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日記

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#散文

2023.10月日記まとめ

2023.10.3
窓を二つ開けて部屋の空気を換気していた。空気が乾いている。その日の午後には加湿器の水がなくなった。補充を促す赤いチカチカした点滅を床に横たわりながら斜めに見る。秒針があまりに緩慢に1秒を刻む。遠くを走る自動車の音とモーツァルトのピアノだけがただしく時を刻んでいる。

秋風にすさぶれてこのまま遠く草原の上で眠りながら空気に溶けたい。友達ができると自分の孤独が強く浮かび上がる。わた

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休日

数日ぶりの快晴で、街行く人は前のめりでゴールデンウィークを楽しもうとしているようだ。そんな空気に背中を押されているようで、駅の改札を抜ける足取りが早くなる。イヤホンから流れるBGMの音量を普段より数クリック分大きくする。それでもすれ違う人々の笑い声が微かに耳朶を打つ。

少年の手を引いた女性が持つヘリウムで浮かんだ風船が、すれ違い様にチリと音をたてて髪を掠めた。メリーゴーランドの白馬を模したような

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ロマンスカー

間近に迫る蛍光灯とヘッドライトの光を受けて、車体を包むアルミのボディが確かな質量を持ってつるりと光っている。時速110キロにも耐えうる無機質な存在感から放つ光は、いかにもこれから旅がはじまるといった確固たる期待感を抱かせる。

スイッチバック

小田原から強羅にかけて箱根登山電車は3度のスイッチバックをする。約500mの急な勾配を登るため、進行方向を変えながらジグザグに走るのだ。体が傾くような傾斜を感じながら降っていた電車が反対側に動き出し、不思議な浮遊感に包まれる。成程、山を登る時は急がずに、時に立ち戻ることも必要なのだ。

2020.5.11