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短編

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まくらごみ創作の短編をまとめています。
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2018年7月の記事一覧

母の心臓

母の心臓

ある所に見事な黄金の髪をもつ女がいた。
女の瞳は陽光のように輝いていた。毎日を一人で過ごす穏やかな女性だった。
ある日その女は怪物と縁づいた。
やがて二人が交わって生まれた子供は勿論異形だった。
大きな耳と金色の毛が特徴的な、小さな小さな子だ。
女と怪物が暫くして別れた時、この子は母の方について行った。

女はあまり体が健やかでなく、次第に弱って行った。
息子は大変心配したが、母の方も息子に心配を

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病気の国とねぼすけの巨人

病気の国とねぼすけの巨人

昔むかし、ある所に、とある国がありました。
その国にはとても悪い病が流行っていました。
その病を患ったら、たとえどんな人だろうと、倒れてそのまま数日寝込んで死んでしまいます。
偉い人や頭のいい医者は思いました。
「このままではこの国は病に満たされ、死によってつぶれてしまうだろう」
国民たちの不安は募るばかりです。

その国のとある村には怖い言い伝えがありました。
山奥の廃教会には怪物が現れると。事

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愛娘と夜と冬の王

愛娘と夜と冬の王

凍える厳しい冬の町。しんしんと雪が降りそそぐ。
雪で冷えた石の道を歩く女の細い足が二本。血の気の失せた肌は風が吹くたびに白くなっていく。
少しでも温まるために、女は家と家にはさまれた路地へと逃げ込む。
疲れきってそこに座り込む。茶色の薄汚れた布は、彼女の体を冷たい石畳から守るには少しだけ薄すかった。
女の歳は30程。
その眼から生気あふれる光を少しずつ風がさらっていく。
時計塔から20時を伝える鐘

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