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プチネトウヨと左翼ババアの結婚 #21

もう今日も頭回らず、昨日の続きのようなコグマのじいさんの話題。

コグマのじいさんと私は、結婚当初、どう考えても、政治思想や思考の方向性は真逆だった。コグマは経済学部出身で数字とゲームは大好きだが、あまり勉強せずギリギリ卒業し(パチンコと居酒屋のバイトの日々)、私が専攻していた社会学なんてものに触れたことは一度もなかった。私は社会学というマイナーなものを大学と大学院で専攻しており、”社会の常識を疑う”みたいなことをずっとやってきていた。社会の弱者に目を向けるような政党を大事にしたいと思っており、某メインストリーム政党に票を入れたことは一度もない。コグマは選挙権は必ず行使したが、名ばかりの”愛国”みたいなものに弱く、私だったら絶対票入れないよ!という人にも「言葉が一番刺さりました」とかいって私を苛立たせた。また、2チャンネルとかネットギークをかなりの頻度で閲覧し、ネトウヨの差別と偏見に満ちた考えに日常的に触れていた。

ただ、コグマのいいところは、ジェンダースタディーズとか触れたり聞いたことはなくとも、私に家事を押し付けるとか、”嫁”と呼んで3歩後ろで従わせたり、価値観を押し付ける、みたいなことは全くしなかったところである。自由を尊重できる対等な関係という、私にとって一番重要なところでお互いの感覚が一致したので、全く不自由なく生活をともにできた。

ロンドンに来て、大学院で社会政策を学んだり、外から見た日本を学ぶような勉強会の幹事をやるようになり、コグマは私を「左翼ババア」とたまに呼ぶようになったが、特に干渉したりすることもなく、「妻は何か忙しそうです。また左翼の活動ですか」(別に左翼ではないのに)と言って、ゲームに興じていた。

そんなコグマにパラダイムシフト的な事件が起きたのは、アウシュビッツ博物館のツアーに参加した時だった。(詳しくは過去のブログに)。公式ガイドの中谷氏の白熱した素晴らしいガイドは、ホロコーストの歴史のみならず、コグマに私がしていること(難民チャリティにいたり、勉強会を開いていること)の意味をも分からせたらしい。「妻がやっていることがようやく少しわかった気がします。僕も考えを改めないといけないです」と呟いて、私の胸をつまらせた。

その後、私は自分がやっている学習会にコグマを誘ってみた。それまでは呼んでも来なかったし、来ないだろうと思って誘ってもみなかった。でも、何気なくコグマを誘ったら「暇だったら行きます」と言って、こそこそ隠れるように会場に現れた(パーカーのフードをかぶって!)。その日は、森友問題をスクープした元NHKディレクターの相澤さんが、日本のメディアの問題を話しに、わざわざロンドンまで来て講演された回だったが、コグマは汚い字で一生懸命メモをとって話を聞いていた。講演後、いつの間にかしれっと帰宅していたが、次の日に「非常に面白かったです。放送法とか記者クラブの問題とか知りませんでした。勉強になりました」と私に話し、アンケートも汚い字できちんと書いて提出していた。

その次の、弁護士さんをスピーカーに呼んで、憲法改正について学んだ会も、しれっと会場に現れ、また例の汚い字でメモをかきかきし、講師の方にプレゼントを買うカンパのお金も「10ポンド入れました」と私に話した(私が幹事として労働しているので、同一家計からお金出す必要は全くないと思うが・・)

イスラエルでパレスチナに行きたいという私の願いもすんなり受け入れられ、コグマと二人で自分たちの無知さを痛感した。(もしよかったら過去ブログ・・)

先日、昼ごはんを食べながら、BBCでPrime Minister's Question Timeという、毎週水曜日に国会で開かれる、議員が首相に質問するセッションの生中継を見ていたのだが、コグマがぼそっと「なんでこういう仕組みが日本にないんですかね」と呟いた。日本の政治をそれまでクリティカルに見たことがなかったコグマが、まるで当然かのようにこんなことを言っている!と、海外生活がコグマに大変よい影響を与えているのを実感したのだった。



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