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エッセイ「感じ方は人それぞれ」

先日、月に数回の親の通院の付き添い日であった。
私は日頃、車移動ばかりで、電車にはこの月に数回しか乗らない日々を送っている。

それなので、現在の私は電車に居る人々を、もの珍しく、つい眺めてしまう。

その日私は何も考えずに、慌てて電車に乗ってしまって、弱冷房車に乗ってしまった。人もそこそこの密度で乗っていて、空気が重たく、しっとりと感じられる。

私はどちらかと言うと冷え性の部類に入るので、キンキンに冷えた車内は苦手なのだけれど、そんな私ですら、乗り込んだ弱冷房車は蒸し暑く感じられた。

私は、ドアの開閉口のところに立っていた。電車が途中の駅に滑り込み、ドアがプシュ〜っと空き、次々に人が流れ込んで来る。

『ドア閉まりま〜す』駅員さん特有の、鼻にかかるような声でアナウンスが流れると同時に、一人のおじさまが階段を駆け降りながら、車内に滑り込んで来た。ドアのところに立っていた私は、その様子をいちばん良く見えるポイントで目撃してしまった。

ギリギリでなんとか電車に乗り込むことが出来たおじさまは、ホッとした様子で肩を上下に動かしながら呼吸を整えている。そんなおじさまの姿が視界の片隅に入る。

そのおじさまが、無事に乗車出来たことに、なぜだか私まで胸を撫で下ろす。

ハッと我に返り、慌てて乗り込んだ車両のかなりの蒸し暑さに、ここは弱冷房車なのか?と気付いたのだろうか、絶望の淵に立たされている様子のおじさまは、そのときの私にとって、一瞬にして、この生きづらい世界を共に生きる戦友となった。

そんなこんなで、しばらく電車に揺られていると、途中の駅から乗って来た女性から、香水の香りが漂って来た。

私は、強めの香りが少々苦手で、自分自身は香水は使わない。その女性は、私がモヤモヤを思い浮かべていることなど、想像することすらしないだろう。

香りに対する感じ方も、人それぞれなのだろうな。でも、それぞれで良いのだよな、と思ったのだった。

また、電車シリーズを書いてしまいました。
まったく意図していないのですが、月に数回の電車話を、気が付けば書いてしまっています。電車は、社会の縮図のようで、面白いなぁと。

お時間いただいてしまい恐縮でした。
今週も、読んで下さってありがとうございました!


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