風の強い雨の日は、
いつもあの道を思い出す。
でも会話、なんだったっけ。
まるごと覚えていたのに、細かいところを忘れてしまった。
だけどめちゃくちゃに楽しかった。

日差しが強い夏の日は、
いつもあの電車を思い出す。
並んで、遅くなってしまったお昼は何を食べようか悩んでいたときだ。
会話は、ほとんどなかったと思う。

こんなに寒い春の雨は、
何を思い出せばいいのだろう。

思い出せば思い出すほど、
寒い雨の日は、いつもひとりだった。
どうしても寂しくなる。

思い出よりも、今だ。
寂しさだって大切だ。
空白だって必要だ。
それでも、苦しいと思うことは、
許されてほしい。

春の寒い雨がいつか何かを暖めるとき、
私はちゃんと、嵐の雨の道も、夏の電車も、
迷わず答えるのだろうか。

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