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べらぼうに甘い祖母の料理は思い出の味~まだ健在なのですが~

小学生までだいたい週末や、長期の休み(夏休みなど)は祖母の家に預けられていたと記憶している。祖母の家に行っても、遊び相手はおらず一人で図書館行ったり町民プールへ行ったりしていた(三日はしかをもらって帰ってきたり)

祖母は働いておらず、だいたい家にいた。外出は習い事の日本舞踊を練習に出かけるくらい。

祖父は、私の母が15歳の時に仕事中の事故で早くに亡くなってしまったと聞いている。

当時、祖母と祖母の弟が一緒に住んでるという少し変わった家だった。

祖母の弟、私の母の叔父にあたるのだがよく海に連れて行ってくれて潮だまりで私は1人無心で魚を捕まえたりして遊ばせてくれて母の叔父は私の目の届く場所で磯釣りをするのがお決まりだった。
昔、客船の元コックだったため料理が上手い。魚を捌いて、すり身揚げにしたりイチから作る料理が上手だった正月の為の刺身はわざわざ長崎の魚市場まで行って買い付けてた。お肉買う時も鋭い眼光で目利きして買うほどこだわる。

おかげで私は小学生のくせに大トロ食べたり、当時珍しかったアボカドを醤油で食べさせられたりしていた。お肉も霜降りw今の私は赤身派、きっと若い頃食べ過ぎたんだと思う

私が料理好きなのは、祖母と母の叔父の影響が大きい。


祖母は、豪華な料理は作らないが至って普通の料理が得意だった。
卵焼き、唐揚げ、かぼちゃの煮物、味噌汁、きんぴらごぼう。

朝起きると、味噌汁と卵焼きと焼いたハム、きんぴらがテーブルにならんでいる。私は祖母が用意してくれた朝ごはんが大好きだった。


祖母の手料理はべらぼうに甘い。

でも変な甘さがなく何故かご飯が進む味なのだ。

祖母の卵焼きを別のもの例えるなら、糖度が「あんドーナツ」と同じくらい

丁寧に何層にも巻かれた卵焼きは、ふんわりとしていて甘ったるくて箸でつかむと層の中から蜜みたいにジワっと出汁がでてくる。それと共に白いご飯と食べると、かなり病みつきになる。

今でも鮮明に覚えてる。

祖母は目分量で作るからレシピが存在しない。

私が覚えている舌だけが頼りで、唐揚げも、かぼちゃの煮物も色々再現に試みても全然同じ味にならない。

祖母は、とにかく味付けが豪快。砂糖はレンゲスプーンで数え切れないほど投入し、醤油はお玉で入れる・・・でも美味しい。何が違うんだろう

祖母に今一度作ってもらおうと思っても今は不可能だ。


なぜなら認知症になってしまったからだ。


母が正月に祖母の唐揚げを再現しようと味付けして、その味見を祖母に頼んでみた。まだ認知症と診断されたばかりの頃だった。味見をしてもらうと

「いんじゃない?」と、どこか祖母らしくないしっくり来ない返事だった。

テキトーに返事しただけだった。

母も再現できずに終わった。


祖母は認知症にかかっても穏やかで、いつもニコニコしている。暴言を吐くなどもなく常にいつも同じ場所に座って大好きなテレビを観て私の母と住んでいる。そして私の息子の顔を見て、毎回良い男だと褒めてくれるwwゆるキャラみたいな存在で今も元気に生きている。


最近全く会いに行けてないからか、祖母のきんぴらごぼうを思い出した。

デロデロに甘くて、きんぴらなのに脂たっぷりで、「ゴボウのささがき」が誰よりも上手くて細くてふわっとしてて完成したころにはゴボウが透き通って見えるほど繊細。ガシガシごりごりした食感が好みの人もいるかもしれないけど、私は祖母の繊細なゴボウのささがきが好き。

醤油ドボドボ、砂糖はたっぷり、そして小さめに切った豚バラを加えて脂たっぷりに仕上げる。


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思い出しながら真似て作ってみた、そしたら家族みんなが山盛り食べてくれた。祖母のきんぴらみたいに艶々の照り照りの脂たっぷりの無敵きんぴらには近づけなかったけど、いつも余って不人気だったきんぴらがどんどん無くなって皿の底が見えるほどに少なくなった。完売御礼になった。

少しの手間と迷いのない味付け。

ここぞの時は思い切ってもいいのか。

人生も同じだ。

祖母のすべての料理は、そう言わんばかりの味付けだ。

唐揚げも砂糖たっぷり使うから揚げた時にやや焦げて見えるのだが美味い

もうそれが食べられないのがとても悔しい

教わっておけばよかった、まさか認知症になるって思ってなかった・・・

ゆるキャラみたいに定位置にちょこんと座って毎日穏やかに過ごしてるだけでも充分だけど、願いが叶うならもう一度食べたい・・・

祖母からは何も教わる機会がなかったが、いつもせっせとキレイに家の掃除をしてたり、チマチマ栗を剥いたり山に山菜採りに行って指先が真っ黒になるまで山菜の皮剥いたり灰汁抜きして煮物に使ったり、正月はお節で迎えてくれたり、皮の厚い甘夏を何個も向いて食べさせてくれた。

手間惜しまずに作る人だった。

母の叔父と違って全然豪華な物は作らないが、素朴だけど今でも記憶に残る味。忘れられない。


そして、今日の夕飯に祖母の卵焼きを再現して作ってみようと思う。

・卵もたっぷり使って、砂糖は普段より小さじ3杯くらい多めに入れる。
・常に強火で、焦げてきてもあせらず巻く。
・形が崩れかけても気にせず最後まで巻き切る。


どんなことがあっても自分でやり遂げる、最後まで諦めない
自分を信じる、相手を思いやる、誰かの喜ぶ顔がみたい

すべてに共通してくる。

祖母の生き方、料理で自然と色々教わってきたのかもしれない。


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実際作ってみた卵焼き↑

結果は撃沈。

全然違う、ただひたすら甘いだけの卵焼きに仕上がってしまい祖母の味には程遠い。

味も人生もまだまだ、ということか...



祖母みたいに私も将来、テレビの前に鎮座し穏やかに過ごしたい。



きっと祖母は今日も何にも変わらず、世の中の動きなんて知らずに穏やかに過ごしてると思う。
砂糖いっぱいにまぶされた甘くて罪な食べ物、あんドーナツを食べながら
大好きな時代劇を観て最高な時間を過ごしているに違いない。


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