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発達凸凹の子が思春期以降にもしっかりと発達、成長することがイメージできない皆さんへ②<自閉症のA君>

昨日から連続でちょっと記事を書いています。
タイトルにあるように思春期以降、青年期に発達障害、発達凸凹の子たちがどんな風に発達し、成長していくのか?
そして、その発達援助をするためにどのように環境整備やどのような学びの機会を提供しているか?は引き続きお話ししていきたいと思います。

昨日、子どもたちがどんな風に育っていくか?
その過程でどのような教育環境や社会環境の中に身を置くか?
改めて考えてくださいとお願いしました。
そして、発達凸凹の子たちが18歳以降に受けられる支援がキャリアサポートや生活介護以外ほとんどないことに違和感を感じているとも書きました。
本来、子どもが育って大人になっていく過程で様々なサポートや経験、学びができる環境は一生涯続いていくのが当たり前のはずなのに・・・

さて、子どもが思春期、青年期に到達するまでにどれくらいの認知能力や運動能力、コミュニケーションスキル、ライフスキル(生活スキル)が獲得できたでしょうか?

生きづらさや学びつらさといった障害の状態はどれくらい顕在して残っているでしょうか?

どのような特徴が強く困りとして残っているでしょう?

個性といえる性格はどのような性格の子に育ったでしょうか?

など、様々な側面から発達到達度を見てみます。

そして、その後も継続して行っていくのが良いこと、
青年期だからこそ新たに加えて 獲得していくと良いスキル、
機能が何なのか?を再考します。
私は、青年期になった子たちの基準を同年齢の子たちにおいて発達凸凹の子たちが獲得していくと良いスキルをバランスよく目標にします。

さて、今日はそこで私のところ(以前、NPO法人発達障碍児支援LOF教育センターで事業活動をしていました。今は『MARBLE WORLD』として新たな時代に向けた事業を行っています。)でサポートさせていただいている。あるいはサポートさせていただいていた青年期の子たちの発達や成長の様子をお伝えします。

自閉症のA君は、思春期に入ってから私のところに通い始めました。
まだまだ脳機能の改善を行う必要があったため、個別の療育サポートや学習サポートを定期的に行っていました。
そうこうしているうちにずいぶんと発達が進み、一人で遠くから通えるようになりました。
そのうち、合宿プログラムにも参加するほどにもなりました。

A君は、もともと高機能自閉症児だったので、ある程度の認知能力は兼ね備えていて、その上、多岐にわたる趣味や記憶力の良さが光っていました。
とても素直な性格で「注意されたことはしっかりと守りたい。」と思ってくれるところがあったので、育てがいがありました。
だから、彼の能力をもっと拓いて、社会で生かせるようになってほしいと願い、試行錯誤しながらサポートしました。
厳しく注意することもたまにはありました。
そんな時は、可愛らしくプチパニックになることもありました。

そんな彼の発達を援助していく中で思春期に取り組んでもらったことは
マンツーマンのサポートと並行してのグループワーク。
他の生徒と一緒に様々なことに取り組んでもらいました。
それは、作業的なことではなくて探求学習的なことでした。
定期的な野外活動や娯楽なども取り入れて行いました。
低山登山、スキー、カラオケ、ボーリング、彼の大好きなUSJやレゴランドなども行きました。
当たり前といえば当たり前の同年齢の18歳以上の子たちが楽しんでいるであろう娯楽を楽しむ機会も提供していました。
それは、人生を豊かに生きてほしいと願うから。


「同じようなことやってます!」とおっしゃるところもあるかもしれません。
それが18歳以下の子に限っていたり、障害の有無は関係なく利用できるでしょうか?
そんなところであったらとても嬉しいです。

私たちは20代をも対象にしてその子が獲得していくと良いと思われる育ちのサポートを継続的に、段階的に計画的にサポートを行っています。

青年期の若者たちだけの合宿、小中学生の子どもたちと一緒の時もありましたし、幼児期のお子さんをお持ちの家族の方と一緒の合宿もありました。
森整備のボランティアなんかにも参加してもらって木を切ったり、運んだりしてもらいました。
意外にも 木を切ることは大好きになりました。

