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「酔ってないよ」 街灯でくるっとまわるあなたを見て、すっかり夢中になってしまった。 手に届かないと思えば思うほど、わかっていればいるほど、どうしようもなく思いは募るものよね。 このチケット欲しい人、に手を挙げたのが、たまたまあなたと私だったとき、そうか、好きって「ふたりでいたい」と思うのだなとか思ったりした。 朝携帯を見ると、楽しみだね、と夜中に連絡が入っていたのを、私は何度も何度も5文字なのに読み返した。 当たり前だけど、待ち合わせの駅にはものすごく早く着いてしま

    • 距離

      電車の窓越しに、スニーカーがうつる 私のではないけれど アレンジされている靴紐は 1mmでも可愛くなりたかった恋を思い出した 飲み会に来るかもしれないと聞いて 少しでも可愛くなれる服装を考えた あの頃、会える可能性があれば、 その1秒のために君を思い出して私を考えた 電車の窓越しに、パンプスがうつる 自分のために買った私の靴 特徴があるわけでも、 目立って可愛くなれるわけでもなく、 ただ、見合わないかもとか、もう、 そういうのいいかな、と 思ったんだよね 私を考え

      • 明日は

        口内炎を勢いよく噛んで 心が「ぷつり」と折れた こういう日もある、ということはわかっていて それなのにどうして、私はそれを受け入れられずに 誰か、にわかってほしくて 誰か、に話して 誰か、を遠避けるのだろう 大好きな「誰か」を守りたいと 思っているはずなのに こうやって罪悪感に打ちのめされていく 世界は私が思っているより優しい 私は私が思っているより賢くない 賢くなることは難しい 優しくなることも難しい だけど、それでも、優しいひとになりたいと 思ってしまう こ

        • 沈丁花

          「夏が終わるから、今日は休む」 いま私がそう言ったとして、止める人は、 たぶんいない。 同じことを過去の自分が夏の終わりにつぶやくことを考えて、一年ごとに遡る。 やっぱり、止める人はいない。 そもそも一年ごと、の記憶が曖昧だった。 私だけが私のその呟きを許せなかった。 いつも。 休むことは、出来ないことではないのに いつも私が私を苦しめた。 それは高校を卒業して、選択肢の増えた大学でも続いた。 いつも何にも手を抜けなかった。 「わたしにはせめて頑張っていないと価

        5文字

          ふわり、雨

          心が揺れてしまう どうしようもない気持ちになって 冷凍庫からアイスクリームを出した 少し溶けたものが好きだから 手で持っていた 持ちながら頬杖をついたら 香水の匂いがした 涙が出た 夏だ #エッセイ #日記 #小説 #平成最後の夏 #コラム

          ふわり、雨

          心に余裕なんてあるわけがない

          「〇〇に、なれなかったわたし」を、 いまのわたしは結構気に入ってるんだと 思ってた 「ならなかった」のではなく、 「なれなかった」でも、悲劇のヒロイン感もまったく過ぎ去り、そこも認められていたのに。 才能の壁とか、好きとの狭間とか、 そういうものを、突破するひともたくさんいる たくさんたくさんいる そしてそれは努力なしにありえない道 何事もそうですが。 わかってる、納得してると思っていただけだし、 納得してる私を信じていたいのだろう それでいいはずなんだとも思う

          心に余裕なんてあるわけがない

          場所の形

          昔よりも、「悲しい」と思うことが増えたように思う。 自分ではどうにもできないこと、 「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」、 せっかくのきらきらが、「仕事だ…」に消えてしまうこと。 昔よりも、何かを大切だと思う深さが大きくなったからなのかもしれない。 私たちは、いつだって必死に生きていた。 「悲しい」だってたくさん乗り越えてきた、はずだ。 それでも、年を重ねれば重ねるほど、「悲しさ」が身体に響いてしまう。 大人になることは、強くなることで

          場所の形

          エスカレーター

          映画館は、映画を観る場所だと思っていた。 どうしてポップコーンを食べるのだろうと 不思議だった。 昔、一緒に行った人が、映画のときはポップコーンを食べる人だったので、生まれて初めてポップコーンを食べながら映画を観た。 結局余ってしまうのだけど、すごく楽しかった。 映画を観る時間は、誤解を恐れずに言えば、 必要不可欠な「余白」だ。 最高の余白を過ごすために、現実と切り離して、最高の時間を過ごす場所にする。 それはとても幸せなことなのだと知った。 ちょっとお腹が空いて

