まこっつ

文学者。文学/映画/アート/日本ハムファイターズ/批評/CoSTEP/アニメ/マンガ/…

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文学者。文学/映画/アート/日本ハムファイターズ/批評/CoSTEP/アニメ/マンガ/札幌オオドオリ大学。『ぼく学級会の議長になった』が好評発売中。

最近の記事

東京都美術館「印象派 モネからアメリカへ」&早稲田界隈古書店へ

所用で東京に行ってきたので、いろいろ巡ってきた。 上野の東京都美術館の「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が大変面白かった。印象派で妙な既視感を感じたが、東京都美術館で以前に「新印象派―光と色のドラマ―」を鑑賞したことが強く「印象」に残っていて、それがつい数年前のような感覚だったので、いつなのか調べてみると2015年の1月~3月で、もう9年も経つことになる。 なんという月日の早さだろうか! 今回の印象派展は、 ヨーロッパのみならず、アメリカや日本の画家も展示さ

    • 「私たちのエコロジー 地球という惑星を生きるために」六本木ヒルズ森美術館で見てきたよ

      所用で東京に出かけた際に、六本木ヒルズの森美術館で開催中の「私たちのエコロジー 地球という惑星を生きるために」を鑑賞した。 アートは現代社会に一石を投ずる行為でもある。 日本美術や西洋美術の古典的名作や芸術至上主義的な展覧会ばかり鑑賞していると、アートと現代社会の接点やアートの自由度、作者の主張といった要素が見過ごされてしまうこともある。それが悪いわけではないし、むしろモネやマティスといった現在日本で特別展が行われている作品も大好きなのだが、「エコロジー」というテーマであま

      • 2023年、動画で紹介した本を振り返る動画

        2023年も1月から一ヶ月で2冊ずつ、合計23冊(12月は1冊のみ)の今読むべき新書や学術書を、作文教室ゆうの藤本研一さんと一緒に紹介してきた。動画で本を紹介するきっかけは、あまりにも読みたい本や読むべき本が多すぎて、でも一人だけでなく一緒に読む人がいるとなお楽しいし、どうせなら単に読むだけでなく、動画で感想を公開したらいいのでは、というアイデアが出た。それ以上に、一種の「強制圧力」のようなプレッシャーをかけることで、ムリヤリ読書量を増やそうという魂胆である。 そんなわけで

        • 奇跡の復刊 大江健三郎同時代論集

          大江健三郎の逝去によって、大江文学が続々と復刊されている。ジュンク堂では大江健三郎追悼コーナーがセッティングされ、新潮文庫や講談社文芸文庫、講談社文庫で出版された作品が多数平積みされている。残念ながら全ての作品が復刊されたわけではないため、今なお入手困難な作品も少なくない。 しかしながら、まさか復刊するとは思わなかった作品が7月から復刊して順次刊行されている。 それが『大江健三郎同時代論集』全10巻(岩波書店)だ。 この復刊には心底大変驚いた。 数年前に地元の古書店に

        東京都美術館「印象派 モネからアメリカへ」&早稲田界隈古書店へ

          「心と体を傷つけられて亡くなった天国の子供たちのメッセージ展」を見て

          9月中旬に東京に行く機会があり、たまたまネットのニュースで目にした「心と体を傷つけられて亡くなった天国の子供たちのメッセージ展」を東京都人権プラザにて見てきた。 いじめ等により心と体を傷つけられて亡くなった子供たちの写真、子供たちが社会に投げかけた言葉、家族から子供へのメッセージを集めたパネルが展示されている。 こんなにも胸が苦しくなり、辛い気持ちになる展示は過去に経験がない。 明日を生きる気力さえわかなくなり、自らの命を絶つ行為に踏み切ることが、一体どれくらいの恐ろしさ

