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「心と体を傷つけられて亡くなった天国の子供たちのメッセージ展」を見て

9月中旬に東京に行く機会があり、たまたまネットのニュースで目にした「心と体を傷つけられて亡くなった天国の子供たちのメッセージ展」を東京都人権プラザにて見てきた。

いじめ等により心と体を傷つけられて亡くなった子供たちの写真、子供たちが社会に投げかけた言葉、家族から子供へのメッセージを集めたパネルが展示されている。

こんなにも胸が苦しくなり、辛い気持ちになる展示は過去に経験がない。
明日を生きる気力さえわかなくなり、自らの命を絶つ行為に踏み切ることが、一体どれくらいの恐ろしさ、悔しさ、無念さ、寂しさにみちていたことだろうか。想像するだけでも張り裂けそうな気持ちになる。子ども達のメッセージがあまりにもピュアで、繊細だから、なおのこと心に痛みが突き刺さってくるのだ。

どうして、苦しみながら壮絶な毎日を送っている子供たちが自殺しなければならないのか?

なんともやりきれない、無念な気持ちと怒りのような感情がこみ上げてきた。若者の死因の1位が、交通事故や病死を差しおいて自殺なのだ。これは悲しむべき事実である。

2年ほど前に、NHKの番組「事件の涙 “葬式ごっこ”元同級生 35年目の告白」を興味深く見た。同級生を死んだことにして、教室で花や線香を供え行われた「葬式ごっこ」。これを苦にして13歳の少年が自殺した。この事件を長年追いかけてきた元新聞記者の豊田充さんが車椅子姿で当時の当事者に話を聞きに行く姿がとても印象的だった。

そもそもこの事件を知ったのは、なぜか地元の神社に冊子が置かれてあり、何だろうと手に取りめくると、そこに葬式ごっこのことが書かれており、一読して激しく衝撃を受けた。それがきっかけとなり、豊田充記者の葬式ごっこにかんする著作もいろいろ読んだ。知れば知るほど、あまりにも理不尽で、なんともいたたまれない、胸がふさがるような思いを抱いた。

葬式ごっこが起こったのは1986年で、それから約40年近くが経とうとしているが、いじめの実態は、葬式ごっこの時代と何も変わっていないのではないか?信頼できる友人から裏切れたり、無視されたりするのがどれほど恐ろしいことか。

今回のパネル展示を見て、微力ながら、なんとか世の中を改善していかなくてはならないという思いを抱かずにはいられなかった。この世を生きることは決してラクではない。本当に大変なことばかりで、なんでこんなことばかり?と思うような辛いことも少なくない。

自分のことを振り返ってみると、中学時代は背が低かった体格のことで、心ない言葉を浴びせられたり、イヤガラセをうけたこともあった。今でも誰がどんなことを言ってきて何をされたのか、ハッキリとその場面を脳裏に思い描くことができる。いじめる側は忘れても、いじめられる側は決して忘れない、というのは紛れもない真実である。そのトラウマは今も少なからず自分の考え方や思考に影響を与えている。それもまた、自分に課せられた、解決しなければならない課題だ。

幸いだったのは、良きクラスメイトに恵まれたおかげで、クラスの教室内は安全地帯だったことだ(二人ほど厄介な人がいたが)。今でも当時のクラスメイトとの交流は続いており、SNSでも何人かとつながっている。好きな友人たちに恵まれたおかげだ。それは本当に幸福なことだ。自分が自死しなかったのは、苦しくても自殺という選択肢が全く思い浮かばなかったからに過ぎない。だが、一歩間違うと、どうなっていたのか、今でもゾっとすることがある。

日本の自殺者は、年間約二万人にも及ぶ。かつては年間で三万もの人が自殺していており、一万人減ったとはいえ、膨大な人が人生に絶望して自ら死を選んでいるという事実は何も変わらない。累計すると、一つの大きな市が消滅するくらいの人口が自殺で失われたことになる。

国や学校はもっと抜本的に対策を考えないといけない。予算をもっと投入するべきだろう。子どもの教育にお金をかけることは、資源のない日本において、最も重要な未来への投資だ。

苦しんでいる子どもたちの心に響く言葉は,どういったものだろうか。

 悩みを打ち明けられた時は、内容を否定せずに「『よく言ってくれたね』と気持ちを受け入れ、耳を傾けてください。『強く生きよう』『夢中になるものを見つけて』と期待の言葉をかけても、心がボロボロになっている子には響きません」と呼びかける。
 何より重要なのは、孤独や絶望から守るために「あなたは大切な存在なんだよ」と伝えることだという。

前述の毎日新聞の記事より

どんなに苦しくても、必ず生きていれば良いことがあるという言葉は、あまりにも無力で響かないかもしれない。それでも、今死を考えている人には、なんとか踏みとどまって欲しい。苦悩を一人で抱えないで、苦しみを誰かに打ち明けて欲しい。苦しみを告白することは、自殺する以上に勇気が必要な行為かもしれない。
でも、きっと味方は周りにいる。あなたは必要な存在なのだ。
自殺してもいい命など,この世には一つも存在しないのだから。


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