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【読書】『田園発港行き自転車』宮本輝著で出会ったもの

長かったゴールデンウィークが明けて、この本のことをようやく書けることが今の私の喜びです。先日記事にした積読本からまず抜け出したのがこの上下巻でした。

元々速読派でしたが、もっとスピードを落として丁寧に読みたいと考えてもいたので、今回少しずつ読めたのはよかったのかもしれません。

この物語全体のことは興味を持った方に読んでいただくことにして、今回はピンポイントで私の印象に残ったことを書いてみたいと思います。

1番は富山です。この本を読んで富山に行ってみたいと思わなかった人は富山の人ぐらいではないかと思うほど魅力的に書かれています。お話に出てくる自転車のルートの通りロケ地巡りのように走った方もあるようです。京都の花街と並んで富山の描写が多いお話になっています。

2番目は下巻44ページのセリフです。

もう済んだことだよ。若いころには、いろんな失敗をするもんだよ。でも、そのことで、いつまでも自分を責めないことだな。(中略)もう終わったんだ。『胸を張れ。前を向け』だよ。宇宙は途轍もなくでかいんだぞ

若くなくてもいろんな失敗しますから、とても勇気の出る言葉でした。グランドキャニオンもでかいけど宇宙はもっとでかいですもんね。胸を張れ、前を向け!いいですねえ。

3番目はお料理のレシピです。宮本輝さんの小説にはおいしそうなお料理や薫り高い珈琲がよく出てきます。一例としてシーザーサラダを取り上げてみます。

同じく下巻の83ページに麻裕という若い女性が考えたとされるレシピがあります。オリーブ油、ウスターソース、すりつぶしたアンチョビ、マスタードと黒胡椒を混ぜ合わせ、にんにくをこすりつけたボウルに卵黄とパルメザンチーズと混ぜます。それにロメインレタスの葉を三枚加えます。パルメザンチーズは市販のものではなく、塊をチーズおろし器で粗目にすりおろし、和えた後にも多すぎるかというほどドバっとかけると書かれています。

いかがでしょうか。食いしん坊の私はさっそく作りたくなります。

4番目の出会いは『赤毛のアン』シリーズです。有名なアンの幼少期が書かれている一巻めは子どもたちとも繰り返し読みましたが、その先の青春やその後の本をとても興味深く引用されていたので今まで読まずにもったいないことをしたと思ったのでした。またまた積読本を獲得したような気がします。

読み進むうちにラインで読書友とこの本の話になり、彼女はこの本でゴッホの「星月夜」に出会って原田マハさんの本を読むに至ったと聞きました。人それぞれの出会いがありますね。一冊の本からどこまでも広がっていく楽しさを知りました。

すっかり宮本輝さんの世界に引き込まれた私はほかにも積読本があるにもかかわらず「流転の海シリーズ」を4冊大人買いして読み始めました。宮本輝さんの自伝的大河小説9冊セット、尽きない楽しみをありがとう、という思いです。

そして読書好きな皆様と本の話をを共有できる幸せを感じています。

では、今日も良い一日をお過ごしください。

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