          「心と体を傷つけられて亡くなった天国の子供たちのメッセージ展」を見て

          パールモンドールと札幌駅ESTAが同日閉店

          当たり前のように存在した店が 閉店する。 なくなるなんて想像もしたこともない空間が消滅する。 なじみだった店が突然閉店したり、毎日のように通っていた空間がなくなってしまう。 そんな喪失感をここ一、二年でなんども味わった。 ここに来てさらに追い打ちをかけるような閉店のニュースが二つ飛び込んできた。 一つは老舗洋菓子店、パールモンドール南6条店の閉店である。 閉店を知ったのはキッドマン北海道探索チャンネルの閉店情報の動画だ。 最初に動画を見たときは耳を疑った。 ちなみに

          パールモンドールと札幌駅ESTAが同日閉店

          街の書店が次々と姿を消していく 名古屋 ちくさ正文館書店が閉店

          毎月どこかの書店が閉店したというニュースを耳にするようになって久しいが、とりわけショックだったのは、名古屋の名物書店、ちくさ正文館書店が7月31日で閉店することだ。東海地方で随一の品揃えを誇る名店であり、これほど充実した棚を作れる本屋は全国でも希有だろう。 yahooにもちくさ正文館書店閉店のニュースがアップされている。 最初にちくさ正文館書店を訪れたのは、本当に偶然以外なにものでもない。所用で名古屋に行ったときに、今池駅近くのカプセルホテルに宿を取ったので、JRの千種駅

          街の書店が次々と姿を消していく 名古屋 ちくさ正文館書店が閉店

          初夏の稚内へ  クラーク書店の閉店と日本最北端の旅

          ふと初夏の一番日の長い6月の中旬に北の方面へ行きたくなり、稚内~宗谷岬を巡ってきた。JR北海道の特急宗谷にも乗ってみたかったというのもある。広い広い北海道。札幌駅を朝7時半に出発して、到着が12時42分。およそ5時間12分。読書をしたり、ノートにいろいろ記して心を整理したりといった時間を確保できるのは貴重だ。あいにくの曇り空で、稚内駅に到着したら雨が降降っていた。 稚内に行くことを決めた後に、日本最北端の書店、クラーク書店が閉店することを知った。もともと稚内に行ったら絶対に

          初夏の稚内へ  クラーク書店の閉店と日本最北端の旅

          物価高にめげずに本を買うということ

          物価の値上がりが止まらない。本も高くなってきたのをひしひしと感じる。かつて文庫で1000円を超えるのは,よほど厚い本や。ちくま学芸文庫のような海外の学術翻訳本、講談社文芸文庫など、一部に限られていたものだ。今ではすこし厚い新書や、海外文学の翻訳文庫だとあたりまえのように1000円を突破する。2000円に近い文庫本もある。消費税も10%上乗せされるので、値段はさらに上がることになる。青土社の『ユリイカ』や文芸誌、専門分野の雑誌も軒並み値上がりした。新書を700円台で買えた頃が懐

          物価高にめげずに本を買うということ

          続・追悼、大江健三郎

          前回、大江健三郎先生の追悼記事を書いたら、予想を遙かに超える反響があった。 noteの界隈にも、大江健三郎のファンが多いことが想像される。noteの書き手や読者にとっても、大江文学の影響を無視するわけにはいかないだろう。 2023年5月号の各文芸誌(『新潮』『すばる』『群像』『文學界』)は、特集で「追悼大江健三郎」を掲げていた。「週刊読書人」や「図書新聞」も大江健三郎特集を組んでいた。中村文則や平野啓一郎、蓮實重彦のように、複数の文芸誌に追悼文を送っている作家や批評家もお

          続・追悼、大江健三郎

          追悼、大江健三郎

          作家の大江健三郎先生が老衰のため3月3日に亡くなられた。年齢的にそう遠くない将来、大江先生が世を去る日が来るだろうと覚悟はしていたが、思った以上に早かった。大江先生が亡くなられたという報道が成された13日から2週間ほど経ったが、それでもショックというか、大江先生がいない世界にこれからどう向き合ったらいいのか、今もまだわからない。大きな羅針盤であり、精神的支柱であった大きな存在がこの世にもういないという事実は大変悲しく、大江先生の代わりになる人は誰もいないという事実に打ちひしが

