第三の叫び-投げ捨てられた通知表-

僕には妹がいる。

それほど歳は離れていないが、僕より勉強ができる。

何よりものわかりがいい。

今も忘れぬ。小学校5年生の一学期の終業式。
帰ったその瞬間から、夏休み。

小学生にとっての夏休みは、果てしなく長い時間のように思え、
浮足立つクラスの中で、僕は毎年憂鬱な気持ちを持っていた。

家に帰ったら・・・

「おお、○○、通知表を見せてみい」

待ち構えていたように、父は僕の顔を見るなり言った。

「うん・・・」

恐る恐る、父に通知表を渡す。

「えーっと」

こういうときの父の気持ちがわからない。今もわからない。まったく無表情。
見開きページの中で、左上から主要科目の判定がある。最後のページに担当の先生からコメントが載っていた記憶があるが。

一通り僕の通知表を眺め、

「ふーん。」

「おお、よく頑張ったな」とか、「あかんな。もうちょっと頑張らないと」とか、
何にも感想を言いやしない。

そして。

「こんなん、どうでもええねん」

そう言った父は、汚いものでも見るようにして、僕の通知表を横に投げ捨てたのだ。

「つぎ、つぎ」

打って変わって少年のように目をらんらんと輝かせている父。

その「つぎ」は、妹の通知表の番である。


ぜひサポートのほど、よろしくお願いします!頂いたサポートは、今後の執筆活動の為の原資に使わせていただきます。