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【インタビュー】デジタルマップで場所・時間を超える - ロードスポーツの新しい楽しみ方

「道に恩返ししたい」
道があるから地図がある。道がないと存在し得ない私たちに、何か恩返しする方法はないのか。
そんな想いでMapbox Japanは、東日本大震災の復興支援の自転車イベントである「ツール・ド・東北 2021」を、ゴールドパートナーとして、またソリューション提供を通じて支援します。
先日公開したCEO高田へのインタビュー記事では、Mapbox Japanがツール・ド・東北 2021に協賛するに至った具体的な背景や、支援の内容についてについて探りました。

▼ CEO高田へのインタビュー記事

そこで今回は、Mapbox Japanで新規事業の統括推進をしながら、ツール・ド・東北へのソリューション支援の企画・開発の責任者も務める山崎に、今回開発するWebサービスの面白さや今後の可能性について尋ねてみました。

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山崎 友敬 / Tomotaka Yamazaki
ソニーにてソフトウェア開発エンジニア、プロダクトマネージャーとして携帯情報端末「CLIE」の開発に携わった後、米国オーバーチュアの日本支社やYahoo! Japanにて、検索連動型広告のプロダクト責任者、パブリッシャー売上責任者などを歴任。その後、中国系SNS会社の日本事業責任者、米国マーケティング技術会社Signalの日本および東アジア担当事業責任者を経て、2020年1月よりMapboxにジョイン。「地図」×「広告」領域の新規事業「Mapbox Ads」を統括推進をしている。

遠隔でもライブ感のある応援体験を

──今回、Mapbox Japanとしてツール・ド・東北 2021にソリューション提供をするにあたり、山崎さんはWebサービスの企画・開発の責任者を担当されていますね。まずは、現在企画・開発しているWebサービスの背景や取り組みのテーマなどを教えてください。

はい。今年のツール・ド・東北は新型コロナの影響で参加者が絞られていて、沿道等での応援もかなり限定される予定です。そこでMapboxの3Dマップ上に実際にライダーが走っている様子をリアルタイムに表示して、遠隔からでも一緒にツール・ド・東北を応援できないかといったところが、今回Mapbox Japanとしてソリューション支援を企画し、開発を実行するに至った経緯です。

本当は現地でライブ感を体験し、応援できたらとは思うんですけど、一方で新型コロナ感染も無視できない状況です。そこで、この状況をどうにか解決できないかといった時に、現地に行かなくてもツール・ド・東北をリアルタイムかつライブ感を持って楽しめるような仕組みを実現したいというところが、今回の取り組みのテーマです。

実際に企画・開発しているのは「リアルタイムマップ」、「応援LIVE企画」、「Mapbox号」というものです。

【ツール・ド・東北2021に向けてMapbox Japanが企画・開発するもの】
①リアルタイムマップ
ライダーの位置情報をリアルタイムに可視化し、遠隔地からでも応援の声を届けることができるWebマップ。今回のツール・ド・東北ではおよそ1000名のライダーの位置情報をリアルタイムに同一のマップ上に表示する予定。
②応援LIVE企画
エイドステーション(休憩所)の様子などをライブ映像でお届けする企画。
③Mapbox号
Mapboxが持っている技術をできる限り詰め込んだショーケース的乗り物。当日はMapbox Japanの代表社員がこの専用車で走り、独自にデータを取得する。

──ありがとうございます。今回実装するWebサービスのどういったところが見所ですか?

そうですね。リアルタイムマップでいうと、こういった試み自体がまだあまりないですし、1000人くらいのライダーの方が走っている様子をマップ上で一斉に観れるというところは見所なのかなと。

あとは、その様子をリアリティのある3Dマップ上で観ることで感じるライブ感と、応援する人が自分自身で角度やズームレベルを変えながら観れるというインタラクティブ性の面白さがあるのかなと思います。

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──なるほど。そのライブ感とインタラクティブ性は具体的にどう実現されるのでしょうか?

ライブ感に関しては、我々Mapboxが持っている地図の表現力がちょうど今年の初めにアップデートされて、より高精度な衛星画像データとより美しい3Dの地形データを表示できるようになったこと、それからデータをリアルタイムに表示できることがベースにあります。

平面の地図でピンが動いているというよりは、3Dの地形の上に衛星画像が表示されたマップ上で、蛇行した道や標高差をよりリアルに、つまり二次元ではなく三次元の広がりのなかで実際のライダーの様子がリアルタイムでわかるというのが、遠隔でもライブ感を感じられるポイントかなと思います。

インタラクティブ性についてですが、今回のリアルタイムマップはWebアプリとして公開されるので、応援する人が自分で角度やズームレベルを動かせるという点ですね。テレビ中継や通常のライブ配信だと画面に映ったものを観るしかないんだけど、リアルタイムマップでは自由に操作して観ることができるから、この角度から見たらこんな感じなのかとか、俯瞰でも見れるし、インタラクティブで多角的な楽しみ方ができるかなと。

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▲ リアルタイムマップのベースとなる3Dマップのイメージ。衛星画像データと3D地形データを組み合わせて実際のコースを再現。


