ハル

こころに優しいひと時を。 ハルが童話と短歌を綴っていきます。

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こころに優しいひと時を。 ハルが童話と短歌を綴っていきます。

最近の記事

はつなつ物語

 ミントキャンディーを口に含んだ時のような風が吹く、初夏の朝でした。     マリコさんの家のベランダに、初雪のように真っ白なバラが咲きました。  マリコさんのおうちはマンションの七階です。マリコさんはこの白バラを育てていて、今年も楽しみにしていたのです。 「よく咲いたねぇ」  マリコさんはまぶしい朝日を浴びながら、嬉しそうに顔をほころばせました。  と、そこへ黄色と黒の美しい模様をした、アゲハ蝶がふわりふわりと七階のベランダまで飛んでくるではありませんか。  こんなことは初

    • 石ころいしちゃん

       いしちゃんは小さな石ころ。  今日も川べりの道でひなたぼっこです。  と、そこへ、小学生の男の子が、やってきました。  男の子はいしちゃんをぽーんとけとばすと、「あーあ」 と深くため息をつきました。  いしちゃんは少し転がって、男の子の顔を見ました。男の子はとても悲しそうな顔をしています。 (何があったんだろう?)  いしちゃんは思いました。  男の子は河原に座り込んで、いしちゃんを手に取って言いました。 「なんでこうくんと、けんかしちゃったんだろう。」  男の子はいしちゃ

      • おとうさんの大きなかさ

        「行ってきまーす!」  ぼくは、いきおいよく、家を出た。お父さんの、大きな黒いかさを持って。だって、お父さんのかさは、持つところが、刀みたいで、かっこいいんだもん。れきし好きなお父さんが、つうはんで、買ったものだ。  外は、くもり空。ぼくは、刀のかさをふりかざした。 「えいっ! やぁ!」  チャンバラも、一人では、つまらない。ぼくは、かさをさしてみた。  大きな黒いかさにつつまれて、ぼくは映画館にいるような気持ちになった。  かさの黒いやみを、見つめていると、ブラックホールみ

        • クリスマスの夜に

          しずかな山奥の村に、雪がちらちらと、まいおりています。森の木々たちは、やさしく雪を受けとめながら、月明りに照らされています。   今日はクリスマスの夜。山のてっぺんに、たっている小さなおうちで、おばあさんが一人亡くなった、だんなさんのことを考えていました。 (まさひこさんが、亡くなってから、もう二十年以上たつんだねぇ。働き者で、だれに対してもやさしい、すてきな人だった。出会った若いころは、クリスマスなんてものはなかったけど、息子のけんたろうとりんたろうが、生まれてからは楽しか

        はつなつ物語

          カラスのきょうだい、カー・キー・クー

          カラスのカーとキーとクーは、なかよし三きょうだい。 今日も三羽で大きな空を飛び回っています いちばん上のお兄さん、カーは考えることが大好き。いつもむずかしい顔をして、考え込んでいます。 その下のお姉さん、キーはきれいなものに目がありません。今日もピカピカしたきれいなものはないかと、目をきらきらさせています。 いちばん末っ子のクーはたいへんな食いしん坊。おいしいものが大好きです。 三羽が飛び回っていると、おいしそうなハンバーグやステーキやらの食べのこしが、ゴミ置き場に

          カラスのきょうだい、カー・キー・クー

          みんなでわっしょい!

           おひさまがカンカンに照りつける、夏の暑い午後でした。  アリのヨイショは大きなクッキーが落ちているのに出会いました。 「わぁ、おいしそうだなぁ。よし、おうちまで運んでみんなで分けよう!」  ヨイショは「よいしょ、よいしょ!」とかけ声を出しながら、クッキーを運ぼうとしました。  でもクッキーはなかなか動きません。  そこへ小さな声がしました。 「手伝ってあげようか」  ヨイショが振り返ると、ヨイショよりも小さなアリがもじもじしています。 「僕、コラショっていいます」 「俺はヨ

          みんなでわっしょい!

          サンタの孫と星のつえ

          もうすぐ、クリスマス。  一年生のひろきは、サンタさんになにをもらおうか、むねをふくらませていました。 「サッカーボールもいいけど、ゲームきもほしいなぁ。どうしよう」  ぶつぶつ言ってると、きんじょに住んでいるけんたがやってきました。 「ひろき、なにぶつぶつ言ってるんだよ」 「けんた君。ぼく、サンタさんになにをもらおうか、かんがえてるんだ」  ひろきはゲームきのことを、おもいうかべて、にこっとしてこたえました。  けんたは、それをきくと、にやぁっとわらって言いました。 「おま

          サンタの孫と星のつえ

          がんばれ、おねえちゃん

           あいかのママのおなかが少しずつ大きくなりはじめたのは、あじさいの咲く雨の季節でした。 (ママはごはんを食べすぎたのかな。)  あいかはふしぎでした。  でもママはとってもうれしそうで、楽しそうにしているのです。パパもママにとてもやさしくしています。  あいかはママにきいてみました。 「ママのおなか、大きくなったねぇ」  ママはとてもうれしそうに笑って言いました。 「うふふ、あいか。おなかのなかには何が入ってると思う?」 「うーん、今日食べたハンバーグかなぁ」 「あはは、ハン

          がんばれ、おねえちゃん

          すずらんの約束

          「ハッピーバースデー!」 「おたんじょうび、おめでとう」  パパやおばあちゃんの明るい声に、ゆみはろうそくの火をふきけしました。  今日はゆみの九さいのたんじょう日。ゆみのおうちには、パパの妹のはるこねえちゃんや、はるこねえちゃんの赤ちゃんのしんちゃんもあつまって、ゆみのおいわいをしています。  テーブルには、ケーキやおすしやからあげ、プレゼントもならんでいます。 「みんな、ありがとう」  ゆみがほっぺをピンクにして、お礼を言うと、しんちゃんが声をあげて、プレゼントをほうり投

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