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20221119 ラテンの宴(エン) テーマ「ゴリゴリ(パンクなサルサ)」

2022年11月のラテンの宴
レコード紹介テーマ「ゴリゴリ(パンクなサルサ)」

横浜元町の"Gallery + Sushi あまね"で毎月開催している音楽ラウンジ「ラテンの宴(エン)」

そこではDJの時間とは別に、テーマを決めて音楽紹介も実施。
2022年11月のテーマは「ゴリゴリ(パンクなサルサ)」です。
という事でパンクでヤンチャな音のサルサを紹介します。



   日本で"サルサ"というと”ペアダンスのための音楽"といったイメージがありますが、 ”若気の至り"や"ミュージシャンの創造性"をゴリゴリに出したヤンチャな音、レベルミュージック(反抗の音楽)として見れる面もあると思います。
ただし日本ではそういった面からの紹介は殆どされていません。そんな音がなっていた当時も、そして今現在でも殆ど無視されてる切り口だと思います。(一般の音楽好きにも全然刺さるほど刺激的だと思うのですが…)
今回は60年代中盤~70年代中盤の当時にはリアルタイムに日本に紹介されていない、 でも刺激的なラテンの音を紹介します。


まず幾つかの事前情報を。

今回紹介する音源に関係する地理的情報を以下に示しています。
サルサと呼ばれる音楽が"どこ"の音楽か?と尋ねられたときの答えは、「南米の○○(国名)」ではなく、「ニューヨークの音楽である」と答えるのが一番正解に近いものかと。(答えは誰にも断言できないと思いますが)

ニューヨークのスペイン系移民街 ”エル・バリオ” から発生してきた音楽がサルサであるといえる と思います。

また、1959にキューバでは革命が起こり社会主義体制になったため、アメリカとキューバの間の人やモノの交流がほぼ途絶えました。キューバからの亡命者はいたようですが、行き来するということは出来なくなったようです。
そのような状況なのでサルサ発生の頃の70年代初頭にはプエルトリコ系のミュージシャンが多かったようです。

また今回紹介する音源に関係してベネズエラも地図に説明を入れました。70年代ベネズエラは豊富な石油資源によりかなり豊かでポピュラーミュージックも相当に盛んだったようです。ラテン系に限らずプログレッシブ・ロックなんかも同時代的なモダンさを持つクオリティーの高い音源が残されています。




何かに追い立てられるかのような疾走マンボ


サルサが勃興(1971年頃)する前のラテンに性急でカッコいい音源が残されています。疾走するマンボを幾つか紹介。

【1】Ray Terrace / Baila Baila (1965 アメリカ)

60年代のマンボの最高峰の一つだと思う。
ラテンバンドのリーダーとして有名なピート・テラスの兄弟(弟?)らしい。
本盤を含めてLP3枚しか残しておらず、Towerレーベルに残された1枚はラテンソウルとして渋谷系界隈に発掘された。 
が、ラテン的には Jubileeレーベルに残された2枚こそ"至宝"とよべる大傑作(にしてTower盤と比較すると段違いのレア盤…)
「Confusion(mambo)」の疾走感たるや!



【2】Los Dementes / Manicomio A Locha (1967 べネズエラ)

こちらはベネズエラの音源。
60年代中盤にニューヨークにいたというレイ・ペレスが結成したバンド。
60年代中盤、つまりBoogaloo(ブーガルー)が発生する直前のシーン沸騰時期である。
Boogalooとはスパニッシュハーレムの移民2世の若者が自らのルーツを意識しながら同時代のロックやソウルを取り込んだラテン音楽のこと。
その熱量を浴びてべネズエラで練成されたガサツ疾走ラテン。
スクーターのリミッターカットして80km出してるアンちゃん感というか…
軽くて早いがブレーキ利かなくて垣根に突っ込んじゃう、みたいな闇雲かつ不安点な疾走感(笑)



【3】Los Calvos / Estos Son Los Calvos(1967 べネズエラ)

これもベネズエラ。
Los calvos = ハゲ という、何故そんな名前に?なバンド。
ドリフの加藤茶みたいな 一見して分かる"やっすいハゲズラ"なジャケットに残されたその音は予想に反してヤサグレて疾走感あふれるトラックが満載!
上のロス・デメンテスのレイ・ペレスが中心となり結成。
一風変わった所はドラマーのフランク・フェルナンデスが参加している所。
(通常のサルサ楽団ではドラムセットは使わない)
「Yo sin Ti」はエディー・パルミエリのカバー。