          追悼、大江健三郎

          名著を読み解く#47 小松理虔『新地方論』(光文社新書)居場所としての地方

          今回の「名著を読み解く」は小松理虔『新地法論』(光文社新書)である。 小松理虔は彼の故郷であるいわき市の小名浜を拠点に様々な活動しているローカルアクティビスト。本書は福島県いわき市の小名浜での暮らしをもとに考えた10のテーマ(観光、居場所、政治、メディア、アート、スポーツetc)で本書は構成されている。地方か都会かという二項論に陥ることなく、いわき市に住みながら、都会と地方の両方を「いいと取り」したかのような活動のルポルタージュであり、「ぼくが新たに自分の目線で書いた地方論

          名著を読み解く#47 小松理虔『新地方論』(光文社新書)居場所としての地方

          名著を読み解く#46 アニメが精神療法に役立つ パントー・フランチェスコ『アニメ療法 心をケアするエンターテイメント』(光文社新書) 

          「名著を読み解く」動画がいつの間にか46本になっており、このnoteでも全て紹介していこうと思ったのだが、あまりにも大変でちょっと追いつけなくなってしまった。そのため、これからはリアルタイムで更新に対応するべく、直近の動画をnoteで更新していくことにした。 アニメがメンタルヘルスに役立つ アニメを観ることがトラウマから回復やメンタルヘルスに大変役に立つ!?そんな仮説を元にアニメの新しい一面に光を当て、新しい鑑賞を提案しているのが『アニメ療法』(光文社新書)である。 筆者

          名著を読み解く#46 アニメが精神療法に役立つ パントー・フランチェスコ『アニメ療法 心をケアするエンターテイメント』(光文社新書) 

          「アニメージュとジブリ展」に行ってきた

          2023年一発目の展覧会は、松屋銀座にて開催された「アニメージュとジブリ展」である。たまたま、どこかのラジオで、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫がゲスト出演していた番組を耳にして、この展覧会を知ったという偶然があり、所用で広島に出かけた帰りに東京に立ち寄り、銀座に行ってきた。あいにくの雨模様であったが、そのせいか銀座は人も少なく、密を避けることもできた。 雑誌『アニメージュ』といえば、今も発行されている徳間書店のアニメ雑誌である。創刊は1978年。スタジオジブリの鈴木

          「アニメージュとジブリ展」に行ってきた

          2022年の学術イベント、展覧会を振り返る

          今年もコロナ禍が続き、安心した外出ができるというわけではなかったが、そんな中でも学術的なイベントに参加したり、東京に展覧会を見に行った。実際に見た展覧会のいくつかはnoteにも書いたが、書き漏れたのもあるので、この機会に記しておこうと思う。 「アート×炭鉱」 1月は札幌創世スクウェアで開催された、バトンという学術イベント3回目、テーマは「アート×炭鉱」である。北大の橋本努先生と、現役アーティストで全国の炭鉱芸術をリサーチする研究者でもある国盛麻衣佳のトークだ。北海道はかつ

          2022年の学術イベント、展覧会を振り返る

          古本らくだやの閉店から

          札幌の地下鉄円山公園駅近くの古本らくだやが昨日2022年11月末日をもって閉店した。閉店を知ったのは、10月下旬にたまたま通りかかったときで、久しぶりに立ち寄ろうと店の入り口に到着したら、店外の壁には閉店セールの文字が貼り付けられていた。 にわかには信じられなかった。 どんな店もいつかは閉店する日が来るものだが、らくだやが閉店するとは全く想像もしなかった。今年は札幌弘栄堂書店が3点全て閉店し、紀伊國屋書店オーロラタウン店、TSUTAYAの新道東店と琴似店が閉店するなど、書

          古本らくだやの閉店から