ぼやけた物語の主人公。

きれいな洋服を着て、
大きなお城のような家に住んで
王子様のような旦那様がいる。

小さい頃は、そんな物語を思い描いていた。

少し大人になってからは、

スポットライトを浴びながら
バリバリ仕事をして
有名になって、たくさんお金を稼ぐ。

そんな物語を思い描いた。


そうやって、何度も思い描いたいくつもの素敵な物語。だけど、その物語の主人公の顔は、なぜかいつもぼやけていた。

***

今、私が生きる毎日は、あの頃思い描いたものとはずいぶんとかけ離れていて、その差に愕然とすることもある。私の生きる日々は、ドラマチックな出会いも、胸が締め付けられるような別れも、スリリングな事件も、何1つ起きない。誰かに伝えるには、あまりにも平凡すぎる日々。

そんな日々でも、ちゃんと幸せを感じることができるようになった。とは言え、もちろん、上手くいかないことだって山ほどある。気分が乗らない日なんてしょっちゅうだ。けど、それも全部含めて、それが私の人生で、昔よりずっとそんな毎日が愛おしい。

平凡で、なんてことない日々。

そんな日々を生きる
地味で面白みのない主人公として
好き勝手にこの物語を
演じてみるのも悪くないのかもしれない。


「つまらない」と嘆きながら生きていくより、そんな自分に酔いしれながら生きていく方がよっぽど、楽しそうな気がする。

だから今日もまた、私は私だけの物語を演じていく。そうやってつくり上げていくこの物語の主人公の顔は、大丈夫。

ちゃんと私だ。

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