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東京都美術館「印象派 モネからアメリカへ」&早稲田界隈古書店へ

所用で東京に行ってきたので、いろいろ巡ってきた。
上野の東京都美術館の「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が大変面白かった。印象派で妙な既視感を感じたが、東京都美術館で以前に「新印象派―光と色のドラマ―」を鑑賞したことが強く「印象」に残っていて、それがつい数年前のような感覚だったので、いつなのか調べてみると2015年の1月~3月で、もう9年も経つことになる。
なんという月日の早さだろうか!

今回の印象派展は、 ヨーロッパのみならず、アメリカや日本の画家も展示されており、ヨーロッパ一辺倒になりがちな印象派展でも、多様性のある展示となっている。


モネを中心に、カミーユ=コロー、クールベ、セザンヌ、ルノワール、シニャックといったおなじみのメンツが数作品ずつで、メインともいえるモネは「睡蓮」を含めて二作品である。日本人では、黒田清輝、久米桂一郎、太田喜二郎、児島虎次郎、斎藤豊作、中沢弘光といった画家の作品が展示されている。

一方、アメリカはジョゼフ・H・グリーンウッド、チャイルド・ハッサムなど、初めて見る作品も多数ある。アメリカの印象派作家の作品を見ること自体、極めて貴重な機会で、日本初公開の作品も少なくない。

19世紀以前のヨーロッパの風景画を見ると、このような風景はコンクリートに覆われてしまってもう存在しないのだろうかと思ってしまう。近代文明によって自然は壊滅されて牧歌的な森林と共存する村の風景は、もはや絵画の中にしか存在しないのかもしれない。
そんなことを思ったものだ。

コンスタン・トロワイヨン「リンゴ採り、ノルマンディー」


圧巻だったのは、トマス・コール「アルノ川の眺望、フィレンツェ近郊」である。

トマス・コール「アルノ川の眺望、フィレンツェ近郊」

午後から夕方にかけての時間と思われる、白光色の太陽の周辺がわずかにピンクがかった、淡い色彩の夕日が山に差しかかっており、空全体が太陽から遠ざかるにつれて青みを帯びたグラデーションに覆われている。川面は空の色彩を鏡のごとく反射させて輝いている。川の両岸に立つ石造りの住宅やタワーが自然と文明の対比がひっそりと、小さく描かれている。あまりにも美しかったので、ショップで絵はがきも購入したが、残念ながら原画の光の艶やかな輝きは損なわれていると言わざるをえない。印刷では限界があるのだろう。これほど太陽の美しさが表現されている作品は他にないくらいだ。

早稲田界隈の古書店へ

もう一カ所、今回立ち寄りたかったのが早稲田界隈の古書店である。
早稲田大学出身の友人から、会報誌で古書店が特集されているのを読ませてもらって興味がわいた。古書店街は神保町だけではないのだ。

高田馬場駅から早稲田大学方面に向かって歩くと、シャッターが閉じっぱなしになっている古書店も散見される。開いている店も店主夫妻が高齢という店もある。古書店というビジネスモデルはいつまで持つのだろうかとネガティブな思いがよぎったが、地図の端に位置する古書ソオダ水を訪れて、そんな思いが吹き飛んだ。


古書ソオダ水の入り口ドア

ビルの二階に位置する、いささか入るのに勇気がいる雰囲気だが、ドアを開けた瞬間、ああ、これだ、これこそ求めていた古書店なのだという、自分と波長の合う店と出会えた喜び!こういうのは直感でわかるものだ。品揃えがすばらしい。

折しも早大の卒業式ということで、卒業式の帰りにそのまま店長に挨拶のため訪れる学生さんもいた。漏れ聞こえてきた会話によると、卒業後は大学院に進むそうで、まだまだ客として店通いは続くようだ。本に興味を持つ若い人たちがいることは大変頼もしさを感じた。どんなに電子書籍が発達しようとも、棚をつぶさに見ることで「これだ!」、と発見する喜びは、何事にも代えがたい、胸が躍る経験である。

というわけで、日本文学関連の全集や政治哲学、サイエンス関係の本など、合計4冊ほど購入。あまり買いすぎると荷物の重量が大変なことになるのだが、それでもわずか500円だから本当にありがたすぎる。
ぜひまた再訪したい、


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