リアルとデジタルが融合して生まれる新しい楽しみ方

──なるほど、完成が楽しみです。リアルタイムマップはマラソンやモータースポーツなどにも応用できそうですね。

そうですね。他のロードスポーツでもインタラクティブにかつライブで自由に観れたら面白いと思います。今回実装するWebサービスの機能としては入らないんですけど、出場者が自分のスマホとか車載カメラを使ってマップ上にストリーミング配信するということもできると思っていますが、これができたらさらにインタラクティブにロードスポーツを楽しめますよね。

もちろん現地での応援やテレビ中継に勝てない部分もあるのだけど、それらとは違って選手の様子や風景だとかを自分の観たいように観れるというような、リアルとデジタルが組み合わさって生まれる新しいロードスポーツの楽しみ方のようなものができるかなと。

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──リアルとデジタルが組み合わさって生まれる新しいロードスポーツの楽しみ方ですか。

そうなんです。例えばテニスだと、サーブのインアウト判定に異議を申し立てる「チャレンジ」ってあるじゃないですか。チャレンジをするとハイスピードカメラのデータが3Dイメージの映像に変換されてボールがバウンドしたのはここですっていうのが確認できますよね。ああいうのもすごく良い例だと思っていて。

あとはリアルタイムで映像分析しながら、ある選手だけのシーンを抜き出すみたいなことができるシステムもあります。例えば、リーガ・エスパニョーラの試合があって、そこでメッシだけをフィルターすると全アーカイブの中から、メッシだけが繋がったシーンだけを抜き出した1時間番組を作成するみたいなことが簡単にできちゃう。

そういうのと一緒で、リアルの出来事をそのままデジタルに置き換えてネットで放送するのではなくて、全然違った加工の仕方とかリアルとデジタルが融合したからこその楽しみ方ってまだまだあると思っていて、その中の一つきっかけになれたら嬉しいですね。今回開発したものを元にまた新しいサービスが生まれたらとも思っていて。

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▲ 2017年に開催されたRedbull主催SUPレース向けに開発されたリアルタイムマップ。この時は2Dマップ上に出場者が表示された。


──それこそ今回実装するWebサービスのソースコードはオープンソースとして公開するそうですね。

そうです。位置情報の取得方法のように、一部今回のツール・ド・東北の要件に依存する部分もありますが、位置情報データをリアルタイムでマップに表示するといった部分に関しては、今回の企画を通してオープンソース化していろんな方に利用していただければと思っています。

地図を使ったサービスってまだまだ可能性があると思っています。地図を使ったサービスの開発者自体は増えていると思いますし、一部の優秀なスーパーデベロッパーさんたちは、こんな表現までできるのかっていうくらい最大限Mapboxを活用してくださっている一方で、地図を使った本当に新しいサービスってまだまだ少ないと思ってるんですよね。

プラットフォームを提供するMapboxとしても、もっと多くの人に地図の面白さを知ってもらいたいので、少しでもヒントになるようなものとして今回開発するものをオープンソースでご提供できたらいいなと。それをもとにさらに面白くて素敵なアプリケーションを作っていける、というような循環が生まれたら嬉しいですよね。


デジタルアーカイブ - ロードスポーツから教育へ

──今回のツール・ド・東北 2021への協賛をきっかけに、道に恩返しする同盟「One Road Alliance(ORA)」も立ち上げる予定だとお聞きしております。今後はORAを通じてどのようなものを作っていきたいですか?

ゆくゆくは双方向なロードスポーツの体験・観戦体験を実現したいですよね。このライダーはどんな人なのかといった情報を見れるようにするとか、その人に対して何かしらの応援メッセージを伝えるとかっていう機能をサポートしていきたいです。

もう一つは、自分が実際に走っているシーンをアニメーションで見れるとおもしろいと思ってて。例えば僕がライダーになって参加した時に、写真みたいな断片の記録じゃなくて、自分が走っていた様子を軌跡も含めた再現として観れたり、車載カメラとかで録画したものがマッシュアップされたりすれば、自分で自分を振り返るみたいなことだってできますよね。そういったものがアーカイブとして観れたら面白いかなと。

──面白いですね。例えばそのアーカイブデータを上手く活用すれば、昔の自分と競ったり、未来の誰かが過去のレースを追体験して競走したりできますよね。

まさにそうですね。例えばStravaって、家の近くとかでランニングコースを登録できるじゃないですか。そうすると、そのコースをたまたま走っているランナーと競争することになりますよね。これと一緒で。

あとは自分のベストタイムの時のアニメーションと比べられるので、ベストタイムの時はここ速かったよねとか分かりますよね。そんな風に昔の自分自身との比較もできる。マス向けに共通の映像、共通体験を保存するというよりはパーソナライズドな、時系列も含めたアーカイブの保存って面白いと思っていて。今後はそういった機能もORAを通じてサポートしていきたいですね。

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Mapbox Japanでは現在、道に恩返しする同盟「One Road Alliance(ORA)」を立ち上げています。ORAにおける取り組みにご興味のある企業様は以下のフォームからご応募ください。

▼ One Road Alliance(ORA)への参加ご希望フォーム(所要時間1~2分程度)

また、Mapbox Japanではメンバーを募集中です。本記事でご紹介したような取り組みに参加したい方はぜひ以下からご応募ください。

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