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【町内会 顛末記】町内会を殲滅し廃墟の中から真実の自治組織の出現を待とう 7

 いよいよ、佳境。

 コロナ禍のため新年度にまたいでやっと開いた町内会総会。当日の参加者は17 名、委任欠席もおなじ17名だった。「町内会の存廃を決める大事な総会なので極力参加して頂きたい」と謳っていたにも係わらず半数の出席のみというところが町内会の現状を表わしているように思う。

 上記34名以外に、町内に二三ある集合住宅(ハイツ)で町内会費は払ってくれるがもともと活動には参加していない人、また居住していない空き家や店舗があるために会費を払ってくれている人などが数名いる。前に「仕事が忙しいから」云々の理由で役員辞退をわが家に言 いに来たW氏息子は「委任して欠席」欄には丸をつけず枠外に自筆で「欠席」と書いていた。「役員が決まらなくても放っておいたらいいんだ」と言ってわたしと言い合いになった隣家のOさんは(コロナ禍で中止になった)前回は出席回答だったが今回は「委任欠席」であった。

 少々長いわたしの前口上に続いて会計のAさんから会計報告があり、ついで配布した町内会の「あるとき」と「ないとき」資料の内容を説明、それから討議となったが、そのほとんどは町内会が廃止になった場合の内容確認(ゴミ出しなど)に類するものであった。

 代々この町内に住んでいるという50~60代の男性から、「本来であればじぶんたちのような者がもっと積極的に参加しなければいけないのだろうと申し訳なく思っているが、やはり現状の形での役員負担は難しい。残念だけれど、廃止もやむを得ないように思う」と意見があった。

 三軒長屋のMさんは、町内会を廃止した後の体制について「これじゃ、町内のお年寄りを守っていけない」と言って、しばらくわたしと丁々発止のやりとりがつづいた。気持ちはおなじだけれど役員をやってくれる者がいないのだから仕方がない。「じゃ、Mさん。そこまで言うなら自治会長、やってくださいよ」 わたしの投げた言葉に当のMさんは「わしがそんなこと、できるわけがない!」 みなが笑って、それで終わりだった。

 会計のAさんの高校の先生をされているご主人から「何とか、町内会を残せないものか。廃止は残念だ」という意見もあったけれど、存続の意見はそのAさんご主人と三軒長屋のMさんくらいで、おおむね「廃止もやむを得ない」という空気が大勢だった。わたしとしても、もう少し町内会廃止に対する反対意見や不安が出るかと予想していたのだが、意外なほど少なかった。

 最後に、わが家が自治会長を引き受ける際に「相談役」として見守ってもらい、その後三町から選出される民生委員をお願いした向かいのNさんからは「民生委員は町内会の推薦を受けて選出されている。その町内会がなくなったら推薦の根拠がなくなるのではないか?」との質問が出た。

 民生委員の選出については、すでに市役所の窓口にて「町内のエリアから選んでくれたらいいので、町内会は前提でない」との説明を受けていたので、その旨を再度説明したが、Nさんとしてはあるいはじぶんだけ梯子を外された気持ちもあったかも知れない。やりとりのなかでわたしが、町内会という組織について「さまざまな行政の使い走り的な向きもある」云々の表現を使った際に「なら、わたしも使い走りですか!」と気色ばむ場面もあった。「いやいや、わたしは民生委員のことを言っているんじゃなくて町内会組織のことを言っただけです。町内会組織が行政の体の良い使い走りになっているというのは、わたしの二年間の自治会長活動を通じて身に沁みて感じたことで、それは撤回しません」とわたしも結構、依怙地であった。

 夜7時から始まった総会も一時間半が経過した。「今後のことも決めなくてはならないから」と採決をとることにした。

 結果は賛成16名。反対は三軒長屋のMさん一人であった。半数が委任欠席であったものの、出席者の圧倒的多数の賛成で長き歴史を持つ町内会の廃止が決定された。徳川300年に終止符を打った慶喜の気分、だろうか。いや、ちょっと違うかも知れない。

 今後、移行する体制については、現行の班のかたちをそのまま残して、1年毎に平等で分担してもらう班長を軸とするゆるやかなコミュニティとした。平等に分担してもらうために班長の仕事は、広報誌やゴミ袋の班内の配布、粗大ゴミの掃除当番、お地蔵さんの供花当番、地蔵盆のみに限定した。