          エスカレーター

          風の強い雨の日は、 いつもあの道を思い出す。 でも会話、なんだったっけ。 まるごと覚えていたのに、細かいところを忘れてしまった。 だけどめちゃくちゃに楽しかった。 日差しが強い夏の日は、 いつもあの電車を思い出す。 並んで、遅くなってしまったお昼は何を食べようか悩んでいたときだ。 会話は、ほとんどなかったと思う。 こんなに寒い春の雨は、 何を思い出せばいいのだろう。 思い出せば思い出すほど、 寒い雨の日は、いつもひとりだった。 どうしても寂しくなる。 思い出よりも、今

          記憶

          「いつかこの店、楓と行きたい」 叶わなかった。 彼と私は、驚くほどに食の好みが似ていた。 「思ったような味じゃなかったね」 というときの彼の顔はとても正直だった。 何より、私も同じ気持ちであることがほとんどだった。 私たちは、距離が縮まった2日後には、 遠距離になることがわかっていた。 叶わない約束も、ぜったいに叶えようと思っていた。 世界ってそんなに甘くない。 エモーショナルな画だけが残り、 私はひとりになった。 「作れるのはチャーハンくらいだわ。楓に食べさせられ

          記憶

          誰かに似ている。 この話し方、この笑い方、この気の遣い方。 ああ、あの人だ。 本当に似ている。 思い出せたのは、随分あとだった。 なんだかどうしようもなく惹かれていたのに 忘れていたことを思い出した。 人はちゃんと、忘れていけるんだろうか、と 思っていた。 覚えていることがつらすぎた。 思い出すことがつらすぎた。 意外と簡単に忘れられるものだ、なんて 言うつもりはさらさらない。 あっけなく忘れてしまうことが悲しい、とも 私は思わない。 ただ、上書きってされないんだな

          パレット

          夢じゃありませんようにと、願える幸せはどれくらいあるのだろう。 彼女は、実は結構ショートスリーパーだ。 高校生の頃から、たくさん寝てもそんなに寝なくてもあんまり変わらない。 彼女は、持っている時間が楽しかった。 もちろん、つらいこともあったけれど、 それでも、朝が来れば「ああもう起きなきゃ」と朝を憂いて、お昼ご飯を楽しみにして、下校にケラケラ笑って、そんな幸せな学生だった。 彼女は、青が散る、痛みを知った。 なんのために生きているのかわからなくなった。それまで挫折を知ら

          パレット

          朝日

          ごめんね、としか思えない夜がある。 正しさが尖るとき、「ごめんね」は、 誰に向けられるんだろう。 一度でも感じた「ごめんね」を、正当化するつもりはない。ちゃんと、痛みを覚えていることが、「ごめんね」の答えと、わからないけど、思う。 それでも、ごめんねとしか思えない夜はどうしても苦しい。 さらには私が私に「ごめんね」を言った時、 すごく否定された気持ちになるのはどうしてなんだろう。 ごめんね、は、簡単に言う言葉じゃない。 傷は深い。 それでも伝える価値のある言葉なのか

          朝日

          どうしてこんなに悲しい気持ちになるのか。 ささくれを見ると、私はいつも、 自分が許せない。 完璧ではないにも関わらず、完璧でない自分を許すことが苦手だった、完璧に完璧主義の私は、もうどうにもならないくらい心が粉々になるような出来事が続き、やっと「主義」を卒業できたつもりだった。 それでも、こういうときに片鱗が見える。 「ちゃんとしていたい」と思うのに、突然できてしまったささくれは、痛い。 小さいのにとても痛くて、そしてどうしようもなく、心を映すような気がして仕方がないの

          黄色い食卓

          母は料理がうまい。細やかな味である。 祖母の味はおいしい。大味である。 祖父母の家に帰省した小学生の頃、 母がまだ寝ている早朝に起きた夏の日、 祖母が作ってくれる卵とソーセージの入ったおにぎりが大好きだった。 少し余りすぎた海苔が、贅沢だった。 数年前、祖母の家で卵焼きを食べた。 それは母のと同じ味だった。 卵焼きとハンバーグは、本当におうちによって味が違うなと思う。 私はいつからか、卵焼きは甘いかしょっぱいかを、好きな人に聞くようになった。 帰省していた今朝、

          黄色い食卓

          パフェ

          やっぱり、楽しかったなあと思う。 デニーズで4人家族の隣に座る。 おばあちゃんと息子さんは隣同士だ。 私たち家族は好きなものを頼む。 「ご飯少なめで」 「普通にしてパパにちょうだい」 「いいよ」 「私のもあげる」 「いっぱいになっちゃうなあ」 私たち家族はそれぞれ好き勝手に頼み、届いたものを食べ始めた。お父さんのところだけ、小皿がひとつ多い。 隣の家族のところに3つ、大きなパフェが運ばれてくる。 チョコが2つと、桃が1つ。 ファミレスのパフェって幸せ

          パフェ