりました。

元月組の夏鳳しおりさんは、実はスタジオの先輩。

ただ、年は同い年でしたので、恩師の朝比奈先生が「中三ズ」と命名して下さり、可愛がって下さいました。

これは嬉しかったです。

夏鳳さんは小さい頃からバレエも習っていて、当時からとてもお上手でした。

バイオリンも得意で「絶対音感」の持ち主。

私なんて到底敵いっこなかったのです。

その夏鳳さんと、「中三ズ」として「ニコイチ」で扱って頂けるなんて笑!

その年の発表会では夏鳳さんが歌うアリエルの「パートオブユアワールド」に合わせて、私が踊らせて頂きました。

自分の中ではかなりエポックメイキングな出来事でした。

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ちなみに、同じ年に「長唄 島の千歳」という踊りも踊らせて頂きました。

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…同一人物に見えないのは私だけでしょうか笑。

さてさて、今回は「グリークス」について熱く語る回となりました。

次回は、完全に打ちのめされた、「初めての挫折」とも言えるエピソードについて触れたいと思います!

ということで、本日はこれ切り…。
是非、次回も逢いにいらしてください♪

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