そんなことをしていると、
彼らの弱みがあらゆる場面で垣間見ることができていきます。
見えてきた課題に対してのサポートプログラムを創造していきます。

その結果、青年期の若者のために新しく始めたプログラムが「メルカリ」や「ネットショップチャレンジ」でした。
本来ならアルバイトをし始める時期ではあるけれど、それはまだまだハードルが高い。
でも、「お小遣い稼ぎ」も簡単なことでチャレンジしてほしい。
という思いで「メルカリ」をスタートさせました。

同じように取り組んでもその子の発達、成長によって取り組み方や姿勢が全く違ってきました。
自閉症のA君は、とても熱心に取り組みました。
別の大学生はいやいや取り組んでいました。
別の若者は興味を示しませんでした。

熱心に取り組んだA君は 「メルカリ」を通じて様々なことを学んでいきました。
今もどんどん学んでいます。
たとえば配送するときの注意点・・・綺麗に梱包すること。できるだけ安い配送料で送ること。お客さんとのやり取りなど。
いろんな失敗もありましたが、そのたびにお互いに学んでいきました。

自分のいらなくなった趣味のおもちゃや良書の絵本などご家庭の協力も得て「メルカリ」で販売してお小遣いを稼いでいきました。
その稼いだお小遣いで、またほしい商品をメルカリ内で購入しています。
最近は売り手の人と交渉して、安くでほしいものを購入できるようになりました。
売るときにもどんなふうに書いたらお客さんが商品を買ってくれるのか?を考えて文章を書くようになりました。
事前に「この文章はどうでしょうか?」と相談してくるように育ちました。
すごいことです。
この成長は・・・。

そもそも彼には、「お金」を稼ぎたい!
そのお金でほしいものを買いたい!という欲求がありました。
若者の中にはそのような欲求や意欲がそもそもなく、
「働きたい」「お金を稼ぎたい」という欲求がない発達凸凹の子も少なくありませんでした。
生活環境が恵まれ、バイトしなくてもよい学生生活を送っている大学生もいますから、自然にそんな風に大きくなってしまうのかもしれませんね。

でも、自閉症のA君はその欲求をちゃんと持っているのです。
だから、どうしたら商品を買ってもらえるだろう?
どういう風に説明を書いたら、買ってくれるんだろう?
と工夫や努力をしています。
これ、すごくないですか?

ほしいものに関しても しっかり値段交渉を勝手にしていました。
事後報告でした。(笑)

表現がよくない時は、指導しました。
その時も「わかりました。」と言って次回からはその注意された表現を避けるようになりました。
生きた言語表現を学んでいます。

今もオンラインでも言語に関わる学習を継続しています。

私とのLINEでのやり取りもなんの問題もありません。
絵文字やスタンプも上手に使います。
もちろん、ときおり私から注意も受けていますが。

そんなことのやり取りをしながら、どんどんコミュニケーションスキルを上げています。

いろんな大人の人と関わる機会も少なくないので、
いろんな人に声をかけていただき、私同様彼を育ててくださっています。

お金の管理についてはメルカリの中でのひと月の予算を決めてその範囲で買い物をしています。
その予算を超えて買うことはありません。
日常生活の中でもある程度の予算や基準を決めたので
おそらくそれを基準に生活していると思います。
たぶん・・・。(笑)

書ききれないほどのいろんな学びを彼はどんどんしています。
様々な経験をしながら人生を拓いています。
これからも今の延長線上に発達があり、
いつかは自立して、一人暮らしが可能になるくらいの発達、成長を目指して
サポートしていきたいと思っています。
それを可能にするサポートはどんなサポートなのか?を私たちは試行錯誤しています。

それでも、彼らの発達、成長は、発達凸凹がない子と同じような道をたどって発達、成長しています。
ゆっくりだけど、バランス悪いかもしれないけれど。

だからこそ、社会に出てからもなお、学びを継続して成長していかねばならないのではないでしょうか・・・。


まだまだ 書ききれないほどのエピソードがあるけれど、
長文になってしまいましたのでA君のことはこれくらいにしておきます。
もっと青年期の若者たちへのトータルサポートが増えていきますようにと願いつつ。

ご参考までに。



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