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すーぱー働きたくなかった私の就活の思い出③「君の志望動機はあるようでないね」

まんまの自分をしっかり見てもらい、とうとう最終面接。
そもそも自分が行きたいと思ったわけじゃないからスタートしたこの会社の選考。
ただ面接を重ねるにつれ、まんまの自分を見ようとしてくれる会社の姿勢や、若くて活気があって真摯に向き合う面接官の方々の姿勢に心が惹かれていきました。
また内定が一個もなかった私は、せっかくなら内定もらいたい!という気持ちに変わり最終面接に意気込んで臨みました。
※最終面接のときはさすがに企業研究していたのでこの会社がどれだけ忙しくバリバリの営業会社かは理解していました。

「君の志望動機はあるようでないね」

当日は今までの会議室と違って、立派な部屋に通されました。
黒い大きな椅子におもいっきりもたれかかったやせ型だけど迫力のあるおじさんが最終面接官でした。

「すごく態度悪くて申し訳ないんだけど腰が痛くてね、この態勢で面接をさせてほしい」

私がぶんぶん頷いて、面接は始まりました。

面接官「君どの辺受けてるの??」

私「いろいろです。食品メーカー、電気メーカー、銀行、保険、システム会社も受けてます。」

面接官「ふーん、なんでこの会社を?志望した理由は?」

私 (うわ、、志望動機きたか、、、)
用意してきた志望動機を面接官に伝える

面接官「そうか、君の志望動機はあるようでないね」

今まで何も言わずに落とされてましたが、こんなにもストレートに自分が伝えた志望動機に対してFBされたのは初めてで、私はすごくショックを受けました。

もう落ちたな。
そう思った私は開き直って答えました。

私「はい、正直ないです。なぜなら私は社会に出て働いたことがないです。だから働きたいかもわからないです。結婚してどうしたいのか、子供産んでどうしたいのか、独立したいのか、なにもまだわからないです。働いてみたないとわからないと思ってます。ただ、どうせ働くなら選択肢が狭まるような場所ではなく、選択肢を広げられるような場所で働きたいって思ってます。それがかなうならここでなくてもいいです。」

面接官はそれ以降、志望動機については触れませんでした。

「企業就職はお見合い結婚がうまくいく」

面接官「恋愛結婚とお見合い結婚ってどっちが統計的に離婚率が低いか知ってる?」

私「いえ、知らないです。」

面接官「お見合い結婚なんだよね。なんでかっていうと恋愛結婚はこの人となら幸せになれるに違いないって相手に期待して結婚するんだけど、お見合い結婚って最初から好きじゃないからこの人とどうやって幸せになろうかって考えて結婚するんだよね。前者は、他力で考えてるから当然思うようにいかないんだけど、後者は、自力で考えるから結果としてうまくいくことが多いんだよね。」

私「そうなんですね」

面接官「僕は就職っていうのは企業とのお見合い結婚がうまくいくと思ってる、結局会社に成長させてもらおうなんて考えていたらだめ、会社はいくらでも成長できる場はあるけど、それを見つけて使うのはその人次第だから、会社を使い倒して成長してやろうって気持ちの人のほうが成長するし、うちの会社とマッチするんだよね」

面接官「この会社って仕事できても成長する気のない人にはどうぞやめてくださいって会社なの、だから退職金も一定年齢超えると下がりだす。うまくできるベテランで手なり仕事で成果出せるとしても、足りてないけど成長意欲あるうまくいくかわからん人材にいいポジションを与える、そんな会社だよ」

ずっと働きたくないと思っていた私ですが、なぜかこの人の話が本当に興味深くて、この会社っておもしろいなと思い、話を聞き入ってしまいました。

今振り返ると、この会社じゃなくちゃだめって志望動機がなくてもいいんだよ、自分次第だよって言ってもらえていたのかもしれないなと思います。

「君の誰にも教えたくない汚い部分を教えて」

一通り会社について教えてくれたあと、質問に戻りました。

面接官「そうしたら君の誰にも教えたくない汚い部分を教えて」

私は一瞬固まって動けなくなりました。今まで短所を聞かれたことはあってもこんなえげつない質問の仕方をされたことはありませんでした。

面接官「君だけに言わせるのは申し訳ないから僕から話すね」

そういうと面接官は自分の汚い誰にも教えたくない話をしてました。
学生のころ、母親の財布からこっそりお金を抜き取っていたこと、
それもばれないように1000円ずつだけ抜き取っていた。
抜き取った事実もそうだが、ばれないように少額しか抜き取らない、そういう自分の小ささが何よりも嫌なところだと教えてくれました。