ワワンコー的リズムのルーズな雰囲気のトラック


Guaguanco(ワワンコー / グァグァンコーともかかれたりする) とはキューバの伝統音楽ルンバのリズム。上記のマンボとは違ってゆったり粘りのある感じのリズムです。
このリズムを訓練無しに素で聞いて体を動かせるという日本人は少ないと思いますが、ルーズで悪い感じが溢れ、好きな人には刺さる音かと思います。


【4】Willy Rodriguez Y Su Orquesta / Descarga '71 (1971 アメリカ)


バリオ(スパニッシュ・ハーレム)のダルでヤバイ雰囲気をそのまま詰め込んだようなトラック「Amores con la Luna」(月との愛)
パーカッションソロの”引っぱたく”感じがバリオのストリートのひりついた空気感を想像させる。
同名のパーカッションの大御所ミュージシャンがいるがどうやら別人のよう。こちらのウィリー・ロドリゲスは恐らくブガルー世代のトランペット奏者。
(自分も今回調べて別人じゃないかと気付いた)




【5】Brooklyn Sounds / Brooklyn Sounds! (1971 アメリカ)

大御所エディー・パルミエリのトロンバンガ(トロンボーンが複数本入った重厚なバンド編成)に強く影響を受けているであろうブルックリン・サウンズ。
サルサ界のスターになれなかったB級感が溢れまくっているが、それゆえにバリオ地区の土地の香りが感じられるような音。
ず太いベースに導かれ、ダルくグルーヴしてゆく「La-Va-Eh」
本盤は1stだが2ndアルバムがサルサドゥーラ(ハードサルサ)の代表的名盤として有名。


現行バンド

上記で紹介した様な音や雰囲気に強く影響を受けていると思しき音を紹介。

【6】Orquesta El macabeo / Macacoa(2014 プエルトリコ)

2008年に結成されたプエルトリコの新世代のサルサバンド。
もともとはロックやパンク、スカなんかをやっていたメンバーが多いらしく、それら”反抗の音楽(レベルミュージック)"の香りが濃厚な骨太サルサ。 
大手レコード会社の配給にのせず各国への配給も自主制作的な当地レーベルを通じて発売してるらしくその辺りもパンクやハードコア的。 曲の方もクラシック・サルサのカバーではなく全部オリジナル音源というところにも気骨を感じる。



【7】BANDERAS / La Bandera (2018 日本)

日本発のパンキッシュなサルサの筆頭。
自分もDJで頻繁につかう「Tema de Banderas」(バンデラスのテーマ)は”酒場の喧嘩が始まる前"な雰囲気にフロアを一気に持っていける。
心をザワつかせる不穏空気発生装置的(?)なマンボ。 (実際この曲をかけるとフロアから歓声が上がりだしたりDJブース向かってアクションしてくれたりが発生してきます)
もっともっと評価されていいと思う一枚。




ロックの登場以後、特にビートルズが出現してから以降の10年ほどはラテンのレコードは日本盤として殆ど発売されませんでした。
その判断はレコードを長年買ってる自分の皮膚感からです。
(が、高齢の愛好者の方も同じようなことを言われていたので間違ってはいないかと。)

つまり「1963~4ころからは日本のレコード会社はラテンを出さずにロックに全振りした」といった動きにみえます。
下に簡単に一覧としてまとめてみました。

ラテンレコードが発売されてなかった時期の音源がつまらなかったから発売されなかったのか?
個人的には同時代のロックに比肩しうる勢いヤバさをもつ音源はゴロゴロあったと思います。
結局のところ音楽の本質そのものではなく「ロック押しで行こう」としたレコード会社の方針の都合だったのでは?と勘ぐっています。

(これをもっと大きく言っちゃうと「メディアを出す会社の都合によって一般大衆が受け取る情報など簡単にコントロールできる」なんてことかと。こんな話どっかで見たことあるなぁ… あ、今の政Gや枠珍の報道に通じる話じゃないか…)


ひたすらアホみたいにレコードだけを買っていても「何か見えることがある」のかもね~?といったところで締めとします。


横浜 元町 Gallery + sushi あまね
https://amane.gallery/

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