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大学法人化を検証する③/教育の変化【動画解説】#00017

動画解説

 吉野先生と中富先生からの質問が相次ぎ、予定より長い動画になってしまいました。ただ、内容をより深掘りできたのではないかと思います。

 法人化が直接影響しているかどうかは難しいところですが、大学の世界ランキングは低下傾向にあります。しかし、明らかに大学教員の教育および社会貢献活動時間は法人化前より延長しています。つまり、大学教員は頑張っているものの世界的な評価には繋がっていない、ということになります。

 OECDのグラフでも示しているように、大学進学は世界共通で就職率を上げています。そのため、世界中で高等教育が広まっているわけです。日本での大学院進学は、社会経済の影響を大きく受けますが、緩やかながら減ってきています。他国と比べて、修士号、博士号取得者が極端に少なく、企業での博士号保有率もかなり低いです(驚愕の数値でした・・・)。中国(おそらくインドも)の研究分野での飛躍的な躍進によって、相対的に日本の研究力は衰退しているといえます。

 大学には教育だけでなく、研究があります(九州歯科大学は臨床も加えた合計3つ)。高校までと違って、大学の教育内容は、最新の研究によって常に更新されていきますので、研究は教育にとって不可欠な要素となります(研究をしない大学は、古い教育を学生に提供することになります)。教育には、学部教育だけでなく、大学院教育(修士号、博士号の取得)もあります。大学院教育とは、もろに研究者の育成です。動画の後半にあるように、既に日本は科学立国としての地位を失っています。

 近年、日本からのノーベル賞受賞が相次いでいるのは、かなり前の研究成果に対してです。多くのノーベル賞受賞者が「若手の育成を!」と声を上げているのは、結構、研究現場の悲痛な声を代弁していただいているわけです(社会では若手研究者に元気を与えているぐらいにしか受け取られていませんが・・・)。優秀な研究者程、日本に見切りをつけて海外の研究室へ移動していく話を時々耳にします。これを批判する人がいますが、研究環境が良くないわけですから、好条件の研究室へ移動するのは当たり前のことです。そもそも研究に国境はありませんので、どこの国で研究しようと関係ありません。

 かなり先の話になりますが、20~30年後は日本からのノーベル賞受賞はいなくなるでしょう(受賞者の年齢が結構高いことから、お察しください)。日本の研究開発力は世界の中でもかなり厳しい状態になることは明らかです。これは個ではなかなか解決できるものではなく、国として方針を決めてもらう必要があります。研究に使われるのは、ほとんど税金(科研費)です。投入した税金以上の税収が得られるようなイノベーションを起こせるのかどうか、を政治家に判断してもらう必要があります。大学の研究自体にはそもそも経済的効果の大きいイノベーションは期待できませんが、大学こそがイノベーションを起こす可能性のある「研究者」の人材育成の場であることを総合的に判断してほしいと願っています。

補足・修正

 冒頭の大学ランキングですが、ランキング自体は多くの団体が行っているものであり、目的に応じて採点方法などが違うようです。あくまでも一つの指標であり、絶対的な良し悪しを決めるランキングではないので注意する必要があります。そもそもはグローバル化により国を超えた大学評価が必要になって生まれたものですので、「海外の学生が留学する」体制を整えているか、ということが採点要件として重点視されているようです。

編集者から

使用機材
 変更ありません。詳しくはこちらを参照してください。

テロップ
 日本の教育はどうすればもっと良くなるのでしょうか?
 今回も内容が結構固い内容なのです…。
 誤解を生んでしまわないようにテロップの言葉はものすごく言葉を選んでいます。小野先生の添削が少し加えられていました(笑)


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