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【エッセイ】犬を飼いたい

子供のとき犬を飼いたくて仕方がなかったのだが、ペットOKの家に住んでいるのに、いろんな言い訳をされて飼わせてもらえなかった。
なぜ犬を飼いたかったのかと言うと、同じクラスの大成くんが大きな犬を飼っていて、その散歩コースが私の家の近くだったので、よく見かけていたのだ。
その光景を見ながら、「私もあんな風に颯爽と犬の散歩ができたら、どれだけかっこいいんだろう…。」と、妄想をふくらませていた。
その妄想を現実にしたくて、得意の泣き落とし作戦を何度も実行したが一向に叶う気配はなく、諦めかけていたところ、近所に『わんにゃんワールド』なる施設が爆誕したのだ。

確かその施設には犬猫が500匹ずつくらいいた。
立派なお土産さんもあるし、ペットショップもあるし、すごくクオリティの高いドッグショーもあるし、猫の家と犬の家がそれぞれ10軒ずつくらいあって、好きに触れ合えるのだ。
それはまさに、私にとって夢のような空間だった。

中でも私が1番お気に入りだったのは、犬のお散歩コーナーだ。
なんとここでは、好きな犬を自分で選んで、その犬と散歩することができるのだ。
散歩は10分で500円となかなかお高めだが、”犬を連れて颯爽と歩きたい”というのが私の夢だったので、来る度に1時間近く散歩した。

私は毎週のように家族の誰かを道連れにしてわんにゃんワールドを訪れ、時間いっぱいに遊び、帰る時にはいつもその日仲良くなったわんにゃんたちに後ろ髪を引かれて泣きそうな気持ちになった。
そんな私を見かねてか、小動物であればペットを飼っていいという話が浮上した。
さっそく私たち三姉妹は、そろって近くのペットショップに行った。

ここで少しおさらいしよう。
みなさん、覚えているだろうか。次女のななを。
そう、私のエッセイ”白桃”に登場した、超危険人物である。
ななはヒステリックで、些細なことで発狂し、噛み付き、髪の毛を引っ張る。
そんなななは、鳥が大の苦手だ。
鳥を見ただけで、その場がどんな場所であっても発狂するのだ。
本題から逸れてしまうが、ここで1つ、ななの異常な鳥へのリアクションをご紹介しよう。
これは去年の正月のことである。

あやと私は頻繁に会っているし連絡も取り合っているのだが、ななはノリが悪く、正月しか顔を見せないし連絡すら取れない。
そのためこの日は三姉妹が1年ぶりに集合した。
私たちは実家の最寄り駅で待ち合わせし、久しぶりの再開を果たしたのだが、喜びもつかの間、ななが”鳩”を発見してしまった。


なな「ギャアァァァァ━━━━鳩がいっぱいいる!.....∑ヾ(;゚□゚)ノギャアアーー!!なんであの人、鳩にエサやってんの!ちょームカつくんだけど!!!」


ななは会って早々大パニックを起こした。
私は天気の良い平和な元旦の昼下がり、軽い気持ちでただ鳩にエサをあげていただけのおばさんに同情しながらも、
「”鳩”なんてあまりにもポピュラーな鳥にでもここまでリアクションするのか…。」
と、内心驚いていた。
隣を見るとあやも私と同じような表情を浮かべていた。
しかしなながこのような発作を起こした場合、さっと距離を置き、何も言わないというのが正解なのである。
なな素人は、だいたい「え…ちょっとやめなよ…!」なんて言いがちだ。
しかしそれをやってしまったらTheEND。噛み付かれ、髪を引っ張られ、耳元で発狂されるのがオチだ。
ちなみに私とあやはこのときの異様な光景をピジョン(鳩)パフォーマンス。略してPPと呼んでいる。
この記事がななに見つかれば、きっと私の髪の毛はすべてむしり取られ、身体中が噛み跡だらけになることだろう…。

