枕五味 makuragomi

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枕五味 makuragomi

自作の漫画や小説を完成した端からうpっていきます。いいねなど大変励みになります。 POTOFU: https://t.co/tzl71m2I3h

マガジン

  • 短編

    まくらごみ創作の短編をまとめています。

  • 仕立て屋にて

    創作の小説「仕立て屋にて」のまとめです。シャンクという人間のもとに、ボダイというおぞましい怪物がやってきます。人外と人間の奇妙な同棲を綴った小説です。

最近の記事

生存限界汚染領域のキミ(下)

上編 ようやく二度目の調査だ。 前回から5日も経っていた。内容はまたサンプルの採取だ。前に採ったサンプルはもうほとんど使い切ってしまったらしい。それが早いのか遅いのか素人の私にはわからないが、とにかくまたあの場所に行ける。 他のメンバーは襲われたメンバーのことを考えるとだいぶ気乗りではないようだった。 一方私の方はというと、領域内への恐怖よりもキミとの再会に対する楽しみの方が心の中を大きく締めていた。 夜が来るたびに思考を巡らせていた。映像に収められた惨劇の原因になった怪物

    • 生存限界汚染領域のキミ(上)

      文献での初出は50年くらい前。口伝えならおよそ100年以上前から存在を認識されていたらしいことが窺える。 小さな田舎の村を囲む山の一つ。生い茂る草をかき分けながら険しい道を進んでいくと、白い靄のような物にやがて囲まれる。そのまま進んで行くと、そこにたどり着く。迷い込んだら二度と戻れない。 生存限界汚染領域。 そう呼び始めたのは私のチームメイトだ。ふざけた名前だがしっくりきた。 それはまるで山の中にもう一つ別の山の入り口がそこから先にあるとでも言わんばかりの不可解な現象。極端に

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        僕と迷子と遊園地

        • 運命は匣の中

          10年前。 この日からその日は俺の誕生日になった。 空はどんよりとした重苦しい雲に覆われ、ちらちらと雪が静かに地上に降り注がれていた。 虚ろな目でその時の俺はその光景を眺めていた。 この身を包むのはゴミ捨て場で拾った厚手の大人用のコートだ。身長が大の大人の半分くらいしかなく、骨に皮が付いた程度の身体を持つ当時の俺にはこの環境は厳しすぎる。 何処ぞの使われてない納屋でこそこそ隠れて過ごしていたが、納屋の主人に見つかってしまい追い出されてしまった。それだけで終わっていたら只の不幸

        生存限界汚染領域のキミ(下)

        マガジン

        • 短編
          14本
        • 仕立て屋にて
          5本

        記事

          瓶詰めの兄弟

          「れっきとした君の兄弟だよ」 おじさんはそう言って瓶の中でホルマリンに浸けられた肉塊を指差して言った。 俺は外で弟たちとボール遊びをしていたんだけれど、次男が取り損ねたボールが小さな窓からこの薄暗くて埃っぽい部屋の中に吸い込まれてしまったので、怖がりな次男に代わって仕方なく俺が窓から侵入してボールだけ取り戻そうとしたんだ。 そこは古い病院の中で、木製の棚に、動物の頭蓋骨や瓶詰めの内臓など色んなものが置いてある「資料室」という場所だった。 ボールだけ取って戻ろうとしたが、不意に

          瓶詰めの兄弟

          ちいさなコペット・びぎにんぐ(前編)

          雨上がりの夜の森に、赤ん坊の泣き声が響き渡っていた。 闇が広がる木々の間を男は決死の思いで森の中を走っていた。一刻を争う事態だと思っていたからだ。湿った空気の全身に浴びて、散らばっている枝葉を乱暴に踏み荒らし、肺が体の中で激しく伸縮を繰り返している。苦しくて仕方ないが、それでも脚を進ませる。早く赤ん坊の元へ行かねばならない。雨が止んだ今、飢えた獣がきっと赤ん坊の肉を求め、泣き声に向かって走っているに違いないと考えたからだ。尊い命を助けださねばならぬという使命感に燃えた魂を内に

          ちいさなコペット・びぎにんぐ(前編)

