休日

数日ぶりの快晴で、街行く人は前のめりでゴールデンウィークを楽しもうとしているようだ。そんな空気に背中を押されているようで、駅の改札を抜ける足取りが早くなる。イヤホンから流れるBGMの音量を普段より数クリック分大きくする。それでもすれ違う人々の笑い声が微かに耳朶を打つ。

少年の手を引いた女性が持つヘリウムで浮かんだ風船が、すれ違い様にチリと音をたてて髪を掠めた。メリーゴーランドの白馬を模したような形に膨らんだビニールの表面が、太陽の光をキラキラと反射して光っている。きっと数年後には忘れてしまう、ありふれた、しかしこれでもかと言うほど幸せな休日の午後だろう。

ケーキ屋には予定の時間丁度に着いた。予約していた名前を告げていちごがふんだんに乗った友人の誕生日ケーキを引き取る。その足でまたすぐ駅に戻ると、ホームにはもう西陽が差しはじめていた。人でごった返す中でわずかに汗ばみながらスマートフォンの画面を覗く。海の向こうでは紛争で瓦礫の下敷きにされた人が助け出されていたが、ケーキの入った紙袋を持っている方と反対側の手でスワイプすると、すぐにまた休日を満喫する投稿に埋もれて消えた。


2022.5.3

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