話を戻そう。
私たち三姉妹は、家の近くのペットショップに到着した。
目的の場所はハムスターコーナーだ。
しかし、だいたいどこのペットショップでも、小動物というくくりなのか、ハムスターコーナーの近くに鳥コーナーがある。
正直言って私も鳥が苦手なのだが、ななが騒ぐ方が困る。
私はなるべくななが騒がないように配慮し、先に鳥コーナーの場所を把握してななをエスコートした。
そして3人でどのハムちゃんがいいか吟味した。
2匹飼おうという話になっていたので、相性が良さそうなオスとメスのジャンガリアンハムスターを選んだ。
オス(くう)はのんびりした性格の子、メス(ちゃーちゃん)は、すばしっこそうな性格の子だ。
そして他にも必要なものをいろいろ買い揃えた。

ハムスターは相性が悪ければ殺し合うくらいの喧嘩をするので、念のため小屋を2つ用意し、試しに2匹を同じ小屋に入れてみた。
やはり正反対の性格を選んだのが正解だったのか、2匹は喧嘩することなく、いつもくっついて寝るくらい仲良しになった。
私たちは、学校が終わったらすぐにくうとちゃーちゃんの小屋に駆けつけるほど可愛がった。
くうとちゃーちゃんは日に日に大人になっていった(生後1ヶ月くらいのときに買った)。
すると、今まで目立たなかったくうの金玉が、みるみる大きくなっていく。
最終的には身体の3分の1くらい金玉なんじゃないかと思うくらい大きくなった。
そしてその金玉は、見事なハート型(逆さま)でかわいいピンク色をしていた。

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お気づきかもしれないが、私たち三姉妹は変わり者だ。
さっきななのクレイジーエピソードを紹介したが、あやはクレイジーというか、かなりキャラが濃く、持て余すくらいだ。
そんなあやは、くうやちゃーちゃんをキャラクターにした絵本をどんどん作成していった。
絵本だけではなく、”今日のちゃーちゃん”や”今日のくう”などいろんな物語を即興で作成し、夜ご飯の時にいつも披露していた。
そして目立ちたがり屋のななは、「ちがうよ、ちがうよ!ちゃーちゃんはね!」と積極的に参加し、夕飯時にはいつも箸よりもお喋りのほうが進んでしまい怒られるというのが毎晩のお決まりだった。
ついには歌までも作曲された。
その歌詞の一部がこちらである。

♪♪♪

ぼ〜くのきんちゃん(金玉)ハート型
ぼ〜くのきんちゃんハート型
さかさまにすればちゃんとしたハート
ちゃーちゃんに突っつかれてきゃーきゃーきゃー

♪♪♪

メロディをつけてお届けできないのが実に残念である。


くうとちゃーちゃんはオスとメスなので、当然ちゃーちゃんは何回も妊娠し、うちにハムスターがどんどん増えていった。
最初の出産では4匹生まれたのだが、1匹は目を離した隙にちゃーちゃんが食べてしまい、もう1匹は死んでしまい、2匹だけ残った。
名前は、あやとななの名前の頭文字をとって、『あんあん』と『なんなん』になった。
私はいつもあやとななの劇場を見ていただけだったので、優先的に2人の名前がつけられた。
そして子供ながらにも何となく、『まんまん』(私の名前の頭文字)はマズイような気がしていた。

ハムスターはどんどん増えていって、最終的には44匹にまでなってしまった。
ここまでくると名前のネタもなくなっていき、43匹目と44匹目のハムスターの名前は『ぼく』と『わたし』だった。
そしてさすがにこれ以上増やすわけにはいかないということになり、ハムスターの何匹かはペットショップに売られたのであった。

私の”犬を飼いたい欲”は、ハムスターを飼ったことにより薄れていたが、あることをきっかけに再燃した。

私はその日、学校から帰り、いつものようにハムスターと遊ぼうと小屋の中にいるハムスターに手を伸ばした。
すると、あろうことかジャンガリアンハムスターの背中の模様に沿って、ハムスターのコロコロした小さいうんこが点線のように連なっていたのである。
ハムスターは背中に自分のうんこが乗っていることにも気づかずに呑気にブロッコリーを食べていた。
私はそのあまりの間抜けさに、「あぁ、やっぱり犬がいい……。」としみじみ思ったのであった。
こんなことをする人物は1人しかいない。
そう、犯人はあやである。

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