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みんなでわっしょい!

 おひさまがカンカンに照りつける、夏の暑い午後でした。
 アリのヨイショは大きなクッキーが落ちているのに出会いました。
「わぁ、おいしそうだなぁ。よし、おうちまで運んでみんなで分けよう!」
 ヨイショは「よいしょ、よいしょ!」とかけ声を出しながら、クッキーを運ぼうとしました。
 でもクッキーはなかなか動きません。
 そこへ小さな声がしました。
「手伝ってあげようか」
 ヨイショが振り返ると、ヨイショよりも小さなアリがもじもじしています。
「僕、コラショっていいます」
「俺はヨイショ。助かるよ。よろしくね」
 ヨイショとコラショは、一生懸命大きなクッキーを持ち上げようとしました。
「よいしょ、こらしょ! よいしょ、こらしょ!」
 クッキーはやっぱり持ち上がりません。
 と、そこへ今度は大きな声がしました。
「手伝ってやろうか!」
 ヨイショよりも大きなアリがデーンと立っていました。
「おいらはドッコイショ。うちまで行くんだろ。おいらにかかれば、なんてことないぜ」
「ありがとう! 君にかかれば百人力だ」
 ヨイショとコラショとドッコイショは力を合わせて、クッキーを持ち上げました。
「よいしょ、こらしょ、どっこいしょ! よいしょ、こらしょ、どっこいしょ!」
 ヨイショとコラショとドッコイショは、ゆっくりクッキーを運んでいきました。
 ヨイショとコラショとドッコイショのおでこに玉のような汗が浮かびました。
 おうちまではまだまだ道のりがあります。ヨイショとコラショとドッコイショは、大きな雲が流れるように進みました。
 と、そこへまた声がしました
「ほれ、そこの若い衆。わしはウンショというんじゃがな。みんなとても疲れているようじゃ。この先にアイスキャンディーのプールがあるから、そこで休んで来たらどうじゃ」
 ヨイショたちよりも年老いたアリが立っていました。
 ヨイショとコラショとドッコイショは顔を見合わせました。
 そこでクッキーをかついだまま、アイスキャンディーのプールに行くことにしました。
 ヨイショとコラショとドッコイショにウンショも加わって、クッキーを運びました。「よいしょ、こらしょ、どっこいしょ、うんしょ! よいしょ、こらしょ、どっこいしょ、うんしょ!」
 たどり着いたアイスキャンディーのプールは、とても気持ちの良いところでした。ソーダ水は甘くて美味しいし、大きな板の所で休めるようにもなっていました。
 疲れが取れたヨイショとコラショとドッコイショとウンショは、おうちへの道を戻ろうとしました。しかし、ウンショは戻りの道がわからないと言います。
 困り果てたヨイショとコラショとドッコイショとウンショでした。と、そこへまたまた声がしました。
「私はショッショノショ。何かお困りですか?」
 背の高い賢そうなアリが立っていました。
「俺たち、おうちまでの道のりがわからないんです」
「それは大変ですね。私は地理学者です。この辺の道に詳しいので、私がご案内しましょう」
 もうお日様は山の端に隠れようとしています。ショッショノショを先頭に、ヨイショとコラショとドッコイショとウンショはおうちまでの道を急ぎました。
「よいしょ、こらしょ、どっこいしょ、うんしょ、しょっしょのしょ! よいしょ、こらしょ、どっこいしょ、うんしょ、しょっしょのしょ!」
 ヨイショもコラショもドッコイショもウンショもショッショッノショも脚はガクガク、腕はブルブル、くたびれ切っていました。
 やっとの思いでおうちまで帰り着いた時、すっかり日が落ちていました。
 他のアリたちはもう寝ていたけど、ヨイショとコラショとドッコイショとウンショとショッショノショは、嬉しさで肩を叩き合いました。そしてひと口ずつクッキーを頬張り合いました。
 遠くに光る小さなお星さまが一瞬キラリとまたたきました。
 ヨイショとコラショとドッコイショとウンショとショッショノショは、その時同じ事を考えました。
(疲れたけど楽しかったなあ)
 とても暑い夏の一日の出来事でした。

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