伝統がなくなっていくこと
着物屋さんに行った。
お母さんから受け継いだ振袖の傷を治しに。
でも、昔のいい着物に使われてる技術を復元できる職人はもういないらしい。
いまは全部インクジェットで柄を出していて、昔の絞りとか手縫いとかをできる人がいない。
だから、昔のいい着物はもう修繕できない。
職人さんがいないから。
技術がないから。
「そんなんできる人もうおらん。」
この言葉を小一時間の間に何度聞いただろうか。
着物屋さんのおじいさんと助手の若が、いや、いける、いけない、と言い合っていることの悲しさ。
誰ももう着物を作らない。
本業にできないから。
儲からないから。
生きていけないから。
だれもきれいな着物を着ないから。
昔なら、日常的に着物を着ていた頃なら、着物職人なんて山のようにいただろう。
でも今はどうだろう。
芸能人が新年番組で少し着るか、成人式に若者が一日限りできるか、それぐらいである。
最近観光地では着物レンタルなんかが人気だが、レンタルでいい着物を出しているところはなく、全部インクジェットという空虚な響きの機会によって作られた安着物である。
悲しい。
グローバル化の中で、民族がなくなって、文化がなくなって、伝統がなくなって何が悪いと思ってたけど、伝統がなくなることは悲しいこと。
美しいものが作れなくなること。
安さと速さと便利さに芸術が取って代わられること。
悲しい。
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