【連載小説】あなたに出逢いたかった #35
母屋に戻ると夏希は台所で年越し蕎麦の支度を手伝っているところだった。祖母が海老や野菜の天麩羅を揚げている。年寄りは遅くまで起きているのが辛いらしく、夕食のタイミングで食べるという。はしゃぎすぎて疲れ、客間で寝ていた蓮も起きてきた。
そうして祖父も揃い、家族6人が介した。自分の両親を前にすると遼太郎の表情が幾分固くなる。
湯気を立てた蕎麦の器が目の前に置かれる。梨沙は魚介は嫌いだが海老の天ぷらは別だった。ただ天ぷらが汁に浸かってしんなりとするのが嫌いで、蕎麦の上からすぐに皿に