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もはやタイムループを演らせたらヨーロッパ企画に敵うものなし〜映画『リバー、流れないでよ』

僕は遅れてきたヨーロッパ企画のファンだ。

一昨年、『サマータイムマシン・ブルース(2018年再演版)』をU-NEXTの配信で観て、
「何だこの劇団は!面白いやん!」
となり、

続編の『…ワンスモア』からその他の配信舞台へ進み、

『来てけつかるべき新世界』でその吉本新喜劇かと見紛うほどのベタベタの関西弁と関西ギャグに
「なんや、あんたら関西人なんかい!」
と急に親近感も湧いてきて、

「同志社大学で結成した劇団なんか。。偏差値高いやん」
と関西大学出身の僕はライバル心と少しの劣等感を抱えつつ、

「これは同じ関西人として応援せなあかん」
とYoutube公式チャンネルもチェックして、やっぱり関西人やなぁとゲラゲラ笑い、

映画『ドロステのはてで僕ら』で2分間先の未来が映し出されるタイムテレビの設定に少しついていくのが難しいぞと途中思いながら、最後に回収されていくアクロバティックな脚本に感心して、

これはいざ舞台へ繰り出さねばと思ったところで発表された新作舞台のチケットを予約して下北沢で観た『切り裂かないけど攫いはするジャック』で、

「やっぱりこの人らは舞台の人やなぁ、よう声出てるしオモロいやん」
とさらにファンになり、

カンテレ制作ではじまったのが劇団主宰の上田誠脚本の地上波ドラマ。
『時をかけるな、恋人たち』はこれまでの劇団メンバーとは異なり、吉岡里帆と永山瑛太を主役に据えて、オシャレでポップな衣装にOPとEDのキャッチーな楽曲で一気にメジャー感を増しつつも、
ストーリーは上田誠ライフワーク(?)とも言うべきタイムトラベルもので一般視聴者を置いてきぼりにした、かどうかは分からないが、
メジャーもいけるで、というところを見せつけてくれた。

とまぁ前置きが長くなったが、そんなヨーロッパ企画との出会いを経て、映画館上映中にタイミングを逃したことを悔やんでいたところやっと観れたのが今作の『リバー、流れないでよ』。

縁結びの御利益で有名な京都貴船神社と旅館を舞台にした、上田誠十八番の超絶タイムループものが今作。
貴船神社を中心とした特定エリアで突然同じ2分間が何度も繰り返されることになり、舞台の旅館の従業員と客のドタバタコメディが86分というちょうどいい長さにぎゅっとまとまっている。

主役のミコトを演じるのがいまやヨーロッパ企画の看板女優となった藤谷理子と脇を固めるいつもの劇団メンバー。
さらに、加わった本上まなみ、近藤芳正、鳥越裕貴等劇団外の役者達がとても良い感じで雰囲気を締めている。

それにしても、藤谷理子の魅力よ。
まず声がいい。
少し高めでアニメ声にぎりぎりならない感じのよく通る声の存在感。
舞台だと遠目で判りにくい細かい表情の演技も素晴らしい。
彼女のような華やかな看板がいるのは劇団がもっと伸びていくんじゃないかと思う。
藤谷理子を見る映画と言ってもいいくらい彼女の魅力がよく出ていると思った。

最初あらすじと予告を見た時に、2分間のタイムループということだが、たったの2分間で何が出来るのか?
短すぎないか?
2分間の積み重ねで1時間半の映画を引っ張るのはかなり厳しいんじゃないか、と心配していた。

しかし、はじまってみれば映画『バードマン』を彷彿とさせるようなワンカット撮影の演出も素晴らしく、色んなパターンの2分間がループされていく小気味好さで全然退屈することなかった。
そうえいば『ドロステのはてで僕ら』も2分間だったが、上田誠はこの2分間という時間の長さが最良のものだという確信があったのかもしれない。

実際、これ以上長いと意外に間延びするかもしれないなと途中から思ったし、
何か出来そうだけど、実際少し時間が足りないこの2分間がやっぱり良かったんだろう。
熱燗を温めている途中でループしてしまうので、どうして熱燗にならないというシーンが出てくるが、だからいいのだ。
2分間だとラーメンも作れないから面白い。

それにしても、よくもこれだけタイムループのアイデアが次から次へと出てくるものだと感心しきり。

ストーリーは縁結びの貴船神社にならった爽やかなラブストーリーにもなり、「貴船」という地名にもかけたオチも仕掛けられていたりと、上田誠の脚本はやっぱり抜群。

86分間終始ニコニコが止まらない楽しい映画でした。

<了>

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