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言葉にならない複雑な気持ちに共感。

以前このnoteでも紹介したことがありますが私は金子みすゞの詩が好きです。今月のNHK『100分de名著』はそのみすゞの特集をしていました。

そこで思い出したのです!!


私がみすゞの詩が好きになったのは子どもの頃に母から詩の絵本がきっかけでした。

『ほしとたんぽぽ』に紹介されている詩は、キラキラ・いきいき。みすゞの優しさ・温かさの詰まった作品が収められています。ページをめくると、光や溢れ出し、磯の香や波の音、朝露のこぼれる音、感性で感じ取れる作品達。子どもの私は何度も何度もわくわく読んだのを覚えています。


この絵本をきっかけに、他にもみすゞの詩をいくつか読んだことがありました。

それが…子どもの私には全くしっくりこなかったのです。

それをテレビを観て思い出したのです!


『帆』                 ちょいと
渚の貝がら見た間に、
あの帆はどっかへ
行ってしまった。            
こんなふうに
行ってしまった、
誰かがあった~
何かがあった~

今回番組で紹介されていた『帆』

今の私はこの『帆』の切実な寂しさが突き刺さります。


土木工学を学び建設コンサルタントで働いていた私。当時土木業界で技術職として働く女性は増えつつありましたがまだまだ。

男性からは「女と一緒はめんどくさい」と忌み嫌われたり。事務職の女性からは「女のクセに」と陰口とも表口とも言えぬ悪口を言われ。

それでも「クソ!負けてたまるか!」と踏ん張って現場に出続ける。

作業服にヘルメット、重たい安全帯と安全靴。1人だって、九州にだって四国にだって1人でハイエースを運転して出張に。東京、埼玉、千葉には重たいモニタリングの機材を手に持って搭乗。

帰りの新幹線。缶ビールと折詰寿司。「プシュッッ」ビールを開ける音が響く。

周りからの冷ややかな目。

「何で女はやっちゃダメなんだ!何で女に産まれたんだ・・・」と涙が込み上げて来るのをビールで流し込む。


「結婚なんかくだらない」「結婚なんかするもんか」と思っていた私が、旦那さんに出会い名字が変わり母にもなって。


幸せ?

とても幸せ。なのに、何だか社会に取り残されたような、あれ?私の幸せって、目標ってここなんだっけ?

可愛い可愛い子ども達。目を離さず日々の生活の中の幸せ

ちょいと渚の貝がら見た間に、

私のキャリアはどうなるの?確かにこの手にあった筈なのに。あんなに歯を食いしばって積み重ねた私の努力はどうなるの?

あの帆はどっかへ
行ってしまった。                                こんなふうに
行ってしまった、
誰かがあった~
何かがあった~


みすゞの生きた時代は女性の地位は低かった。

現代、女性が社会で活躍することは許された。

でも子育てと仕事の両立はなかなか難しい。

生き方を選択できる現代。選択すると言うことは自分で責任をとるということ。

「あなたが産むと決めたんでしょ」

そんな社会にしたくない。

子育ては社会でするもの。産まれて来た子ども達も。お母さんもお父さんも。おじいちゃんもおばあちゃんも。ご近所さんも。みんなで。幸せに。


大人になった私。もう一度金子みすゞの晩年の詩集『さみしい王女』も読んでみようと思います。26才で自死を選んだみすゞに想いを馳せて。

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