 お金のやり取りを減らすために、会費は徴収せず、廃品回収の業者からの収入は振込料を差し引いた額を直接口座へ振り込んでもらうことにした(従来は自治会長宅へ持参)。町内の外灯代とその廃品回収の利益でだいたいトントンなので、あとはお地蔵さんの供花代なら町内会の繰越金で優に30年分くらいは残っている。

 旧町内会の口座を管理する者がどうしても必要なので、各班長から一人、会計役を選んでもらうこととし、その人が倉庫や掲示板の鍵も管理することとした。新設した掲示板は今後、行政や交番、社寺からはポスター等掲示物の類が何も届かないので、特定の宗教や政党活動以外であれば自由に利用してもらうことにした。また将来的に町内のたとえば消火器が古くなってきたりしたら班長を軸にみなで相談して各戸で分担して交換するなどを決めてもらう。(その他、詳細は後掲のコミュニティ・ルールを参照されたし)

 その後、町内会の解散を伝える最後の回覧を各戸に回し、あらためて新しいコミュニティ体制への参加・不参加の提出を求めた。不参加はわが家の玄関で言い合いとなったW氏息子、高齢化で家を継ぐ娘夫婦が不参加を決めたKさん、そして三軒長屋のMさんだけであった。Mさんは班長の仕事ができないのが理由だったらしい。もう少し不参加が多いかと思っていたが、案外とわずかであった。

 ただしもう一軒、30年前の土地測量に端を発する隣同士のもめごとで「こいつが残るんならうちは抜ける」云々で夜中に旧会計のAさんも交えて調停騒ぎなどあり、不本意ながらせっかく参加を表明していたSさんが不参加になったことも記しておく。

 新しいコミュニティ体制でのルールや、使用書式、最低限のマニュアルなどの作成を経て、最後にもういちど旧役員と新班長による最後の役員会での最終調整や引継ぎを終えたのが7月上旬。後日につれあいが役所に町内会廃止の届け出をして、正式に町内会の解散は決定された。

〇〇町コミュニティのルール
2020年7月8日                


◇ 「○○町自治会」の廃止に伴い、班を単位としたゆるやかなコミュニティへ移行する。

◇ 町内を四つの班に分け、各班は班長1名を選出し、その中から会計1名を選出する。
任期は共に1年で、班長は班内で順番に回す(事情のある方については班の総意の上、免除する)。
会計は1班から順番に回す。

◇ 班長の役割は基本、以下とする。
・ 広報誌・ゴミ袋の配布(クリーン・キャンペーン用含む)。
・ 粗大ゴミの当番(6月、9月、2月) ※2班づつ2名が順番に出る。班長が出られない場合は班より代理を立てる。
・ お地蔵さんへの供花(月1回の交代制)
・ 地蔵盆(8月23日・24日)

◇ 会計の仕事は基本、以下とする
・ 通帳の管理
 収 入
  廃品回収・・・年度末に1年分を振込み
  お地蔵さん賽銭・・・年度末に計上

 支 出
  外灯電気代・・・毎月、通帳より引き落とし
  お地蔵さん賽銭・・・年度末に計上 お地蔵さん花代 年度始めに1年分を現金支払い
  雑費・・・必要に応じて適時

・ 出納帳の記載(手書きで構わない。出納帳は永年保管。領収書は別途3年間保管)
・ 通帳用の印鑑、○○邸倉庫の鍵、掲示板の鍵を管理する。

◇ 地蔵盆・・お地蔵さんの飾り付けと供花だけ、23日6時半設置、24日16時片づけ。

◇ 毎年、年度末(3月)に新旧の班長が集まり、会計と共に引継ぎを行うこと。
又会計は粗大ゴミの連絡先として3町(○○町・○○町・○○町)代表者へ連絡をすること。

◇ 会費は徴収しない。今後、町内で物品購入等の必要が生じた場合は旧町内会繰越金から出すか、各戸で平等に分担する。(消火器の買い替え、外灯の管球交換など)

◇ 今後、○○町単位での対応の必要が生じた場合は、班長の合議で都度対応する。
※民生委員(3年に一度、○○町・○○町・○○町の3町から適任者を選出)など。

◇ 掲示板は残し、臨機応変に活用したい(宗教・政治活動の掲示物は原則除く)。

◇ お悔み等は該当の班の班長が対応し、各班長へ連絡をする。

◇ 災害時には班単位で安否確認等の声がけを行い、状況に応じて町内で連携・助け合いを行う。

次回は(たぶん)最終回。


以下の内容で、連載中です。
第一部 【町内会 顛末記】自治会長というのをやってみた
第二部 【町内会 顛末記】町内会を殲滅し廃墟の中から真実の自治組織の出現を待とう
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