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【展覧会】 石岡瑛子展 の記録。

今年から自分が行った展覧会などの感想を書き記していくことにしました。

第一回目はただいま東京都現代美術館にて開催されている「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」です。(〜2/14まで)

石岡瑛子さんは、世界的に活躍されたデザイナー、と一言では言えませんね、グラフィックデザイナーであり、アートディレクターであり、衣装デザイナーであり、プロダクションデザイナーです。

この展示会は石岡さんのお仕事が時系列で紹介されていくのですが、いやはや、これはお仕事の展示、というより、石岡さんの息吹というか、命の展示です。決して大げさではなく。

展示を見終えた後は、まるで一本の映画を見たかのような充実感と達成感を味わいました。(わたしは最初から最後までみるのに2時間30分かかりました)

では早速、感想をつらつらと書いていきたいと思います。

とはいえ、先入観がないほうが、ご自身のなかにストンと入ってくると思いますので、これから展示を見に行く予定のある方はココまで、をおすすめします。


0. イントロダクション

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深紅の壁に書かれた印象的な言葉の洗礼を浴びてから、石岡ワールドに突入です。

入り口からずっと石岡さんの語り声が響いています。少し遠くに聴こえるような感じが、まるで石岡さんの体内にいるかのようです。

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1. TIMELESS:時代をデザインする

少し暗い照明のなか解説を読んでから、右に目をやると、細い長い道のつきあたりがとても明るい。その正面に石岡さんの作品が展示されています。

さきほど石岡さんの体内にいるよう、と書きましたが、まさにここから世に生まれ出るような感覚です。

パッと開けた光の先から、まずは1961年からの初期のお仕事の展示がはじまります。

資生堂時代のホネケーキの広告、当時世を震撼させた前田美波里さんポスター。

大阪万博のポスター、パルコのお仕事、角川書店お仕事…などと続いていきます。

わたしがいちばん興味深かったのは、広告の版下と校正紙。

石岡さんの言葉がたくさん書き込んでありました。どこにこだわって制作されていたかがアリアリとわかるのです。石岡さんの脳裏には明確にイメージがあったのでしょうね。

制作段階を細かく拝見した後に見る本物のポスターは感慨もひとしおです。

それから山本海苔のパッケージも好きでした。

アートディレクションを石岡瑛子さんが、クラフィックデザイナーであったお父様の石岡とみ緒さんが書を、妹の石岡怜子さんがデザインを担当されたご家族の合作なのだそうです。

ただカッコいいとかじゃなくて…なんか洗練されたあたたかさ?というか…各々が別々の個性をしっかり持ったクリエイターでありながら、同じ空気をまとう家族である、ということが作品に表れているような感じがしました。

わたしは個人的にこのお部屋がいちばん好きでした。

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2. FEARLESS:出会いをデザインする

ここからは1980年、ニューヨークに拠点を移してからのお仕事の展示です。

広告のお仕事から、だんだんと映画や舞台のアートディレクションや衣装デザインのお仕事へと大きく広がっていきます。

アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞した、フランシス・フォード・コッポラ監督の「ドラキュラ」の衣装もここに展示されています。

このコーナーの展示でわたしが印象的だったのが、ジャズトランペッターのマイルズ・デイビスのジャケットデザインです。

暗い室内のなかに浮かび上がるマイルス・デイビスのアルバムのジャケット。そこにはひよひよとしなりながらレコードがまわっています。マイルス・デイビスの音です。

カッコいい。

しびれました。

音とジャケットデザインで完成される空間でした。

作品の演出、というか展示のすばらしさはこの展覧会の醍醐味の1つだと思います。

展示のスケールも大きくて、その仕事(部屋)ごとの世界観があって、スタイリッシュななかにテーマパークっぽい楽しさもありました。空間、照明、音、スクリーンの使い方でさらに魅力的に、ぐんぐんと作品に引き込まれていきます。

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3. BORDERLESS:未知をデザインする

正直2までの展示で「圧巻」といった感じなのですが、石岡さんのお仕事はここからまたさらに新しい世界へと突入していきます。

解説を読んでいて、感銘をうけた話がありました。

石岡さんはインド出身の映像作家、ターセム・シンにハリウッド映画の衣装デザインを依頼され、彼の作品に自分との共通点を見出し興味を持ったそうです。

それもそのはず。このターセムは学生時代から石岡さんの作品をまとめた「EIKO by EIKO」をバイブルとしていたのだそう。

つまりは俗な言い方をすれば、石岡チルドレンですよね。

ここではついターセム側の視点で見てしまいました。これってクリエイターとして最高ですよね。ずっと憧れ、追いかけてきた人と一緒に仕事をできるなんて。

尊敬だけでは一緒に仕事できませんからね、リスペクトのなかにしっかりターセム自身の輝く個性があったのでしょう。

このお話は個人的にとても響いたエピソードでした。

そして、最後。

これはわたしが今回の展示でいちばん好きだった作品。「えこの一代記」でこの展覧会の幕が降ります。

石岡さんの最初の作品。表現者として世に出る前の学生の頃の作品ですが、もうすでにこのときから表現者だったのだなと感じさせます。

このときに書き記した夢は大きく、いやそれ以上に叶ったのではないでしょうか。

常に「全く見たことがないものをつくろう」とされた石岡さん。

石岡さんが道なき道を切り開いてきたからこそ、いまがあることをさまざまな部分で感じた展示会でした。

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追記:

この展示会にきている人たちがとにかくおしゃれでした。きっと今のトップクリエイターたちなんだろうなぁと眺めておりました。マスク姿ではありますが、みなさんすごく雰囲気があるんです。そんな部分もとても楽しめた展示会でした。



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