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同じ失敗をしたあいつが、ケロリとしている理由

「"強い人”ほどレジリエンスが必要な理由」では、レジリエンスの概念についてまとめました。ここからは、早速「スキル」のトレーニングを始めていきましょう。

今回の目標は、「感情/行動が生じるメカニズム」を理解する事です。自身の感情や行動が湧き上がる仕組みを客観的に理解することは、自分をコントロールする上で非常に役に立ちます。


あなたのその感情はどこから生まれるか

「得意先からお叱りを受けた。対面に立っていたのは、自分ともう一人の同僚。自分は焦ってフォローの方法を検討しているのに、同僚はケロリと飲み会の予定を立てている」…こんなギャップに驚いた経験はないでしょうか。

同じ出来事に直面しても、人がとる反応というのは驚くほど異なります。
その理由は、「認知」と「感情」の一連の連なりにありました。

もう少し具体的な例を見てみましょう。
「仕事から疲れて帰ると、パートナーに頼んでいたはずのお皿洗いが終わっておらず、流しに放置されているのを見つけた」というシーンを想像してみて下さい。あなたはどのような反応をするでしょうか。

おそらく「頭にきた!またお皿を放置している。こうやっていつも嫌なことを後回しにするんだから!」…こんな考えが頭をよぎるのではないでしょうか。(少なくとも私は、今この状況を想像して少しだけ不愉快な気持ちになっています)

あなたにとって、湧き上がるその怒りの理由は明確だと思うかもしれません。「あの人が、お皿洗いを(また)サボったから怒っている」と。
しかし、この怒りの理由についての説明は、正しくありません。

解像度をあげてみると、あなたのその怒りは「パートナーがお皿洗いを(また)サボったから」生じたのではなく、「パートナーがお皿を洗ってくれないことで、自分の権利が侵害された / 自分のお願いが軽んじられた」と解釈した為に怒りがこみ上げたのです。つまり「お皿を洗っていない」という行為そのものではなく、その行為が何を意味するか、今回でいえば「私のお願いが軽んじられている」という解釈に対して怒りが湧き起こったのです。

これが、同じ出来事を経験しても、人々の反応がそれぞれ異なる理由です。同じ経験をしても、それをどの様に解釈するかが人によって異なる為に、経験に対する反応(感情や行動)に大きな違いが生まれてくるのです。


自分の反応の「本当の理由」を知るーABC分析

前述の内容を体系的にまとめると、以下の様になります。

<ABC分析の構造>
出来事(A)→ 考えかた(B)→ 感情/行動(C)

私たちは様々な「(困難な)出来事=Adversity(A)」を経験します。それは生きて行く上で避けようのない事実です。その出来事は、あなたの「考え方/認知の仕方=Brief(B)」によって解釈され、結果様々な「感情や行動=Consequense(C)」の表出に帰結します。〔カレン・ライビッチ / ペンシルベニア大学〕

直感的な感覚では、あたかも「出来事(A)」が自分の「感情や行動(C)」を直接生じさせている様に感じられるかもしれません。しかし非常に面白い発見ですが、実のところ私たちの「感情や行動(C)」は出来事に対する自分なりの解釈、つまり「考え方/認知の仕方(B)」によって生じているのです。〔アーロンベック/ペンシルベニア大学〕

先ほどの例で言えば、「パートナーがお皿を洗っていない」という出来事(A)に対して「怒り」(C)を感じた人は、「あの人はまたサボって、私の自由な時間を削っている」(B)という解釈に対して怒りを感じています。一方、同じ状況(A = パートナーがお皿を洗っていない)に対して、「安堵や喜び」(C)を噛みしめる人もいるかもしれません。もしかすると、そのパートナーはスランプに陥った小説家で、お皿を洗っていないという事は、彼が次回作の世界にようやく没頭できたことを暗示している(B)のかもしれません。

「"強い人”ほどレジリエンスが必要な理由」の最後に、「私が生きる世界は、私が作り出している」という発見について書いた理由はまさにここにあります。

私たちは、「どんな世界に生きているか」という出来事そのものに影響されているのではなく、その世界をどの様に捉え、解釈しているかという「自身の認知」によって、自分が生きる世界を形作っているのです。

このABC分析は、レジリエンスを高める上で欠かせないフレームです。次回は「考え方/認知の仕方(Brief)」について、さらに理解を深めていきます。


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