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地球の99%が野生動物だったのに逆転した理由

前回に引き続きNetflixのドキュメンタリー『Cowspiracy サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』のご紹介をさせていただきます。

畜産業が使用する大量の水、排出される温室効果ガスについてお話させていただきました。
これだけ問題がハッキリ浮かび上がっているのに世界規模の環境団体が目を向けていないのはなぜなのか。キップは団体に大量のメールを送り電話を掛けたが誰も話をしたがりませんでした。

しかしその点に注目している作家や活動家とはコンタクトが取れ話を聞きに行くことに。活動家たちはこう言います。

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環境研究者 リチャード・オッペンレンダー博士
「今後一切化学燃料を使わなくても温室効果ガスの排出量は増加して2030年には限界値を超えるはず。他の要素を考慮せずとも畜産だけでそれだけ上昇する」

カリフォルニア大学 国際環境衛生学教授 K・Rスミス博士
「メタンの排出量を減らせばその影響は数十年に出る。二酸化炭素の場合は排出量を減らしても変化が起きるまで100年はかかる」

モロイ大学 サステイナビリティ研究所 デモステネス・マラトス
「森林伐採・土地利用・水不足など環境災害を起こした張本人たちは知らん顔だ」

環境作家・論理作家ウィル・タトル博士
1万年前の99%は野生動物で残りの1%が人類だった。それがわずか1万年で逆転した。人類とその所有物として存在する動物が生物量の98%を占める。野生動物はわずか2%になった。人間は野生動物から地球を完全に奪い取り家畜を育てるために使っている。その状況は海のほうがひどい」

彼らが言うにはアマゾンの熱帯雨林が消滅した理由の91%は家畜の飼育だと分かっているそう。

環境作家・食作家のマイケル・ポーランは、環境団体が家畜産業について触れないのは多くが会員制の団体だからだと言います。会員数を増やしたいので大勢が共有する習慣に反する主張をすると資金集めに影響が出てしまうと。大規模な団体ほど会員に多くは求めず現状を維持したままで自転車通勤やリサイクルを勧めるだけです。

2048年には海から魚が消える可能性も

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アメリカでは家畜が毎秒53トン排泄をしています。そして陸で運営される畜産業は世界中の海で500箇所以上の酸欠海域を生み出しています。糞が土から川へ、そして海へと流れ25万平方キロの海域で生物が死滅しているのです。

国連は世界の漁場の4分の3は乱獲による影響を受けていると言います。シー・シェパード環境保護団体のリサ・アガビアンはこのままでは2048年には海から魚が消えると言います。昨年人間が海から引き上げた動物は280億匹。動物は繁殖が追いつかずにどんどん数は減少していきます。

1キロの魚を釣るために捕獲される5キロの不要な動物

漁業では9000トンの需要を満たすために大型の網が使われ、1キロの魚を釣るごとにイルカやクジラ、ウミガメにサメなど5キロの不要な動物も捕っています。サバンナでガゼルを捕るついでにライオンや象が捕獲されているようなものです。漁業によりサメは毎年4000~5000万匹殺されています。

どんな漁業でも段階的に種の減少に繋がります。ある魚の数が減れば他の魚を捕って数を減らし、乱獲の連鎖が起きます。魚の種が絶滅するだけでなく次の生態系にまで影響を及ぼし生態系が壊れていきます。最終的に海に住む動物が姿を消すことになります。

そして海と同様の速度で生態系が壊されているのが熱帯雨林です。熱帯雨林は二酸化炭素を吸い酸素を出すので地球の肺とも言えます。その肺が家畜の放牧とその餌を育てるためにアメフト場ほどの広さが毎秒失われています。この影響で毎日100に及ぶ植物や動物、昆虫の種が絶滅しています。

畜産業を批判して殺害された活動家は1100人以上

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熱帯雨林保護団体のレインフォレストでは、パーム油の生産のためにインドネシアで10万平方キロもの森林が伐採されていることについて批判しています。しかし家畜とその栽培では今日まで55万平方キロの熱帯雨林が失われています。

ではなぜ誰もそのことについて言及しないのでしょうか?
放牧が森林を破壊すると主張したホセ・カルロスや修道女だったドロシー・スタングは殺害されました。ブラジルで過去20年で殺害された活動家は1100人以上にも及びます。

草だけで牛を育てる農場もありますがそれはサステイナブルでしょうか?
計算すると、20平方キロの農場で年間生産数が36トン。アメリカ人の年間消費量は94キロなので農場でまかなえるのはわずか382人です。1人あたり0.052平方キロで人工は3億1400万人だから約1500平方キロの牧草地が必要になります。
しかしアメリカ本土の面積は750平方キロ程度しかありません。既に本土の半分は畜産に使われているので必要な牛を草で育てるには本土だけでは足りずにカナダや中南米から南米まで使うことになります。しかもこれは牛に限った話です。

草で牛を育てた場合食肉処理できるまで23ヶ月かかるが、飼料を使えば15ヶ月で済みます。つまり8ヶ月分の水などが余分に必要で排泄物も多くなりガスの排出量も大幅に増えます。サステナブルどころか大量生産の農場より環境に悪いのです。

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ではオーガニックの農場はどうでしょうか?
ビバルブ・オーガニック社の農場では牛は1日平均60〜70キロの餌を食べ、水を150リットル飲みます。約250頭の乳牛用の飼料は1週間で20トンほど必要になります。
牛にはまず乳が出るように子供を産ませ、子供は母親と2日ほど過ごしたら一頭ずつ小屋がある施設飼育に移動させます。酪農ではメスしか必要ないのでオスは食肉用に育てる施設へ売られます。半分は農場へ置いておき”草で育てた”として売ります。乳牛もいずれ衰えるので他の酪農家へ売るか食肉農家に売るか判断が必要になります。
結局オーガニックの農場と言っても1リットルの牛乳のために1000リットルの水を使っているのならサステイナブルなわけがありません。

陸の生物だけではなく海までもが人間の手により生態系が変化していることが分かりました。次回でこの『Cowspiracy サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』については最終回になります。これから私達はどのように行動すれば地球を守ることができるのかお話していきたいと思います。




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