その話を聞いたあと、私の番です。
私は大前提、人に優劣などないということは頭ではわかっている。
しかし、私の頭の中で、私のものさしがあって、その基準に満たない人間を見下している。
それなのに、自分は人から見下されることを心の中で極端に恐れいている。
そういうところが嫌だと伝えました。

面接官は「そうか」と言ったあと

「君が本気でそんな自分を嫌っているのであれば、君はそうじゃない人間に必ずなれる

自分の一番いやなことが頭から離れなければそうならないようにどうすればいいかをずっと考え続ける、向き合い続ける

そういう人間は気づいたら、そうじゃない自分になれているものだよ」

この質問とそれに対する答えに、私はなぜかすごく救われた気がしました。
自分にとって宝物になるような一言でした。

「君が目的の為に自分を犠牲にした経験と、誰か犠牲にした経験を教えて」

これまた難しい質問してくるもんだな、、、と思いました。
しばらく考えた結果、私は高校時代のテニス部のことを話ました。

女子テニス部を実力主義の体制にすること私たちの代で掲げ、
たくさんの人に様々な協力をしてもらってました。
後輩たちも実力主義の体制に共感してついてきてくれました。

しかし、いざ高校生最後の大会となったときに、今まで一度も試合に出れていなかった同期が、最後くらい年次順にしてほしいと言い出したのです。

その時に実力主義のぶらさない為に自分も犠牲にし、他の人も犠牲にしたのでそのエピソードを伝えました。
※これはまた機会があれば詳細を書きたいと思います。

話を聞き終えると面接官は言いました。

「僕はね、この会社に入る人には組織のトップになってもらいたいって思っている

組織のトップは組織の目的の為にときに自分を犠牲にしなくちゃいけないこともあれば、自分以外の誰かを犠牲にしなくちゃいけないこともある

だから、君がそういう経験をしたことがあるか気になったんだよね」

難しい質問の多い面接ですが、答えたあとに教えてもらえる質問の背景に私はドキドキしてたまりませんでした。

他にもいくつか質問されましたが、その質問のひとつひとつが私自身の今までを振り返って答える内容で、どれも心に沁みました。

「君が中・高で頑張ったことをテニス以外で教えて、テニスはもうわかったから」「なんで成長したいの?君にとって成長ってなんなの?なんで魅力的な人間になりたいの??」

面接官は自分の仕事観についても話してくれました。
「僕はね、今この仕事をしているけど明日首になってタクシーの運転手やれって言われてもいい。それくらい日々本気でやっているし、タクシーの運転手の仕事もすごくおもしろそうだと思っている」
※これももしかしたら志望動機なんてなくていいよって言ってくれてたのかなと今となって思う言葉のひとつです。

面接が終わって、会議室をその面接官とともに出て、一本の通路を一緒に歩きながら
「いやー君がテニス以外に〇〇やっていたって話は意外だったな」と笑いながら歩いたのを今でも覚えています。

この人にこんなに魅力を感じながら私は入社後、つい自分なんかが、、、って思い話しかけにいくことができず、その面接官の方は退職されました。

志望動機がうまく答えられなかった私にはきっと縁はないだろう。
そもそもこんな会社でバリバリ働けるはずない。
でもこの面接の経験は私にとって宝物になる時間だった。
面接ってこんなにおもしろいのかと感動する経験でした。

そう思って、帰路につきました。

翌朝、私の携帯が鳴りました。
「おめでとうございます。人事部長はあなたの入社にGOを出しました」

※入社後に聞いた話ですが、私の面接官は当時の人事部長で、人事サイドがとても決めあぐねると判断した際に出てくるのがこの人事部長だったそうです。





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