見出し画像

ほとんどアマチュアのライターが120000字の本を25日で書いた信じがたい話

本の執筆依頼が来た!でも、本の書き方がわからない!

私は肩書としては相撲ライター・スポーツライターを名乗っているが、元を正すとスポーツナビブログで「幕下相撲の知られざる世界」というニッチなブログを運営していたことが土台にあるアマチュア上がりの兼業ライターである。

そのため特に誰に記事の書き方を教わったわけでもなければ大学でも文学部などに在籍していたわけでもない。ブログのPVがどうすれば伸びるか?という試行錯誤をしている間に気が付いたら仕事をいただけるようになった実に運のよい人間だ。

そんな私が昨年の正月にいきなり光文社というどでかい出版社から本を書かないかと提案を受けた。自分にとってはこの上ないチャンスなので二つ返事でやると答えたわけだが、その直後に私は激しく後悔した。

何しろ私は、本の書き方など一つも分からないのだ。

100000字を埋めるという無理難題

光文社の担当の方からの話によると本に必要なのはおよそ100000字だという。ブログやウェブ記事しか書いたことのない私は、3000字程度の記事を書くことはあってもそれを大きく上回る規模で書くことはこれまで無かった。

つまり、今までとは競技が違うのだ。
普段行っているのが400メートル走だとすれば、本を書くのはマラソンのようなものだ。
走るということに変わりないが、まるっきり性質が異なる。

さぁどうする?
私は悩んだ。

今更断ることもできないし、このチャンスをみすみすフイにしたくもない。だが、本を書くノウハウはどこにもない。この状況でイチから学び直すのか?締め切りは半年から1年後と言われているのに悠長なことを言っている訳にもいかない。

悩んだ挙句、私はとりあえず先方の要求を整理した。

・相撲に関する入門書を作ってほしい
・決して相撲の成り立ちとかではなく、今の大相撲のシーンを解説するような本にしたい
・字数は100000字程度

ここから分かったのは、案外シンプルだということだ。
そして、私のライターの特徴を整理した。

自分の強みを整理し、何ができるか考える

・3000字の範囲で起承転結を付けて興味を持続させる記事が得意
・大相撲についてデータから新たな見方が提示できる
・平易な言葉でジャンルに詳しくない人にも話を理解させられる

ここから分かったのは、先方の要求に関しては上の二つを達成することは可能だということだ。データをふんだんに使いながら、相撲の初心者にもわかりやすく今の相撲を説明することであればストロングポイントをフル活用すれば出来る。いや、むしろこの企画は誰よりも私向きなのかもしれない。そんな風にさえ思った。

ただ最大の問題はやはり、100000字という高い山だ。
これをどう乗り越えれば良いのか。

私はここで考えた。
3000字の記事を、30~40本書けばいいのではないか?
と。

どうせ内容が入門書なのだから、様々なセクションが出てくる。初心者が疑問に思うようなことを色々と質問してもらい、私が3000字程度で回答する。そして、その質問の内容を俯瞰すると今の相撲シーンに満遍なく触れていくような構成にすればいい。

そうと決めると私は編集の方に大相撲に関する質問を募り、一つ一つ回答となる記事を書き上げた。どこで自分が枯れるか分からないので、とりあえず走れるところまで走ろう。恐らくある程度のところまでは書けるが、どこかで限界が来るかもしれない。その時は時間を掛けて書けばいい。

最初は1週間に2本の記事を書く目標で始めたのだが、2日に1本のペースが次第に1日1本になり、週末には1日に2~3本書くという有様だった。勿論兼業ライターなのでITの仕事はしながらである。

最初の記事を書いてから25日後、全ての記事が完成した。
気が付けば私は120000字書いていた。

そして完成したのがこちらである。

出来ないことは出来ない

本を書き終えて思ったこと。
大事なのは、本のコンセプトに自分が応えられるか?
そして、自分の能力で書き上げる方法を模索することの重要性だった。

今、この記事を読んでいる方の中で漠然と本を書きたいと思っている方も居ると思う。ただ、どんなにありがたい話が舞い込んできても自分に出来ることと出来ないことは残念ながら存在する。だからこそ考えてほしいのは、本を書くことが目的ではなく何を伝えたいのかが大事だということである。本を書くというのは手段の一つなのだ。

出版社から提案をされることもあれば自分が提案をすることもあるが、先方の求めるものと自分に出来ることをすり合わせ、自分に出来る形で進めていく。私はそれが出来たからこそ「スポーツとしての相撲論」という本を想定外の速度で書き上げることが出来たのだと思う。恐らくそれは、私の特性を理解したうえで執筆を提案してきた光文社の編集者の方の辣腕によるところが大きかったのである。

「スポーツとしての相撲論」発売後、とある出版社から白鵬引退に関する本を執筆してほしいと依頼を受けた。私はここで白鵬のすばらしさについてデータの側面から語ることは出来るがどうするか?と提案をした。先方としては知られざるエピソードを盛り込んだ本を期待したのかもしれないが、そこは私の強みには無い部分だ。

結局この話はとん挫したが、私は後悔していない。
出来ないことは出来ないからだ。

次回予告:「自分らしく生きる」ことの罠に好きを仕事にした後で気づいた話

「好きなことでお金がもらえるってうらやましいですね」

そう言ってくれることはありがたいし、今の言葉で言うところの「自分らしく生きる」ってことだとは思う。

でも、好きなことを書いて、自分らしく生きてみると実は充実感もあるけど辛いことも普通の仕事よりも多かったりする。

それを皆さんに知ってほしい。

ここまでご覧いただき、ありがとうございました!

もし今回の記事が面白かった場合はNote編集部の方に以下のフォームからお知らせいただけると嬉しいです!

クリエイターの推薦フォームはこちら。


この記事が参加している募集

#スキしてみて

525,870件

#やってみた

36,935件

よろしければサポートお願いいたします! 皆様のために今後使わせていただきます!