          眠りの最中で

          きっと永い時間が経ったに違いない。 その間ずっと私はあいつの側にいた。 あいつもずっと私の側にいた。 澄み切った空気で町が満たされている。雲一つない晴天の早朝。 優しい白の朝日を浴びた、風に少しだけ湿気を感じる小さな通りで、あちこちから朝の生活の音が立ち始める。 水の流れる音、食器の音、野菜を切る音、焼けるパンの香り、眠そうな声、階段を降りる足音。 それぞれの家庭でそれぞれの暮らしが今日も始まるのだろう。 大きな通りでは、個性的な外観の店に取り付けられた大きなガラス窓から中

          眠りの最中で

          深い底へと

          閉められた窓たちがガタガタと震え、どこからか隙間風が入り込み、家の中では笛のような音が響いている。風が強く、雲の多い晴れの日である。それなりに古い家なので、若干の隙間風などは仕方がない。 昨日の疲れのせいか、体が重い。起き上がりたくない。 今日の仕事は休みだ。いつもより起床を遅くするもしないも好きにしていい。私はしばらくの間ベッドの上で風の音に耳を傾けながら、天井を眺めていた。 昨晩の出来事が夢のようだ。 月明かりに照らされた寺院と川、初めて出会った異国の景色たち。 あの不思

          異国の景色から

          ボダイがこの家に来て四日目の朝。空から落ちてくる水滴達が外の道を叩く音が窓の向こうから響いてくる。雨か。 雨の日は冷えるから、普段より一層布団が暖かく感じられて、ベッドから出たくない。しかし仕事があるからそうも思ってられない。どっちを取るかと言われたら、生活の為に後者を取るしか無い。重たい瞼を嫌々あげると、目の前にボダイが見えた。 ボダイは私の寝室に入り込んできていた。あの歪で長い巨体が私のすぐ脇にあった。禍々しい目は爛々と輝き、私の事を観察しているようだ。 「おはようござ

          異国の景色から

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          コッペリアの心臓

          コッペリアの心臓

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          月の木馬

          これは昔のお話です。 ある国に玩具職人の男が居ました。 男は玩具で子供の笑顔を作る仕事に誇りを持っています。しかし、新しい玩具の木馬に、もう一工夫欲しいと考えウンウンと悩んでいました。 朝から夜まで悩みます。立派な満月の夜も、月を眺めながら悩んでおりました。 不意に、月から欠けらが数個落ちてきました。 職人の男は大変驚きました。だって月か何かが落ちてくるだなんて初めてみる光景だったからです。 考えるのをやめて、職人は欠けらが落ちたところまで急ぎます。 そこにはキラキラと月と同

          海に歌う鬼

          ある満月の日の夜、僕を乗せた小舟は小さな岩礁にのりあげていた。 僕は親と喧嘩し、躍起になって舟を沖に出したが、岩にぶつかったせいで舟に穴が空いてしまい、乗ることができず、また親に助けを求めるのも憚られ、独りぼっちで夜を過ごしていた。 その日は満月で、どんどんと海の水位が上がって行く。僕は狼狽えていると、自分のいる場所からすぐ裏手に誰かの気配を感じた。 ポロロロンと艶やかな弦楽器の音も聴こえてきた。 好奇心もあったが何よりも心細かった僕は、音のした方をつい覗き見た。 そこには女

          2019年 新年のご挨拶

          2019年 新年のご挨拶

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          こどもたちの冒険

          こどもたちの冒険

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          少女は指を刺す

          ある小さな村での出来事です。 村の中央には井戸があり、たくさんの人が水の恩恵に感謝しながら慎ましく生活していました。 その井戸の側に、ある日突然少女が現れました。 汚れた黒い外套に身を包み、ボロボロの黒いフードが落とす暗い影に隠されて顔は見えません。 少女はどこかで拾ったような一抱えくらいあるガラスの瓶と、文字の書いてある木の板きれを持っていました。そしてその板切れを、まるでお店の看板のように抱えていたのです。 「知恵を1つ 5シリング 」 看板にはそう書いてありました。 花

          少女は指を刺す

          怪物ルミルコーの伝説

          昔々あるところに、とても貧しい村がありました。 長く雨が降らず、作物も井戸も枯れてしまい、家畜にやる餌も、子供たちにあげるご飯もついにつきてしまいました。 このままでは村人はみんな飢えて死んでしまいます。 村長は空にむかって願いを叫びました。 「ああ、誰でもいい、どうかこの貧しい村を救ってください。お礼だったらなんでもしますから。」 すると空から怪物が現れました。 「聞いたぞ、聴いたぞ。私の名前はルミルコー。わたしがこの村を救ってやろう。ただしそのかわり、私の願いも叶えても

          怪物ルミルコーの伝説