私が「キャッシュレス」を辞めたワケ。

今の場所に移住する前、仙台に住んでいた頃から、
「日々の支払いをいかにキャッシュレスにするか」というのは、
日常生活の中でも、割とこだわっていたポイントでした。

クレカもより還元率が高いものを求めて定期的に乗り換えるし、
スマホに載せられる決済手段があれば、積極的に移行していく。
同じ支払いでも、現金で払えば何もないけど、キャッシュレスで払うだけでポイントが溜まっていくわけですから、そりゃそちらを使わない手はない。

ちょっとそこらに買い物やら昼飯やらに出かけるくらいなら、財布は置いてスマホだけ持っていく、というような生活を送っていました。


ところが、私が今住んでいるところは、だいぶ山あいの方にあり、
最寄りの大手コンビニやスーパーまでは車で20分ほど、
夜も外食できるようなチェーンの飲食店となると、さらに走って車で30分ほどのところまで行かないとない、というような具合です。

当然、家の周りに商店はほとんどなく、
日常でお金を使う場所といえば、かろうじて個人商店が2店舗、道の駅と郵便局、それとガソリンスタンドが1つというような具合。
さすがにこれではキャッシュレス生活、というわけにもいきません。


それでも、ここ最近のキャッシュレス化の波もあってか、数年前から、
そのガソリンスタンドでクレジットカードが使えるように、
小さな個人商店でもPayPayでの支払いができるようになりました。
キャッシュレス万歳!だった私のこと、当然使わない手はありません。


でも、しばらく経ったあるときから、それらを辞めて、
地域の中での支払いは、また全部現金でするように戻したんですよね。

というのも、こんなのを見つけてしまいまして。

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仕事で物販の現場に携わる機会があり、
便利だからうちもキャッシュレス決済やろうよ!と検索して出てきたのが、
消費者はまず普段見ることがないであろう、
「導入店舗向けのご案内」に書かれていた、決済手数料の一覧表。

正直、これを見るまでは、決済に手数料がかかっている、そしてそれを店側が負担しているなんて、1mmも考えたことありませんでした。
でもよく考えたら当たり前ですよね。買い物しただけでポイントが貯まるなんて、その原資は当然誰かが負担しているわけで。

消費者側からしたら、
同じ買い物するにしても、クレカのほうがポイントついてお得じゃん!
ってなるけれど、お店側からしたらまったく逆で、
同じ買い物なのに、クレカで払われたというだけで、自動的に3%取り分が減っている。

まあもちろんそれが信販会社の商売なので、別に悪いことでもなんでもない、至極当然な話なのですが、
田舎の小さな商店からしたら、その3%がどれほど大きいことか。

町場の大きな店ならともかく、
地域の中の「顔の見える商売」で、
こちらのちょっとしたオトクを求めるがゆえに、
お店の虎の子の利益を奪うようなことがあっちゃいけない。
そう思うようになってから、
地元のお店とか、仙台でも顔なじみのお店でだけは、全部現金で払うようになりました。

キャッシュレスだと、入金サイクルとかも気にしなくちゃいけないから、
なんだかんだその場で現金が入ってきたほうが、お店としてもありがたいはずなんですよね。
お店の方もやっぱり現金の方が慣れているから、わざわざ手を煩わすこともない。
そう考えると、なんだか前以上に気持ちよく買い物ができるようになった気がします。


日本全体として、キャッシュレス化はこれからも当然進んでいくし、
是非もっと進んでいってほしいと思います。
顧客獲得、省力化のために、キャッシュレスが武器になる部分は大いにあるのは間違いない。

でも、それが田舎の小さな個人商店にまであてはまるか?と言われると、
必ずしもそんなことはないと思っています。
小さな商圏の中で、顔見知りのお客さんたちの買い物場所を守っていく、
そんな「セーフティネット」的な役割を果たしている個人商店で、
虎の子の数%が手数料として地域外に持っていかれるということは、
地域経済の在り方として本当に正しいのか?

自分(消費者)の利益・利便性は、もちろん大事。
でも、「まち」とか「地域」の持続可能性を考える上では、それだけでは足りなくて、
商店とか、地域経済全体のこととか、複眼的に見ていくことも、
きっと重要な視点なのではないか、と感じています。

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