5文字

「酔ってないよ」

街灯でくるっとまわるあなたを見て、すっかり夢中になってしまった。

手に届かないと思えば思うほど、わかっていればいるほど、どうしようもなく思いは募るものよね。

このチケット欲しい人、に手を挙げたのが、たまたまあなたと私だったとき、そうか、好きって「ふたりでいたい」と思うのだなとか思ったりした。

朝携帯を見ると、楽しみだね、と夜中に連絡が入っていたのを、私は何度も何度も5文字なのに読み返した。

当たり前だけど、待ち合わせの駅にはものすごく早く着いてしまっていた。本屋に行っては、待ち合わせ場所を気にして、を繰り返していたら、あなたは少し早く、待っていた。

好きな人が待っていてくれることほど、尊いことはない。

「おまたせしちゃった」
「今来たところだよ」

チケットの内容が終わったのは、もう随分と夜だった。

「ありがとう」
「こちらこそ」

こんなこと、デートじゃなかったことくらいわかっていた。でも、好きな靴と好きな服を着て、あなたに会えて、よかった。

初めての待ち合わせが、あなたで、よかった。

#ファーストデートの思い出 #コラム #エッセイ

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