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『バービー』 観てきました!

色んな方面で話題沸騰のグレタ・ガーウィグ監督映画『バービー』を観てきました。

『オッペンハイマー』との原爆アート騒動があったので、どうしようかなと思っていたのですが、やはりそこは作品とは全く関係のない場外乱闘(しかもファンと主催者側の、みたいな感じの)だったので、映画は行っとこと思い直した次第です。

ところが、そうした話題はよそに、僕の観た回は入場者がざっと15人程度。
平日の午後の回というのもあったのかもしれないが、それにしても少なっ!
しかも男性は僕ともう1人という、フェミニスト映画という一部の下馬評のせいか、女性観客メインでした。

でもね、言っときますが全くもってフェミニスト映画じゃぁないですね!

予告編は見ていたので、バービー人形の世界そのままのパステルカラー全開の明るいコメディ映画を想像していたのですが、
確かに上っ面はそういう感じにコーティングされています。
おバカでポップな、ミュージカルタッチのコメディ映画のコーティングの裏に隠されているのは、実は何層にも重ねられたスポンジが隠れているという、それは深い映画でした。

正直、1回観ただけでは感想をきちんとまとめられないくらいの情報量の多さで、いっそ茶一郎さんのネタバレレビューでも観たらスッキリするんじゃないかという。

マーゴットロビー扮するバービーランドのバービー。
バービーランドの女性はみんなバービーなんですが、彼女は劇中ではなんて表現していたかな、Typicalな典型的なタイプのバービーで、アメリカ、それも一昔前、おそらく60年代の白人社会としてのアメリカの理想の女性像のような、言い方悪いがブロンドで綺麗なだけで中身のないまさにバービーを象徴するバービー。

そして、そのバービーにあって添え物的な役割の「ブロンド美女の隣にはブロンドのイケメンも付けとけや」くらいのノリで開発されたであろう、ライアン・ゴズリング扮するケン。
マーゴット・バービーの相方らしく、ライアン・ケンもイケメンマッスル以外の特徴は何もなく、ビーチにいるのもおそらくマッスル見せるだけで、職業は?と尋ねられても「俺の職業はビーチさ」と言っちゃうような奴。

まさにステレオタイプなブロンド美女とブロンドイケメン。
うわぁ、昭和!(アメリカ映画だけど)
確かに、昔のアメリカ学園青春映画とかではケンみたいなスポーツ万能ブロンドイケメンって必ず出てきてましたよね。
最近だと、1950〜60年代の青春時代を描いていた『フェイブルマンズ』でもいましたね、サミーにフィルムで撮影されちゃうやつ。

物語はある日ふとマーゴット・バービーが、死を考えるようになった途端に色々調子が狂い出して、それはきっとリアルワールド=人間界での異変が影響して割れ目が広がってきたからだ、ということで、ライアン・ケンと人間界に旅に出ることで起きるドタバタが描かれていきます。

想像通り、リアルワールドでは未だ男性優位の社会。
バービーランドのように女性が世界を動かしていて男性は添え物状態、なんなら夜の生活もガールズナイトで忙しいので、セックスもお預け、そんな世界とは真逆の世界にショックを受けるマーゴット・バービー。

かたや、ライアン・ケンはそんな男性優位の社会を見て目を開かされます。
「男も優位に立てるんだ、何でもできるんだ」
アメリカ特有の騎馬警官を見て「馬と男社会」にカッケー!となっちゃうところなんて笑っちゃいます。

バービーとケンは、それぞれに今までのバービーランドでの生活での価値観がガラリと変わる体験をします。
悪ノリしてしまうライアン・ケンと、女性のために存在してきたと思っていたのにと落ち込み希望をなくすマーゴット・バービー。

ケンはリアルワールドでの男社会の価値観をバービーランドに持ち込み、ケンダムに作り替えようとします。
そして、バービーはリアルワールドの相棒的な母娘と一緒にバービーランドへ戻り。。。。

そうです、これはバービーだけが中心の女性のためにフェミニスト映画だけではなく、男社会とは何か、男らしさとは何か、についてケンの立場でも考えさせられるんです。
ケンの視点から見ればまさにアメリカ版男はつらいよ。
ケンもつらいんだよね

しかし、あれですね。
ちょっと思ったのが、男女二項対立に過ぎてなかったか?と。
今や男女の区別なく「ノンバイナリー」という第3の選択肢も一般的になりつつある時代です。
まぁ、アランがかろうじてそういう中間的な役回りだったのかなぁと思わなくもなかったですが、ちょっとその部分が気になりました。

役者はみんな素晴らしい。
特にメインキャストの2人は言うことないっす。
ライアン・ゴズリング、よくぞここまで振り切ったおバカキャラを演じてくれましたよ。
マーゴット・ロビーも最高。
生きたバービーがそこにいるかのような出立ちに留まらず、最後に人間界で生きる選択をするまでに至る心の動きを表情ひとつで的確に演じていました。
彼女は今作ではプロデュースも手掛けているらしく、グレタ・ガーウィグの映画なんですが、マーゴット・ロビー無くしてもこの映画はこういう形にならなかったんじゃないのかな、二人三脚で作った映画と言ってもいいんじゃないかと思いました。

それにしても、マーゴット・ロビーは本当に素晴らしい映画人ですね。
自身のブロンド美人を体現したルックス、ルッキズムの典型のようなキャラクター
を十分に自覚した上で、時にはそれを武器にした彼女にしか演じられないような役柄で、また時にはプロデューサーとして、数々の批評的な作品を世に送り出しています。

ちょっと感想を書こうと思ってい他のに、長くなってしまいましたが、まだまだ言い(書き)足りないことが、小骨のように刺さっていますが、今日はこの辺りで。

<了>

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