フォローしませんか?
シェア
川崎ゆきお
2022年10月31日 13:08
「ほほう、殺気を感じると」「吉沢氏からです」「見たのか」「感じました」「そのとき、顔を見たか」「はい」「どんな表情だった」「ぐっと私を睨んでいました」「どのように」「え」「だから、目がどうだった、鼻は、口は、眉は」「だから、怒っている時の表情です。露骨ではありませんが」「それをどうして殺気だと分かる」「怨まれていますので」「そうじゃな、吉沢氏を差し置いて、おぬしがお役に
2022年10月30日 13:55
狙っているものがその通りだと、それだけでも満足を得る。これは対象に対する満足ではなく、狙いが当たっていたことによる本人の満足度。 だから対象が優れているわけでも、いいものでなくても、狙いがあるかどうかだ。そのため、狙い通りにいって欲しいという下駄を履かせることになるが。 狙わないで、その対象と接した場合、ただの平凡なものでしかなかったりする。 狙いが外れてくれると困る。本当はスカでも、それ
2022年10月29日 13:10
「物事は相対的に決まる」「そう簡単には決まらないと言うことですね」「違う。相対的にだ」「でも、簡単には決まらないと言うことでしょ」「いや、相対的に決まる」「決まるのですか」「そう、決まる」「そう決まるのですね」「そうだ」「しかし、世の中のこととか、万事において、そう簡単には決まらないでしょ」「まあな」「それよりも相対なんて言葉よく知らないで使ってますし、日頃からも使っていませ
2022年10月28日 14:52
時田は近くにある勤務先へ自転車で行く。 今朝はペダルが軽く、気分がいい。きっと調子が良いのだと思っていたが、風向きが昨日とは違っていた。 急に寒くなる晩秋の入口。気持ちの問題で軽快なのではなく、ペダルにかかる足から来ている。そのためか、気分のいいネタなどなかった。内面からではなく外から来ていることに気付く。 ただ、気分が良い時は向かい風でも鬱陶しい空模様でも、気分の良さは変わらない。だから
2022年10月27日 13:06
「寒くなってきましたねえ」「秋も中頃を超えましたからね」「晩秋という奴ですね」「奴ですか」「はい」「しかし秋には四季がある」「秋は四季の中のひと季節でしょ」「秋の初めは夏。これはかなり暑かったりします。真夏の服装でも暑いほど」「はい」「やがて半ばになりますと、これは真性の秋。真秋ですなあ。そして今日のように寒く感じる頃からが冬です」「春はどうなりました」「秋と似たようなもので
2022年10月26日 13:54
「今日はこのへんで終えますか」「そうですか。でも遅れますので」「多少はかまわないよ。急いでやって失敗し、二度手間になるよりもましでしょ」「でも、急いでいませんが」「まあ、長い時間やっていると、ミスをおかすものですよ。注意力も散漫になる。長い時間だとね。それと飽きてくる。だから、早い目に終えた方がいいのですよ」「でも、早すぎませんか」「いや、勤務時間が長いだけなんです。そんなもの半分あれ
2022年10月24日 13:20
「なかなか決心がつきません」「あ、そう」「決心すれば、そちらへ行けるのです。早く行きたいのですが、なかなか決心が定まりません」「そんな決心が必要なのかね」「決心すれば、それが出来ます。上手くいきます。それに一度決心すればその後、裏切るようなことはありません」「今はどうなのかね。以前、決心したから、今のところにいるのだろ」「あ、はい」「じゃ、私のところに来るというのは以前の決心に反する
2022年10月23日 13:14
「重森さんはどうですか」「あの人は癖がある。予想出来ないことをやる。これは臭い」「富田さんならいいのでは」「実力のある人だ。だが、強引さがある。押しが強い。だから実行力もあるが、何かをやりたいだけの人でね。頭が今一つ」「頭一つ抜きん出ていると」「いや、頭に抜けたところがある。これが怖い。配慮に足りないところがあるのでね」「岩田さんはどうですか」「富田さんの反対だ。気が弱い。体つきも声
2022年10月22日 13:29
下田は会社へ行けない。そのため、勤めていない。だが、行かないといけないと思い、何度か面接に行ったのだが、その前に履歴書などを書くのが嫌だった。 それ以前に、写真を用意しないといけないのも嫌だった。 それ以前に履歴書を買いに行くのが嫌だった。ここまで嫌なら就職しなければいいのだが、そうはいかない。無職では食べていけない。まさに王道。 その王道の道筋で、嫌だったことを何とかクリアし、履歴書を郵
2022年10月21日 14:00
「世代交代ですねえ」「ああ、いつの世にもそういうことがある」「全盛期の勢いがなくなっています。これがそのままなら、少し古くてもいいのですがね。下り坂です」「だから、全盛期があるのでしょう。そこから比べると落ちたとか」「そうですねえ。でも維持出来るはずですが、敢えてそれをしていない。これはもう嫌なので、早く退きたいのかもしれません。しかし周囲が許さないので、何とか続けている。だからやる気がも
2022年10月17日 12:32
「不知火村? そんな村など、この先にはないぞ」「羽田村の北に不知火村があると聞いたのですが」「ああ、それは、たまに聞くが、実際にはない」「では、この先には何があるのですか」「見た通りじゃ、小高い山が続いておる。村など出来る余地はない」「じゃ、ただの言い伝えの村だったのですね。半ば分かっていたのですが、その痕跡でもあるかと思いまして」「あんた、誰だ。暇な人だなあ」「隠れ里とか、隠し村。
2022年10月19日 13:01
ものには順番、順序があるのだが、その段階を飛ばして、一気にやってしまうこともある。これは無理っぽいし、いい方法ではないので、やはり順番がある。 これをして、あれをして、という具合に。外堀や内堀を埋めていくようなもの。時間はかかるし、手間もかかるが、本丸を攻める時は、もう既に落としたようなもの。邪魔な内堀も外堀もないので。 当然、それをしないと、次へは進めないというのもある。飛ばせない状態。こ
2022年10月15日 13:34
「平凡な日がいいですねえ」「それは難しいぞ」「え、一番簡単じゃないですか。特に何もないような日ですよ」「至難の業じゃ」「どうしてですか」「何かあるじゃろ」「あまり何も、これといったことがない日です」「じゃ、退屈ではないか」「それほど退屈しません。一寸刺激が欲しいところですが、まあ、このままでもいいかと」「ほほう。それは気持ちの問題か」「ほどほどの日でして、まずまずの日です。でも
2022年10月14日 13:22
「見剣山に妖しい術を使う者がおると聞いたのじゃが、見てきてくれぬか」「私がで、ございますか」「そうじゃ、そちなら適任。聞くところによると、妙な物を信じておるとか」「屋敷の庭に祭っている家神様ですか」「それが妙だと聞いたぞ」「謂れは分かりませんが引っ越しの度に、その祠も移動させております」「謂れが分からぬのか」「はい。神様か仏様かも分かりません。名前もありません」「ではどう呼んでおる